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認知症患者に不足!脳の栄養素「レシチン」を含む食事と摂り方

認知症患者に不足!脳の栄養素「レシチン」を含む食事と摂り方

認知症の患者さんに圧倒的に足りないのが、レシチンという物質です。これは、大豆や卵などに多く含まれています。レシチンは脳にも全身にもきわめて重要で、生きるための必須物質です。そのため、「生命の基礎物質」とも呼ばれています。【解説】野本裕子(ナチュラルクリニック代々木院長)

解説者のプロフィール

野本裕子(のもと・ゆうこ)
●ナチュラルクリニック代々木
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-21-6 プラザF1ビル7F
03-5363-1481
http://www.natural-c.com/

ナチュラルクリニック代々木院長。心療内科医・内科医。
予防医学・代替医療振興協会・学術委員。認知症予防改善医療団・理事。
信州大学医学部卒業。東京医科歯科大学にて臨床研修後、予防医療・美容医療に携わる。近著に『医師もびっくり! 認知症が治っている』(素朴社)がある。

認知症は適切な栄養指導で何歳でも改善する!

 私たちのクリニックでは、15年前から、薬を使わずに認知症や心の病気を治療して、成果を上げてきました。精神疾患は薬では治らないというのが、今の医学会の常識です。

 私たちは、栄養療法による治療を行っています。病気には必ず、栄養学的な原因があります。なぜかといえば、私たちの体を構成している細胞の一つひとつは、日々の食事からとる栄養素によってできているからです。必要な栄養素が不足すれば、細胞は活性を失い、病気につながります。

 認知症も同じです。脳は、神経細胞が集まって形成されています。神経細胞どうしが情報のやり取りをすることで、膨大な情報が処理されています。

 ところが、栄養不足によって神経線維が細くなり、神経細胞間でやり取りされる神経伝達物質(アセチルコリンなど)が減ると、情報交換がスムーズに行われなくなるのです。

 私たちが実践している栄養療法には、二つの手法があります。一つは、日常の食生活を改善して、栄養のバランスを整えること。もう一つは、サプリメントによって足りない栄養素を補うことです。

 この栄養療法で、認知症が劇的に改善したAさん(92歳・女性)の例を紹介しましょう。
 Aさんは、もともと友人が多く、山登りを楽しむような行動的な女性でした。ところが、加齢とともに家に引きこもるようになると、一人でボーッとすることが多くなりました。

 やがて食事の支度もしなくなり、母屋に住む息子さんが持参するパンやカップ麺などを食べているうちに、認知症が進行。病院から抗認知症薬を処方されたものの、悪化する一方だったため、当院に来院されました。

 私とカウンセラーは、息子さんの奥さんが来られた際、朝と夜の食事をAさんのところに運ぶようにお願いしました。食事は、ご飯にみそ汁、焼き魚、納豆といった和食の献立とサプリメントを勧めました。

 すると、数ヵ月後、ボーッとテレビを見ているだけだったAさんが、少しずつ体を動かすようになりました。テーブルをふき、床掃除をするようになり、ついには、家の周りをほうきで掃除するようになったのです。

 また、習字の練習をしたり、ニュースの感想を日記に書いたりするようになりました。日常会話も増えたそうです。

 わずか数ヵ月間のこの変化に、私たちも大変驚きました。ちなみに、現在、Aさんは抗認知症薬を飲んでいません。

 認知症は治らないといわれていますが、このようにご家族の協力のもと、適切な栄養指導を行うと、何歳になっても改善するのです。

レシチンを多くとれば元気な脳細胞が作られる

 認知症の患者さんに圧倒的に足りないのが、レシチンという物質です。これは、大豆や卵などに多く含まれています。

 レシチンは、リン脂質という脂質の一種で、水と油を中和させる乳化作用があります。血管にこびりついた油を溶かすため、80年以上前から、コレステロールの薬として使われてきました。それ以外にも、次の二つの重要な働きがあります。

 一つは、アセチルコリンの材料になることです。
 認知症の原因は、脳の萎縮やアミロイドβという異常たんぱく質の蓄積など、さまざまです。そして、そのすべてに共通しているのが、アセチルコリンの大幅な減少です。レシチンが不足するとアセチルコリンが作られず、情報の伝達が滞り、物忘れ、不安、イライラなどの原因になります。

 もう一つは、レシチンが脳の神経細胞をはじめ、全身の細胞の細胞膜を構成していることです。
 細胞は、細胞膜を介して酸素や栄養を取り入れ、細胞内のミトコンドリアでエネルギー源を作り、不要になった老廃物を排出しています。細胞膜にレシチンが十分にあれば、膜は柔軟で透過性がよく、元気な細胞が作られます。反対に、レシチンが少ないと、膜はかたくなり、透過性も低下して、老廃物がどんどんたまってしまうのです。

 このように、レシチンは脳にも全身にもきわめて重要で、生きるための必須物質です。そのため、「生命の基礎物質」とも呼ばれています。私たちは、このレシチン由来のサプリメント(低分子レシチン)も処方し、多くの患者さんの認知症を改善させてきました。

 認知症の予防・改善のためには、毎日の食事が非常に大切です。私たちがお勧めしているのは、穀類や大豆、魚介類、野菜などがまんべんなくとれる、和食です。

 レシチンや魚油(DHA)といった脳に必要な栄養素はもちろんのこと、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなど、いくつもの栄養素によって脳内ホルモンは作られています。それらが豊富な和食中心の食生活を心がければ、脳も体も老いなくなるのです。

 次は、手軽に脳を活性化させる朝食を紹介しましょう。

和食は脳を元気にする栄養素が豊富!

