重度の認知症にも改善効果を発揮!専門医が「耳もみ」を勧める理由

重度の認知症にも改善効果を発揮!専門医が「耳もみ」を勧める理由

近年、記憶と関連の深い脳の海馬などでは、新しい細胞が毎日生まれていると判明しています。ですから、脳の萎縮が進んでも、それをカバーする脳内の環境作りは十分可能だといえます。今からでも遅くはありません。耳もみを早速実践して、脳の血流を活発にしてください。【解説】広川慶裕(ひろかわクリニック院長)


解説者のプロフィール

広川慶裕(ひろかわ・よしひろ)
●ひろかわクリニック
京都府宇治市宇治妙楽24-1ミツダビル4F
0774-22-3341
http://www.j-mci.com/

ひろかわクリニック院長。
1955年、大阪府生まれ。1984年、京都大学医学部卒業。麻酔科専門医・指導医を経て、精神科医に転科し、認知症やうつ病、統合失調症などの治療に専念する。2014年、京都府宇治市に認知症予防の専門クリニック「ひろかわクリニック」、東京都港区に「品川駅前MCI相談室」を開院。著書に、『認知症予防トレーニング 認トレ 一生ボケない!38の方法』(すばる舎)などがある。

300あるツボを刺激し脳と全身の血流を促す

 私は2014年、京都府宇治市に認知症予防専門のクリニックを開きました。それ以来、1000人を超える患者さんの診察に当たっています。

 認知症の予防・改善のためのトレーニング「認トレ®」を考案し、日常生活で患者さんに実践してもらうほか、各地で認トレ教室を定期的に開催しています。私は、こうした臨床経験から、認知症の予防・改善に確かな手ごたえを感じるようになりました。

 認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)を放置すると、4~5年で半数のかたが認知症になるといわれています。MCIの時期を過ぎ、認知症を発症してしまうと、症状の進行を食い止めることは極めて困難だともいわれます。私はMCI〜初期認知症の段階の患者さんに認トレをしていただき、認知症を発症しない、もしくは遅らせる取り組みをしてきました。

 しかし、最近では必ずしもそうとは限らないのではないか、と考えるようになりました。つまり、いったん認知症を発症してからであっても、その進行を食い止め、顕著に症状を改善できるのです。

 実際、私のクリニックには、認知症を発症したあとに、認トレによって改善した患者さんがたくさんいます。むろん、それがMCIの段階であれば、その効果はより発揮されることになります。

 さまざまなプログラムがある認トレのうち、私が必ずお勧めしているのが、「耳もみ」です。

 耳には、300を超えるツボがあるとされています。耳を刺激すると、脳だけではなく、全身の血流を促すことにつながります。

 特に決められたやり方があるわけではありません。手で耳をもんだり、引っ張ったり、こすったりすればいいのです。耳が赤みを帯びて、温かくなるまでマッサージしてください。短時間でもけっこうです。時間を見つけて、1日に何度か耳をもむことをお勧めします。

 この耳もみをすると、たいてい1ヵ所くらい、特に痛いと感じる場所があるはずです。その場合、その場所を念入りに刺激するといいでしょう。

耳がポカポカするまで丹念にマッサージすればOK!

ひどかった物忘れが改善、話をするようになった!

 では、耳もみが認知症の予防・改善に役立つ理由についてお話ししましょう。

 脳や臓器の細胞には、活動するためのエネルギーを作る数百、数千個のミトコンドリアという小器官があります。その働きは、加齢とともに衰えていきます。さらに、血管の老化により血流が低下すると、脳内のエネルギー不足が深刻になります。なぜなら、脳は全身のエネルギーのうち、なんと20%も消費する臓器だからです。

 こうした要因で脳にエネルギーが足りなくなると、深刻な影響が出てきます。

 認知症のうち、最も患者数の多い「アルツハイマー型認知症」は、アミロイドβなどの異常たんぱく質が蓄積することで起こるとされています。脳でエネルギー不足が生じると、アミロイドβを排出することができなくなり、異常たんぱくが脳内にどんどんたまってしまいます。これこそが、認知症の危険性を高めるのです。

 認知症の予防・改善には、脳内の血流をよくすることが非常に重要です。血流を活発にすることで、脳内の細胞の隅々にまで多くの酸素と栄養素を送り届けることができるからです。

 かつては、脳の神経細胞は加齢とともに減少するばかりと考えられてきました。しかし近年、記憶と関連の深い脳の海馬などでは、新しい細胞が毎日生まれていると判明しています。ですから、脳の萎縮が進んでも、それをカバーする脳内の環境作りは十分可能だといえます。

 今からでも遅くはありません。耳もみを早速実践して、脳の血流を活発にしてください。その効果の高さをご理解いただくために、実際の体験例をご紹介しましょう。

 84歳の女性Aさんは、1年半ほど前に「物忘れがひどくなった」と来院されました。そこで、耳もみを中心とした認トレを実践していただいた結果、ひどかった物忘れが改善しました。

 私が行った認知症のテスト(30点満点。健常値24点以上)では、トレーニング開始前は22~23点だったのに、現在では27~28点まで上がり、その状態を保っておられます。

 85歳の女性Bさんは、重度の認知症でほとんど話をしなくなっていました。トイレの場所がわからず、粗相をしてしまうことも多かったそうです。しかし、ご家族のかたが彼女に耳もみをするようにしたところ、トイレでの失敗はなくなり、おしゃべりもできるようになっているのです。

 耳もみをして、脳の血流をよくする。この簡単な方法で、かなり認知症が進んだ場合でも効果を発揮することがあります。ぜひ、希望を捨てずに試してください。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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