特徴はイライラしやすい、 疲れやすい、甘いものが欲しくなる
アトピー性皮膚炎の人に対し、私はさまざまな生活改善の指導やアドバイスを行っています。その一つが、首を温めることです。首を温めると、自律神経(体の諸機能を調整する神経)のうち、活動時に働く交感神経の過緊張がおさえられるからです。
アトピーの人は、日常的に、交感神経が優位になりがちです。その証拠に、下あごの骨の内側にある顎下リンパ節を指で押すと、多くの人が強い痛みを感じます。
これは、健康状態を確かめる一つの指標として、私が診察時に行っている検査法です。自分で顎下リンパ節を押さえるときは、あごをひいて、親指の腹で、あごの骨に向かって内側から押します。すると、アトピーの人は健康な人に比べて、より強い痛みを感じるのです。皮膚の状態が悪い人ほど痛みは激しく、軽く押さえただけでも「飛び上がるほど痛い」といいます。
顎下リンパ節は、顔に最も近い場所にあるリンパ節です。体に侵入した菌は、リンパによって処理されますが、口や鼻からは多くのウイルスや菌が入ってくるため、顎下リンパ節は大忙しです。指で軽く押さえただけで痛むということは、リンパがかなり疲弊している証拠です。
そして、顎下リンパ節を押して痛みのある人には、共通して次のことが当てはまります。
①昼間眠くなる。
② 朝、寝起きが悪い。
③ 夜、寝つきが悪い。
④イライラしやすい。
⑤ 肩こりがある。
⑥ 疲れやすい。
⑦ 甘いものが欲しくなる。
⑧ よくあくびが出る。
これらは、交感神経が緊張しているときに起こる現象です。
そこで私は、交感神経の過緊張が緩和されれば、アトピーは改善するだろうと考えました。その考えに基づき、約20年前、星状神経節にレーザー光を照射する治療法を、アトピー患者さんに初めて行ったのです。
星状神経節とは、首の長さを3等分した下から3分の1で、中心から左右に1〜2cm外側にある、交感神経の中継所といわれている場所です。ここにレーザー光を当てると、交感神経の緊張が緩むことは、医療界ではよく知られています。
16〜47歳の男女45人にこの治療を試みたところ、約7割に明確な効果が認められました。睡眠状態が改善し、アトピー特有の皮膚の赤み、皮膚のかゆみなどが改善したのです。その後、781例のアトピー患者さんに同様の治療を行い、同じく好結果が出ています。最近ではアトピー性皮膚炎のほか、難治性の多くの皮膚疾患でも同様の方法を試み、好成績を得ています。
蒸しタオル療法のやり方

首の後ろから前面まで全体を温める
しかし、このレーザー治療だと、病院でしか治療を受けられません。そこで、これと同じような効果が期待でき、家庭で簡単にできるように考案したのが、タオルで首を温める「蒸しタオル療法」です。
そのやり方は、とても簡単です。まず、タオル(30cm×70cm大)1枚を用意します。それを水に浸して強くしぼり、ラップに包んで、電子レンジに1分ほどかけます。
温かくなったタオルを取り出し、ラップを外して、縦に1回、横に1回折ります。それを、首全体をおおうようにして、約5分間、首を温めてください。
蒸しタオルの温度は、40度ぐらいを目安にするといいでしょう。レーザー光の場合、頸椎(首の骨)がじゃまをしないよう首の前面から当てますが、蒸しタオルで温める場合は、首の後ろから前面まで、全体をおおうようにします。使い捨てカイロをタオルに包んで、首を温めてもいいでしょう。ヤケドにはくれぐれも注意してください。
首を温めるととても気持ちがよく、交感神経の過緊張がおさえられて、副交感神経が優位になります。すると、イライラしていた感情が穏やかになり、夜もよく眠れるようになります。生活全般のバランスが整い、顔や首の、かゆみや赤みも、しだいにおさまっていくでしょう。
甘いものが欲しくなったら果物、砂糖は極力控える
なお、睡眠や食事など、ふだんの生活習慣を改めることも重要です。
まず、夜型中心の生活スタイルの人は、それを改めて、朝8時から昼12時までは必ず起きているように心がけましょう。昼食後に眠くなったら、2〜3時間なら寝てもかまいません。
食べ物は、1日3食のリズムを守ってください。甘いものが欲しくなったら果物、のどが渇いたら水かお茶、おなかがすいたらおにぎりやうどんなどをとるといいでしょう。砂糖の入った飲み物や食品は、控えてください。
健康状態がよくなれば、甘いものに対する欲求が減少し、顎下リンパ節を押しても、あまり痛まないようになっているはずです。毎日、蒸しタオル療法を行い、症状の回復にぜひお役立てください。