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「書くこと」はやはり脳にいい!認知症に効果【書くリハビリ】4つのやり方

「書くこと」はやはり脳にいい!認知症に効果【書くリハビリ】4つのやり方

認知症が進行すると、自分がいる場所がどこで、話している相手は誰かなど、自分の置かれている状況の見当がつきにくくなってきます。これを「見当識障害」といいます。現実見当識訓練は、脳に残っている機能に働きかけて現実見当識を高め、認知症の進行を遅らせることを目指します。【解説】石井映幸(ふれあい鶴見ホスピタル副院長)

解説者のプロフィール

石井映幸(いしい・てるゆき)
●ふれあい鶴見ホスピタル
神奈川県横浜市鶴見区東寺尾4-4-22
045-586-1717
http://www.fureai-g.or.jp/tsu/

医療法人社団康心会ふれあい鶴見ホスピタル副院長。医学博士。
湘南医療大学保健医療学部臨床教授。帝京大学医学部非常勤講師。日本脳神経外科学会専門医。
著書に『認知症にならない脳活性ノート』(マキノ出版)がある

適度な運動、知的活動、孤立の回避の三つが重要

 私は、高齢者が認知症を予防するために、特に重要な要素として、

1、適度な運動

2、趣味などの知的活動

3、社会参加して孤立を避ける

という三つを推奨しています。

 この観点から私は、認知症の予防・改善のために、「書くリハビリ」を提案してきました。私の物忘れ外来にやってくる多くの患者さんが、さまざまな成果を上げています。

 書くリハビリは、認知症予防の3要素と密接に関連しています。認知症の治療法として、医療機関のリハビリや介護施設で行われているのが、「現実見当識訓練」と「回想法」です。

 認知症が進行すると、自分がいる場所がどこで、話している相手は誰かなど、自分の置かれている状況の見当がつきにくくなってきます。これを「見当識障害」といいます。

 現実見当識訓練は、この障害を改善するものです。脳に残っている機能に働きかけて現実見当識を高め、認知症の進行を遅らせることを目指します。

 例えば、「今日は何月何日?」「ここはどこでしょう?」といった質問を周囲からすることで、本人の現実意識を高めていくのです。

 回想法は、アメリカのロバート・バトラーという精神科医が提唱した手法です。人は人生を振り返ったとき、「充実していた」「よかった」と思える時代を思い出すと、脳の前頭葉が最も活性化し、認知機能によい影響をもたらすとされています。

 認知症になると、新しい記憶は忘れてしまうものの、古い記憶は残っています。そこで、はるか昔の「懐かしく楽しかった」記憶を引き出す回想法で、記憶障害によって生じる心の痛みを軽減するのです。

予定や考えていることをとにかく書こう!

 書くリハビリは、現実見当識訓練と回想法の効果を同時に得ることができます。やり方は、大きく四つあります。


❶カレンダーに予定を書く

 ❶は、日付の下に空欄のある、やや大きめのカレンダーを用意し、予定を書き込むものです。単に予定だけではなく、自分や周囲の人の誕生日や記念日をメモするのもいいでしょう。

 認知症の進行度にもよりますが、予定はできるだけご本人が書くようにします。毎日カレンダーを見て、日付、曜日、その日の予定を確認することは、自分の置かれている状況を確認する、現実見当識訓練そのものです。

❷「本日メモ」をつける

 ❷の「本日メモ」は、紙でもノートでもいいので、今日1日をどう過ごすかを書くようにします。出かける予定や目的、買い物の内容などを書いてください。このメモによって記憶を整理することができます。


❸「セルフ備忘録」をつける

 ❸の「セルフ備忘録」は、自分の好きな物を書きます。食べ物、飲み物、季節、動物、タレントなどを書くのです。

 これは、自分の好みについて思い巡らせることで、回想法としての機能回復訓練になります。同時に、自分の気づかなかった一面を発見することにもなり、認知症になると損なわれやすい「自己肯定感」を高める効果があります。


❹「ひと言伝言板」をつける

 ❹の「ひと言伝言板」は、家族との交換日記のようなものです。その日にあったことや頼みたいことなど、お互いが伝えたいことを書いて、コミュニケーションを深めましょう。







書くほど脳が若返る!

孤立は認知症を進行させる大きな要因に

 ここまでご紹介した「書くリハビリ」が、認知症予防の重要な三つの要素(①適度な運動、②趣味などの知的活動、③社会参加して孤立を避ける)とどう関連づけられているのかをお話しします。

 認知症の患者さんは、引きこもりになりがちで、それが病状を進行させる大きな要因となります。カレンダーに予定をつけることは、外に出るよいきっかけとなるはずです。外出の回数が増えれば、それだけ運動する機会を得ることができます。

 認知症状が進行すると、多くの時間をぼんやり過ごすようになり、家にいても家族から孤立する傾向があります。セルフ備忘録やひと言伝言板を活用すれば、家族間のコミュニケーションの密度を高めるうえで非常に役立つはずです。

 書くという作業は、脳によい刺激を与える知的活動そのものです。まずは、書くリハビリのうち、できそうなこと、続けられそうなことから始めてみてはいかがでしょうか。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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