NHK朝ドラにも登場した「昆布酒」

古くから、日本の食卓に欠かせない食品の一つであるコンブは、健康維持や老化防止に役立つ成分を豊富に含んでいます。
私たち日本人は、昔からコンブでだしを取ることで、コンブの有効成分を取り入れてきました。
しかし、多忙な現代人は、コンブから直接だしを取らなくなり、市販の粉末だしに頼りがちです。
また、食の欧米化により、コンブだしを用いた和食を口にする機会もへりました。
コンブそのものを具材として使う料理も、それほど多くありません。
そこで、もっと手軽にコンブの有効成分をとる方法としてお勧めなのが、「コンブ酒」です。
NHK朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』には、数多くの料理が出てきました。
その中で、安いお酒にコンブを入れると、上等なお酒に変わるというシーンがありました。
コンブ酒は、乾燥コンブを小さく切って、お酒にひと晩漬ければ完成です(詳しい昆布酒の作り方は別記事参照)。
コンブは種類が豊富ですが、コンブ酒に使うコンブは、基本的にどんなものでもかまいません。
こうして作ったコンブ酒は、コンブのうまみ成分がお酒に溶け出て、まろやかで飲みやすくなります。
これを調味料としてさまざまな料理に入れたり、毎日の晩酌の際に飲んだりしてもいいでしょう。
そもそも、お酒を飲むとき、体にいいものといっしょに飲んだほうが、健康上望ましいのです。
コレステロールを吸着して排出!動脈硬化を予防する
コンブ酒の健康効果として、まず挙げられるのは、動脈硬化の予防です。
動脈硬化は、血液中のコレステロールなどがふえて血管壁にたまり、血管の弾力が失われた状態です。
その点、コンブに含まれる水溶性食物繊維のフコイダンとアルギン酸には、コレステロールの一部を吸着して、便として排出する作用があります。
フコイダンはコンブのヌルヌルとした粘り成分ですが、血液が凝固するのを防ぎ、血栓をできにくくする働きもあるのです。
そのため、コンブ酒を取り入れることで、血液がサラサラになり、血管が丈夫になるので、動脈硬化の予防や改善が期待できます。
その結果、動脈硬化が原因で起こる心臓病や脳卒中の予防になるのです。
昆布の成分がナトリウムと結合して体外に排出する
コンブ酒は高血圧にも効果的だと考えられます。
高血圧の原因の一つは、食事における塩分(ナトリウム)のとりすぎです。
コンブに含まれるフコイダンとアルギン酸は、体内に摂取されると、腸内のナトリウムと結合し、そのまま体外へ排出します。
さらに、ミネラル成分であるカリウムも多く含んでいます。
カリウムは腎臓でナトリウムの再吸収をおさえ、尿として体外へ排出する作用があるのです。
加えて、料理にコンブ酒を使うことで、コンブのうまみ成分の働きで、少量の塩分でもおいしく感じます。
つまり、塩分控えめでも、満足感の得られる食事が可能になるのです。
以上のことから、コンブ酒を上手に利用することで、高血圧の改善効果が期待できるのです。
食後の血糖値の急上昇を防ぐ
コンブ酒の健康効果はそれだけではありません。
その一つは、糖尿病への効果です。
フコイダンは、体内に摂取されるとほかの食べ物に吸着します。
その粘り気によって胃の中を食べ物がゆっくりと移動するので、胃での滞留時間が長くなり、体内へのブドウ糖の取り込みを遅らせます。
これにより、食後の血糖値の急上昇を防ぐのです。
さらに、フコイダンは肥満にも効果が期待できます。
先に述べたように、コレステロールの数値を抑制する働きがあり、その粘り成分が脂肪と結びついて、便として排出する作用があるからです。
また、フコイダンには抗酸化作用もあり、紫外線による肌細胞の老化を防いでくれます。
したがって、コンブ酒をとることは、加齢による肌のシミやシワ、くすみ、白髪や薄毛の予防に効果的だといえるのです。
そして、抗アレルギー作用もあるので、アトピー性皮膚炎の緩和も期待できます。
ところで、フコイダンを構成しているのが、硫酸基という物質です。
この硫酸基には、胃ガンのリスクを高めるピロリ菌を、胃から追い出す働きがあるのです。
コンブには、モズクの5倍の硫酸基が含まれています。
コンブの中でも、ガゴメコンブという種類により多く含まれています。
1日にコップ1杯が目安!甲状腺の病気の人は避ける
このように、血管を丈夫にするほか、さまざまな健康効果をもたらしてくれるコンブ酒ですが、注意したい点があります。
コンブにはヨウ素が多く含まれているので、甲状腺の病気(バセドー病、橋本病など)や甲状腺の腫れがある人は、コンブ酒の摂取を避けてください。
また、それ以外の人でも、飲用の際、飲みすぎには注意してください。
少量のお酒であれば、血流を促す作用があるので、せいぜい1日にコップ1杯を目安にしましょう。
なにより、コンブの豊富な有効成分を最大限に吸収しやすい体作りが大切になります。
じゅうぶんな睡眠と、ストレスを極力ためない生活を心がけることで、コンブの有効成分が体内に吸収されやすくなるのです。
解説者のプロフィール

信川益明(のぶかわ・ますあき)
千代田漢方内科クリニック院長。
東京都生まれ。慶応義塾大学医学部大学院修了。医学博士。慶応義塾大学医学部教授を経て、現職。医療法人社団千禮会理事長。医療健康科学研究所所長。日本健康科学学会理事長。上海中医薬大学客員教授。厚生労働省委員。農林水産省委員。
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