解説者のプロフィール

西本真司(にしもと・しんじ)
●西本クリニック
和歌山市七番丁16 和一ビル2F
073-428-1220
http://home.att.ne.jp/surf/nishimoto/
西本クリニック院長。
1961年、和歌山県生まれ。近畿大学医学部卒業。熊本大学医学部附属病院麻酔科、熊本赤十字病院麻酔科、山鹿市立病院をへて、1996年、西本第2クリニックを開業。2006年、西本クリニックと西本第2クリニックを統合し、西本クリニック院長に就任。自らの潰瘍性大腸炎の闘病経験を活かしたホリスティックな医療を実践する。著書に『潰瘍性大腸炎 医師も患者もこうして治った』(マキノ出版)などがある。
自分が病気を克服した体験を生かして治療
「潰瘍性大腸炎」という病気をご存じでしょうか。
これは、難病に指定されている、原因不明の炎症性腸疾患です。
私は29歳のとき、潰瘍性大腸炎と診断され、合計4回の入退院をくり返しました。
その間には、1日40回近くの下痢と血便に苦しみ、肛門周囲膿瘍という合併症を引き起こしたこともありました。
しかし、私は7年間の試行錯誤の末、この病気を克服しました。
「一生、飲み続けなければならない」とされている薬をやめ、以来16年間、症状が再発せずに過ごせているのです。
現在は、潰瘍性大腸炎の患者さんをはじめ、「難病を克服したい」と願う多くの患者さんたちに、自らの体験を生かした治療のサポートを行っています。
潰瘍性大腸炎に関しては、2013年の時点で、西洋薬から離脱でき、1年以上再発せずに過ごせている人が、100名を突破しました。
これによって、病気を治すポイントが、より明確に見えてきました。
私が考える病気を治すポイントとは、
①自律神経のバランスを整える
②セロトニンを活性化させる
③体脂肪をため込まない、この三つです。
①自律神経は、活動時に優位になる交感神経と、休息時に優位になる副交感神経が、バランスを取りながら、全身の血管や内臓の働きを調整しています。
ところが、生活習慣、ストレス、薬の使用などによって、自律神経のバランスがくずれると、免疫力が低下し、病気を起こしやすくなります。
②セロトニンは、精神的な安定をもたらす脳内の神経伝達物質です。
不足すると、ストレスに弱くなり、自律神経のバランスが乱れます。
セロトニンは腸に多く存在するため、セロトニンの活性化は、腸の働きを整えることにもつながります。
③体脂肪の増加は動脈硬化を進行させ、血流障害を招き、あらゆる病気へとつながります。
クリニックでは、この三つの対応策となるさまざまな療法を、患者さんとともに実践しています。
なかでも、自律神経のバランスを整えることと、セロトニンを活性化させること、その二つに役立つのが「呼吸法」です。
呼吸は自律神経によって支配されていて、副交感神経が優位なときは深くてゆったりした呼吸、交感神経が優位なときは浅くて早い呼吸になります。
また、息を吐くときは副交感神経が優位になり、息を吸うときは交感神経が優位になります。
感謝することは免疫力を高める
潰瘍性大腸炎の患者さんの多くは、ストレスなどによって交感神経が優位に偏り、病気を引き起こしています。
ですから、吐く息を長く、そして、ゆっくり深い呼吸を行うことで、自律神経のバランスを整えることができます。
さらに、ゆったりした呼吸はセロトニンの活性を高め、心を落ち着かせる作用があることがわかっています。
では、私がお勧めする「ありがとうね呼吸」をご紹介します。
「ありがとうね呼吸」は、あおむけに寝て、リラックスした状態で、「あ・り・が・と・う・ね」という言葉を発声しながら、息をゆっくり吐き出す呼吸法です。
1回5分程度で、それを1日に2~3回、手のすいたときに行います。
具体的なやり方は、下の写真を参照してください。
基本は腹式呼吸で行います。
息を吸うときにおなかを膨らませ、吐くときにへこませます。
息を大きく吸ったときには、内臓の血液がおなかから外に押し出され、吐くときに新しい血液が内臓にドッと吸い込まれるので、内臓の血行を促進し、機能を高める作用があります。
「ありがとうね」という言葉には「あいうえお」の音がすべて入っているので、発音するときに口を大きく動かせば、口の周囲の口輪筋も鍛えられます。
また、「ありがとうね」という感謝の言葉は、自分も周りの人も幸せになる言葉です。
感謝することは心を豊かにして、免疫力を高めることにも通じます。
感謝の気持ちを伝えたい人を思い浮かべながら、「ありがとうね呼吸」を行うのもよいでしょう。
幸せな気持ちに満ち溢れ、ストレスも軽減するはずです。
「ありがとうね呼吸」のやり方