熱に弱いレシチンをそのまま補給できる一品

 ここでは、認知症の予防・改善に欠かせない、レシチンのとり方について解説しましょう。
 レシチンは、卵の黄身や大豆に多く含まれ、それぞれ卵黄レシチン、大豆レシチンと呼ばれています。これらは、成分に若干の違いはありますが、機能性についてはほぼ変わりません。

 卵や大豆はレシチンの補給に有効ですが、一つだけ弱点があります。レシチンは、熱に弱いのです。60度以上に加熱すると、レシチンの有効性が減少してしまいます。
 したがって卵なら、生か半熟で食べるといいでしょう。

 一方、大豆は、加熱しないと食べられません。納豆や豆腐、みそなどは優れた機能性食品ですが、レシチンの補給という面では、あまり効率的ではありません。

 上記では、栄養のバランスが取れる和食をお勧めしました。しかし、朝食にとなると手間と時間がかかり、忙しい現代人には続けにくいかもしれません。

 では、どうしたら手軽に、脳と体に栄養を補給できるでしょうか?
 そこで、私が患者さんに勧めているのが、「生卵入りバナナジュース」です。これは、私たちのクリニックの会長である神津健一博士が考案しました。

 このジュースは、生卵、バナナ、豆乳、きな粉、黒ゴマをミキサーにかけるだけで、簡単に作れます(作り方は下記参照)。忙しい朝にもってこいのドリンクです。

 前述のとおり、生卵にはレシチンが多く含まれ、コレステロールの分解に役立ちます。また、たんぱく質も豊富です。

 バナナには、ビタミンやミネラルのほかに、トリプトファンというアミノ酸が含まれています。これは、精神の安定や睡眠に深くかかわる、セロトニンとメラトニンという神経伝達物質の材料になります。

 豆乳ときな粉は、たんぱく質が豊富で、当然、レシチンも含まれています。黒ゴマには、抗酸化作用の強いセサミンやビタミンEが含まれています。

 このように、生卵入りバナナジュースは栄養たっぷりで、レシチンも手軽にとることができます。味もミルクセーキのように甘くておいしいので、飽きずに飲めます。材料費も、さほどかかりません。

78歳のクリニック会長が毎朝7年以上愛飲中!

 神津会長は、コップ1杯の生卵入りバナナジュースを毎朝、7年以上飲み続けています。そのおかげで、78歳になった現在も病気知らず。予防医学と栄養療法の普及のために、元気に全国を飛び回っています。

 神津会長の朝食は、このジュースとレシチン由来のサプリメントだけです。それでも空腹感はなく、かえって昼食をおいしくいただけるそうです。また、お通じも1日3回あるといいます。

 朝食に液状の物をとるのは、理にかなっています。朝は、脳も体も目覚めたばかりで、内臓があまり働いていません。消化機能もまだ万全ではないので、ご飯をしっかり食べるような朝食は、胃腸に負担をかけてしまいます。

 ですから、ジュースで消化器に軽く刺激を与えるくらいが、ちょうどよいのです。そして、お昼に、和定食のようなバランスの取れた食事をしっかりとるといいでしょう。

 また、生卵入りバナナジュースを朝に飲むと、血糖値の上昇が抑えられます。これは、豆乳に糖質が少ないうえ、豆乳に含まれるダイズイソフラボンに、血糖値を下げる作用があるからです。ただし、調製豆乳には糖質が添加されているので、成分無調整の物を使ってください。

 生卵入りバナナジュースを飲むと、おなかの冷えや、下痢を心配するかたもいらっしゃると思います。冷たいのが苦手なかたや胃腸が弱いかたは、豆乳を少し温めてからミキサーにかけるといいでしょう。

 ちなみに、ジュースに使うバナナは、皮が少し黒くなっているくらいのほうが熟度が高く、強い甘みがあります。また、黒ゴマは、粒のままでは消化されにくいので、黒すりゴマがお勧めです。

 飲み方は、一気に飲むのではなく、一口ずつ、噛むように味わって飲むといいでしょう。消化を助け、栄養の吸収を促します。

 栄養価が高いため、私たちは、このジュースを多くの患者さんにも勧めています。「甘くて美味」「腹持ちがいい」と好評です。手軽でおいしい点が、続けられる要因でしょう。

 1日1杯、手軽に脳を活性化させる生卵入りバナナジュースを、ぜひお試しください。

脳を活性化する!生卵入りバナナジュースの作り方

【材料】(コップ1杯分)
・生卵…1個
・バナナ…1本
・豆乳(無調整)…180~200ml
・きな粉…小さじ1と1/2
・黒すりゴマ…小さじ1と1/2

【作り方】
材料をミキサーに入れて15~30秒撹拌して、コップに注ぐ。
※冷たいのが苦手な人や胃腸が弱い人は、豆乳を少し温めてからミキサーにかけるとよい。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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