解説者のプロフィール

加藤大明(かとう・だいめい)
●森の宮東鳳院
札幌市西区八軒1条西1丁目1-26アルファ琴似駅前ビル5F
011-615-9005
http://morinomiya-tohoin.net/
森の宮東鳳院院長。
鍼灸師。1951年 北海道札幌生まれ。20歳の時、ひどい腰痛に悩まされ、独学にて自分自身で回復させたことから整体などの治療に興味をもちはじめる。医療機器販売のかたわら「技」を磨くべく、5年間無料で「施術」や「治療」に没頭。現在、北海道札幌市で「森の宮東鳳院」を開き、赤ちゃんから寝たきりの方までを治療している。
薬に頼らず血圧が下がる
私は、北海道札幌市で整体鍼灸院を開院して25年以上になります。
これまで治療した患者さんの中には、高血圧で悩まれている人たちが多くいました。そんな人にお勧めしているのが「アキレス腱トントン体操」です(やり方は下記参照)。
この体操は、あおむけになり、水または砂の入ったペットボトルや、園芸用の丸太にアキレス腱を落とし、トントントンとリズムよく刺激して、血圧を下げる健康法です。
考案のきっかけは、以前私が学んでいた「西式健康法(西勝造氏が考案した総合的健康法)」の会報でした。そこに、アキレス腱を叩いて体の調子がよくなったという人の報告が紹介されていたのです。
関心を持った私は、その人に直接話を伺いに行きました。そして、試行錯誤しながら実践してみたところ、上記の方法でアキレス腱を刺激すると、血圧が速やかに下がることがわかったのです。
「降圧剤を服用してもあまり数値が下がらない」、「正常値範囲内であるが、このままいけば、降圧剤に頼らなくてはいけないかもしれない」など、現在、高血圧で悩まれている人にぜひ実践してもらいたい療法です。
また、西式では、最大血圧と最小血圧の比が1.57に近づくように努力すべきとされています(図参照)。
この上下の血圧比を正常化するのにも、アキレス腱トントン体操は有効なのです。

では、なぜアキレス腱トントン体操を行うと、血圧が低下するのかをご説明しましょう。
ふくらはぎは、血液の逆流を防ぐ弁や、筋肉の収縮・弛緩で血流を促進する仕組みを持ち、「第2の心臓」とも呼ばれています。
このふくらはぎには、ヒラメ筋と腓腹筋という二つの筋肉があり、アキレス腱に付着しています。アキレス腱をたたいて、ヒラメ筋と腓腹筋を刺激すると、下肢の血流を促す効果があるのです。
高血圧対策としてウオーキングが勧められるのも、ふくらはぎの筋肉の弛緩・収縮による血流促進効果があるからです。
ただ、体力がない、ひざなどの関節が悪いといった理由でウオーキングができない人もいるでしょう。そこで、寝ながら行うアキレス腱トントン体操は、誰にでもできる血圧降下体操として非常に有効となります。
アキレス腱トントン体操は、1日2回、1回につき、片足150回(両足で合計300回)を目安に行ってください。
足を高く上げる必要はありません。20㎝程度上げれば十分です。
また、ペットボトルの上にアキレス腱を落としたさい、足の指先が自然に前方へ伸びるくらい、足首はリラックスさせてください。
行うさいの注意点は三つ。
①筋肉が炎症や内出血を起こす恐れがあるので、ふくらはぎを刺激するのはやめましょう。
②血流が変化するスポーツ後や、食事・入浴の前後1時間は避けましょう。
③集合住宅にお住まいの人は、階下に振動が響かないよう、ベッドや布団の上で行いましょう。
高血圧以外の症状にも有効
また、加齢などの影響でリンパ(体内の老廃物や毒素、余分な水分を運び出す体液)の流れが滞ると、体中の靭帯(関節の骨と骨をつなぐ線維状の組織)に老廃物がたまります。
靭帯であるアキレス腱を刺激すると、血流のみならず、リンパの流れもよくなり、老廃物が排出されるのです。このことで免疫力が高まり、慢性気管支炎や、ぜんそくなど、呼吸器系の症状が改善されます。
さらに、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)やホルモン分泌のバランスも整います。
その理由は、アキレス腱を刺激すると、足首の捻挫などの後遺症で開いてしまう、下脛腓関節(すねを構成する二つの骨である脛骨と腓骨の関節)が収縮し、ゆがみが修正されるのです。
すると、すねの内側にある下腿骨間膜の緊張が取れ、脳内の膜の緊張まで連動してゆるめます。
脳内の膜のそばには、自律神経やホルモンの分泌にかかわる延髄(脳の最下部で脊髄の上部の続く部分)や視床下部があり、それらも正常に働くようになるのです。この作用から、耳鳴りや突発性難聴が改善したという人もいます。
高血圧をはじめ、さまざまな症状の改善が期待できる、アキレス腱トントン体操を、ぜひお試しください。

即効で血圧が下がる!アキレス腱トントン体操のやり方
準備

【用意するもの】
1.5Lの丸形のペットボトル、バスタオル1枚、輪ゴム2本

❶ペットボトルを水または砂で満タンにして、しっかりキャップを閉め、バスタオルで巻く

❷左右の両端辺りを輪ゴムで巻いて完成
やり方

❶ペットボトルの上に足首が当たるようにあおむけに寝る

❷ペットボトルの上で足を20cm程度上げて落とし、アキレス腱をトントントンと刺激する。足首を柔らかくして、リズムよく行う。片側の足を連続で50回(目標数なので回数は少なくてもOK)行ったら、もう片方の足も同じ回数行う

※ふくらはぎ付近は筋肉を痛める可能性があるので刺激しない