解説者のプロフィール

深町公美子(ふかまち・くみこ)
●A-ha治療室
http://www.ahacu.com
A-ha治療室代表
鍼灸師、エステティシャン、アロマセラピスト。鍼灸、経絡などの東洋医学にエステやアロマを取り入れ、心身や肌の悩みに対応する治療を行う。ネットメディアでの連載も好評。
「養老」はアンチエイジングのツボ
目の疲れや見えにくさ、かすみ目など、目の症状を感じているかたは多いのではないでしょうか。特に中高年のかたは、加齢による目の老化に加えて、スマホやパソコンの使用が、目の症状を加速させます。
そんなかたにお勧めしたいのが、手首にある「養老」というツボです。名前のとおり、養老は老いを養生するツボで、アンチエイジングのツボとしても見直されています。見つけやすくて押しやすく、しかも即効性があり、押すとすぐに目がすっきりするので、私も好んで使っています。
東洋医学の五行説では、目は「木・火・土・金・水」の五つの元素のうちの「木」に属し、臓器では肝の経絡(東洋医学でいう生命エネルギーの通り道。その上に点々とツボがある)にあります。
肝は、肝臓の機能だけでなく、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)や血液を調節するなど、幅広い機能を含んでいます。そうした肝の機能が低下すると、目に不調が現れると考えられているのです。

即効的な効果のある郄穴の一つ
しかし養老は、肝のツボではありません。五行の「木」の隣の「火」のツボで、小腸の経絡に属します。五行説では、隣同士の五元素の関係は深く、木は火を助ける関係にあります。ですから養老は、目の症状にもよく使われます。
しかも養老は「郄穴」という特殊なツボです。郄穴は速やかに原因(邪)を取り除くツボで、急性症状に効きます。ですから、即効的な効果があるのです。
郄穴は、12経絡それぞれにありますが、骨と骨の間、骨と肉の間など、隙間にあるのが特徴です。こうした隙間は、気血が集まるところとされています。
ですから、そこをしっかり押すとツボが開かれ、血液や気の流れがよくなります。すると、目にも血流が届いて、目の機能が改善していくのです。
実際に養老を刺激すると、その場で視界が明るくなり、目がよく見えるようになります。
私のお客さまで、こんなかたがいらっしゃいました。
Aさん(40歳・女性)は職場のストレスから心の病を患い、鍼治療による全身調整を望んで来院されました。初めての施術の日、「目が見えない、開かない」と訴えたので、低下していた肝や心のツボと一緒に、養老のツボも刺激しました。
施術後、Aさんが最初に発したのは、「目が開いた!見えるようになった」という言葉でした。来られたときは目に力がなく、表情も暗かったAさんですが、1回目の治療で、目に力強さが戻りました。養老のツボの効果を再認識した例です。
目の下のくまの軽減にも役立つ
養老は、手首の小指側の下にある、くるぶしのような骨の突起の下の、骨と骨の間のくぼみにあります。
ここを、親指の腹で1分ほどしっかり押します。押し続けてもいいし、押したり力を抜いたりしてもいいでしょう。
目の症状が片方だけでも、両手に行ってください。朝起きたときや、夜寝る前などに、1日3回くらい押すといいでしょう。お風呂上がりは血流がよくなっているので、さらに効果的です。
養老は、高齢者向けのツボと思われがちですが、若い人からお年寄りまで、どなたにも効果があります。今は年齢を問わず、夜遅くまでスマホやパソコンを操作することが多くなりました。
すると、目は疲れているのに、なかなか眠れません。こうした不眠も、目を疲れさせる原因になります。
養老には、ストレスを緩和する作用もあるので、イライラや気分の落ち込みを和らげて、入眠しやすくしてくれます。よく眠れれば目の疲れが取れて、翌日の目の見え方も違います。また、養老の刺激で目の血流がよくなるので、目の下のくまが薄くなる効果も期待できます。
さらに、小腸経のツボは関節の痛みを取る効果もあるので、スマホの使いすぎによる手指の痛みや、手首、ひじの痛みなどにも効果があります。
養老は、目の疲れ、痛み、ショボつき、かすみ目、ドライアイ、近視や老眼と、幅広い症状に効果があります。目をいつまでも健やかに保つために、覚えておくと便利なツボです。
ただし、飲酒後や発熱時、重い病気にかかっているときは、ツボ刺激は控えてください。
養老刺激のやり方
養老の探し方

手首の小指側の下にある、くるぶしのような骨の突起の下にある骨と骨の間のくぼみ。押すとズーンと響く。両手首にある。
刺激のしかた

親指の腹を養老に当てて、ぐっと押す。1分ほどそのまま押し続けるか、3秒押して3秒力を抜くのをくり返してもよい。
※1日3回を目安に、両手に行う。