おなかがペタンコになるまで息を吐く

私は昔、毎日体を動かしていたにもかかわらず、ひどい便秘症でした。
それが、気功に取り組むようになったら、お通じがスムーズになり、すっかり便秘知らずになったのです。
気功の呼吸法は、大きく息を吸ったあと、おなかがペタンコになるまで、できるだけ長く吐くのが特徴です。これを、宇宙のエネルギーを取り入れ、肉体のエネルギーとして循環させるような気持ちで行うのです。
深い呼吸を行うと、唾液をはじめとした消化液がさかんに分泌され、胃腸の働きが活発になります。
その結果、腸の動きが促進され、お通じが順調になると考えられるのです。
実際、私の生徒さんの中には、気功を続けるうちに、長年の頑固な便秘から解放された人が少なくありません。
気功を行えば、自然と腸が健康になります。
ですが、私は「より即効的に便秘を改善する方法はないか」と、考えました。
そして、25年にわたる気功研究の中で考案したのが、今回ご紹介する快便呼吸です。
私の教室では、「おじぎ腹圧呼吸法」と言っています。
腹部のポイントを指先で押しながら呼吸をすることで、便意を促し、スムーズな排便が期待できます。
「快便呼吸(おじぎ腹圧呼吸法)」のやり方
やり方を説明しましょう。
立ったまま行っても、いすに腰かけて行っても、どちらでけっこうです。
トイレの洋式便座で行うのもいいでしょう。
①から⑥まで続けて行うのが理想ですが、最初は、左右に体をひねる動作が難しいかもしれません。
ですから、慣れるまでは、まず深い呼吸をすることに重点を置き、①~③を丁寧に行いましょう。
それだけでも便通がスムーズになるはずです。
①~③ができるようになったら、④~⑥を加えてください。

❶まず、指先を当てる場所を決めます。
へそから左右に、指の横幅3本分離れた場所がポイントです。
そこに、親指を除いた4本の指を当てます。

❷5秒かけて鼻から大きく息を吸い、下腹をふくらませます。

❸次に、15秒くらいかけてゆっくり口から息を吐きながら、おじぎをするように上体を前に倒します。
このとき、指でおなかを押し込みます。
鼻から息を吸いながら、元の姿勢に戻ります。
*①~③を1セットとして、3セット行ってください。

❹①の状態から、口からゆっくり息を吐きながら、体を右にひねって、右斜め前におじぎをします。

❺ 鼻から息を吸いながら、元の姿勢に戻ります。

❻口からゆっくり息を吐きながら、今度は左に体をひねって左斜め前におじぎをし、鼻から息を吸いながら、元の姿勢に戻ります。
*④~⑥を1セットとして、2セット行ってください。
便秘に効くツボを一度で刺激できる
この呼吸法は、おなかに指を当てて前屈するという動作も、快便効果を促します。
指を当てるへその両わきには、天枢や大巨といった、便秘によく効くツボがあります。
正確な位置としては、天枢はへそから指3本分離れた両側、大巨は天枢から指3本分下にありますが、指4本をへその両側に当てることで、これらのツボを一度で刺激することができます。
また、背中にも便秘に効くツボがあります。
へその裏あたりにある大腸兪と小腸兪です。
上体を前屈させることで、これらのツボも刺激されるため、腸の働きが活性化して、便秘改善につながるのです。
腸の働きがよくなって、腸がきれいになると、便通以外にも心身の変化を実感できます。
その一つが、精神が安定し、ストレスがなくなるということです。
体と精神は、密接な関係にあります。
精神的なストレスから便秘になったり、下痢を起こしたりすることは、皆さんも経験があるでしょう。
これは、逆のこともいえるのです。
腸が元気になると、嫌なことがあっても、ダメージの乗り越え方が上手になります。
したがって、日ごろから腸を健康にすることは、精神のバランスを保つために重要なのです。
また、快便呼吸法を行うときには、下腹を意識しながら行ってください。
すると、「腹が据わる」という言葉のように、腸が元気になると、精神が整います。
さらに、前屈することによって、背骨が動きますが、背骨の運動は、血管や臓器、ホルモン分泌を支配する自律神経を整えるとされ、この点でも心身の健康増進につながります。
もちろん、腸が健康になると、肌もきれいになります。
私の気功教室の生徒さんたちは、皆さん美肌が自慢で、いつもお互いにほめ合っているほどです。
腸の働きを高める快便呼吸を、ぜひお試しください。
解説者のプロフィール
古屋ネネ(ふるや・ねね)
九州気功協会会長。