解説者のプロフィール

駒形依子(こまがた・よりこ)
●こまがた医院
山形県米沢市成島町3-2-127-12
0238-27-0303
https://www.komagatacl.com/
こまがた医院院長。産婦人科医。
東京女子医科大学医学部卒業。米沢市立病院、東京女子医科大学産婦人科などを経て、2018年1月、山形県米沢市にこまがた医院を開業。「子宮が大好きすぎる産婦人科医」として、西洋医学・東洋医学の視点から、患者さん自身で行える子宮のケア方法を多く提案している。
生理痛や生理前の不調を一掃できる!
生理前、あるいは生理中に乳房が張るという人は多いと思います。私も以前はそうで、生理前になると乳房が張って痛いのですが、1カップくらい大きくなるので「おっぱいが大きくなった」と喜んでいました。
でも、医学部に入って女性の体について学ぶうちに、喜ぶことではないとわかりました。乳房が張って大きくなるのは、リンパ液の流れが悪いためのむくみだったのです。
上半身には、首と鎖骨、わきの下に集中して大きなリンパ節があります。乳房の下やわきの下のラインは、ブラジャーで締めつけられているので、普段からリンパの流れが滞りやすいところです。生理前になるとさらにリンパの流れが悪くなるので、乳房がむくんでパンパンに張ってしまい、痛みも出るというわけです。
これを解消するために私が始めたのが、「おっぱいはがし」です。
やり方は、乳房の土台になっている大胸筋と乳房の境目、特に乳房の下方から外側を大胸筋からはがすようにほぐします。おっぱいはがしを行うと、リンパの流れがよくなり、滞りが取れるので、おっぱいのむくみも痛みも解消します。
なぜ、生理前になるとリンパ液の流れが悪くなるのでしょうか? それは、女性の体が全身全霊をかけて妊娠のための準備をするからです。
生理は、受精卵が着床しやすいように、子宮の内膜を毎月作り直す作業です。子宮内膜は、受精卵のためのフカフカの布団のようなものです。このフカフカの布団を準備するため、生理前になると、「プロゲステロン」というホルモンが分泌されます。これが受精卵のために子宮の環境を整えようとして、水分と栄養をため込みます。なるべく栄養をため込もうとする力が、体から老廃物を排出しようとする力を低下させるのです。老廃物の回収と排泄の役割を担うのがリンパです。これがリンパの流れが悪くなる理由なのです。
栄養のほかにも老廃物までため込んだ結果、頭痛、肩こり、むくみ、食欲増加、悪寒、生理痛、便秘、イライラ、乳房の張りなどのPMS(月経前緊張症候群)が起こります。
おっぱいはがしを行うと、乳房の張りと痛みの解消だけでなく、PMS全般の改善につながります。
また、おっぱいはがしをすると、硬くなっていた大胸筋もゆるみ、血流もよくなります。その結果、おっぱいに栄養が運ばれて、ほわほわのやわらかいおっぱいになります。おっぱいがふんわりすると大きく見えるので、見た目もよくなります。
疲れやこり、痛み、冷え症も解消!
子宮内膜は、受精卵がこなかった場合は不要になるのではがれて排出されます。このときの出血が生理です。その際に、全身にためこんだ余分な老廃物も排便や排尿などで一気に排出されます。
排出する老廃物が多いということは、それだけ老廃物がたまりやすい、つまり、もともと血流やリンパの流れが悪いということ。体、子宮は冷えやすい状態にあり、冷えた子宮から内膜を排出するために、子宮は何度も強く収縮しなければなりません。収縮力や回数に負担がかかればかかるほど、生理痛はひどくなります。
しかし、おっぱいはがしでリンパの滞りを解消すれば、毎日排泄される老廃物が増えます。生理前にためこむ老廃物も減るので、生理前の症状が軽くなり、子宮の冷えも解消されるため、生理痛が軽くなります。
私自身もひどいときは寝込むほど生理痛がひどかったので、時間を見つけてはおっぱいはがしをやっていました。現在は、昔の生理痛が嘘だったように、何もありません。
おっぱいはがしで上半身のリンパの流れがよくなると、全身の流れがよくなります。これは生理以外の日常の健康維持や不調の改善にもとても有効ということです。
例えば、仕事で長時間座りっぱなしの人や立ちっぱなしの人は、少しリンパの流れが悪くなりやすいです。少し時間を見つけておっぱいはがしを行うだけで、疲労感やこり、痛みなどが楽になると思います。
おっぱいはがしを行うと、上半身が熱くなってくると思います。これは血流がよくなっているからです。冷えの改善につながり、免疫力アップにもなるため、乳ガンやほかの病気の予防にもなります。
毎日おっぱいに触れることで、張りやしこりなどの異常にも気がつきやすくなります。乳ガンの自己チェックとしてもぜひ実践してください。
生理前の不調が消えるおっぱいはがしのやり方

手を熊手のようにして、大胸筋から乳房をはがすようにほぐす。乳房の上部から下部まで、5回ほど繰り返しはがす。終わったら、反対側も同様に行う