熱を下げる働きがあり早期治療に役立つツボ
西洋医学では、カゼの原因の大半は、ウイルスであると考えられています。
そのため、うがいと手洗いでウイルスを除去することが、カゼの予防には効果的とされ、症状改善には、対症療法として薬が処方されます。
一方、東洋医学では考え方が異なります。
過労や不規則な生活、不摂生な食生活、睡眠不足などで体の抵抗力が弱ったところに、「風」や「冷え」といった邪気が侵入することで、カゼという状態が引き起こされるととらえられているのです。
そして、薬ではなく、鍼灸や漢方薬などによって、症状を根本から改善しようとします。
ツボを刺激することも、その一つです。
ここでは、私が発見したカゼの特効ツボを紹介しましょう。
首には、頸椎という頭を支えている骨があります。
頸椎は、背骨の一部で、縦一列に並んでいます。
首の後ろをさわると、骨がいくつか出っ張っているのがわかると思います。
それが、頸椎です。
頸椎は七つありますが、上からふれることができる頸椎は、第2頸椎から第7頸椎までの六つです。
その下には、胸椎があります。
第3頸椎から第1胸椎の間にあるそれぞれのツボを、私は総称して「刺熱穴」と名づけました(下の図参照)。
これらが、鼻づまりやのどの痛み、セキ、発熱などに効果的なツボなのです。
これらのツボを、上から順番に指で押して、横にしごいてみましょう。
すると、痛くて気持ちがいいツボ(反応点)とそうでないツボがあるはずです。
この反応点にお灸をすえると、ひき始めのカゼに、驚くほど効果があるのです。
私たち鍼灸師は、カゼの初期症状に対しては、発汗を促し、熱を下げる治療を行います。
カゼをひいているときに、首以外の部位にお灸をすえると、かえって熱を上げてしまいますが、刺熱穴へのお灸だけは、逆に熱を下げることができ、早期治療に役立つのです。
カゼの炎症は、鼻粘膜から咽頭、喉頭というぐあいに、時間とともに体の奥へと進んでいきます。
そうなる前に、刺熱穴を刺激し、カゼの邪気を外に追い出し、全身に回らないようにするといいでしょう。

症状にかかわらず初心者でも実行できる
とはいっても、皆さんが自分で首にお灸をすえるのは、なかなか難しいかと思います。
そこで、自宅で簡単にできる方法としては、「蒸しタオル」で首の後ろを温めてもいいでしょう。
タオルは2枚用意します。
まず、水に浸したタオルを固めにしぼり、ラップで包んで、電子レンジに1分程度かけます。
それを、ジッパーつきのビニール袋に入れてから、乾いたタオルにくるみ、首の後ろの刺熱穴全部に当たるようにしてください。
ヤケドをしない程度で、少し熱いと感じるくらいの温度が適当です。
タオルを二重にするなどで、自分にとって最適な温度になるように調整してください。
20~30分程度、首が赤くなるくらいまで、当てておくといいでしょう。
すると、蒸しタオルを外したあとも、ポカポカと体が温かい状態が持続するはずです。
カゼの邪気は、首から侵入するものです。
鼻水が出たり、つばをのんでのどが痛かったりするなど、カゼの初期症状が現れたときに、首を蒸しタオルで温めると、それ以上悪化せずに済みます。
刺熱穴は前述したとおり五つあり、それぞれが体の各臓器に対応しています。
蒸しタオルで首全体を温めれば、それらのツボを一度に刺激できるので、症状にかかわらず、初心者でも簡単に行えるのが利点です。
また、カゼをひいたときの注意としては、たっぷりと水分を補給して汗をかくことが肝心です。
ただし、綿素材の下着は、汗を吸収すると冷えるので、カゼのときは避けたほうがいいでしょう。
ウールなど、汗をかいても冷えないものを身につけてください。
靴下は、絹の5本指ソックスがお勧めです。
一般的な靴下とは違い、一指一指が包まれるので温かく、汗を吸収しても冷えることはありません。
肺に冷たい空気が入ると免疫力が低下するので、寝るときにはマスクを着用するのがいいでしょう。
マスクを二重にかけて、マスクとマスクの間にウェットティッシュをはさんでおくと、鼻やのどの粘膜の乾燥を防ぎ、炎症をおさえてくれます。
皆さんも、以上の方法を心がけ、カゼの早期治療に努めてください。
解説者のプロフィール

木戸正雄(きど・まさお)
日本鍼灸理療専門学校教務部長。
現在は鍼灸の専門学校教員だが、治療家時代は鍼灸を中心とした東洋医学の医術で1日100人以上を治療。