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カテキン摂取はペットボトル緑茶でOK!認知症を防ぐ緑茶の効果

カテキン摂取はペットボトル緑茶でOK!認知症を防ぐ緑茶の効果

緑茶に認知症を予防する効果があることが、疫学的に明らかになっています。そこで私は、緑茶カテキンが認知機能の低下を抑える機序について調べました。脳機能に関しては、緑茶をたくさん飲まなければ効かない、というわけではありません。1日1杯でもよいので、毎日飲み続けましょう。【解説】海野けい子(静岡県立大学薬学部准教授)

解説者のプロフィール

海野けい子(うんの・けいこ)
静岡県立大学薬学部准教授。静岡県立大学茶学総合研究センター教員(兼務)。薬学博士。
1976年、静岡薬科大学薬学部卒業。静岡薬科大学助手、静岡県立大学薬学部助手・講師を経て現職。この間、米国シカゴ大学ハワードヒューズ医学研究所・研究員、東京都健康長寿医療センター研究所・協力研究員、東北大学加齢医学研究所・共同研究員などを兼務。老化およびストレスによる生体機能変化の解析や、脳に対する抗老化作用物質の研究等を精力的に行っている。

神経細胞の突起が伸びて数も増えると判明!

 私が生まれ育った静岡県は、緑茶の産地です。その緑茶に認知症を予防する効果があることが、疫学的に明らかになっています。

 2006年に発表された東北大学の疫学調査では、緑茶を飲む頻度が高い高齢者ほど認知症になりにくいと判明しました。1日2杯以上緑茶を飲む人は、1週間に3杯までしか飲まない人に比べて、発症リスクが54%も低く抑えられたのです。

 また、金沢大学が行った疫学調査でも、緑茶を毎日1杯以上飲み続けた人は、認知症の発症リスクが軽減したという結果が出ています。
 どちらの調査も、紅茶やコーヒーでは、有意な効果は得られませんでした。

 私は十数年前から、脳の老化に対し、緑茶がどのように作用するかを研究してきました。これまでの私たちの研究でも、加齢に伴って脳機能が低下するマウスに緑茶カテキンを予め与えておくと、年を取っても脳機能が低下しにくいことがわかっています。しかし、その機序までは、わかっていませんでした。

 そこで私は、緑茶カテキンが認知機能の低下を抑える機序について調べました。この研究結果は、今年5月に開催された「第18回抗加齢医学学会総会」でも発表させていただきました。

 カテキンは、緑茶に多く含まれるポリフェノールの一種です。なかでも最も多く含まれているのは、EGCG(エピガロカテキンガレート)という物質です。これが小腸に入ると、ごく少量はそのままの形で吸収されます。そして、残りの大部分は、大腸でさらに分解されて、EGCGの代謝物ができます。

 そこで、EGCGだけではなく、これらの代謝物も脳内に入って、脳の神経細胞に働きかけるのかを調べたのです。
 脳内には、血液脳関門という細胞どうしが密着した血管があり、脳に有害物質が入らないようにしています。EGCGやその代謝物が血液脳関門を通過するのかどうかは、これまで確かめられていませんでした。脳内に入って、神経細胞にどのように作用するかも不明でした。

 それらを検証するために、私たちは、次の二つの実験を行いました。

❶血液脳関門の通過
 血液脳関門を再現した特殊な装置を用いてEGCGやその代謝物が、血管側から脳側に移行できるかを調べたところ、少量ながら通過し、脳内に入ることが確認できました。

❷神経細胞への作用
 脳内に入ったEGCGやその代謝物が神経細胞に届いた際、どのように作用するかを調べました。すると、神経細胞から出ている神経突起が伸びて、数も増えることがわかりました。
 神経細胞は、突起の先端で神経伝達物質のやり取りをして、情報の伝達や処理をしています。しかし、年を取ると突起が短くなったり数が減ったりして、情報交換のネットワークが作れなくなってしまいます。
 EGCGや代謝物は、そのネットワークを密にして、脳機能を高めていると考えられるのです。

ペットボトルの緑茶でも熱い緑茶と同じ効果!

 さらに、EGCGとその代謝物は、作用時間に時差があることもわかりました。
 緑茶を飲むと、小腸から吸収されたEGCGは、約2時間後に血中濃度がピークになり、8時間後には血中から消失します。一方、大腸から吸収される代謝物は、8時間後以降から血中に入り、脳に流れて神経細胞に働きかけると考えられます。

 前述した疫学調査の結果で、1日1〜2杯の緑茶の摂取で効果が認められたことは、カテキンの成分が、時差をもって持続的に神経細胞を活性化させたからではないかと推察されます。

 緑茶には、カテキン以外にも、テアニンという茶葉に特有なアミノ酸が含まれています。
 テアニンには、ストレスを緩和し、気持ちをリラックスさせる作用があります。ストレスは、脳機能の低下を促進させる要因の一つです。テアニンで心を穏やかに保つことも、認知症予防に役立ちます。しかし、緑茶の中にEGCGやカフェインが多くなると、テアニンの作用は打ち消されてしまいます。

 EGCGは高い温度で浸出されますが、低い温度ではあまり浸出されません。一方、テアニンは温度に関係なく浸出されます。ですから、テアニンの効果を得るには、ぬるめのお湯や水でお茶を出すとよいでしょう。

 脳機能に関しては、緑茶をたくさん飲まなければ効かない、というわけではありません。1日1杯でもよいので、毎日飲み続けましょう。カテキンについては、ペットボトルのお茶でも同様の効果があります。

 お勧めの飲み方は、朝は熱い緑茶でカテキンをとり、夕方から寝る前にかけてはぬるめ、または水出し緑茶でテアニンをとることです。認知症予防はもちろん、寝つきがよくなり、ストレスも軽減しやすくなります。
 皆さんもぜひ、1日1杯の緑茶を習慣づけてください。

目的に合った温度で飲もう

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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