解説者のプロフィール

三宅さやか(みやけ・さやか)
●はり治療院睛聴(みやけ鍼灸院改称)
東京都新宿区四谷1-18
080-4332-3849
http://mimitome.com/
はり治療院睛聴院長。
大学卒業後、民間企業に勤めているとき、東洋医学に出合う。10数年の会社員生活に終止符を打ち、鍼灸専門学校へ入学。国家資格取得後は、セタガヤ治療室の佐藤信雄院長に師事し、耳と目の症状を緩和する鍼治療を学ぶ。セタガヤ治療室の福岡移転に伴って独立し、現職。自身も耳鳴りやめまいを患った経験があるため、「相談しやすい」との声が多い。
気と血の滞りが解消し不調が改善する!
私の治療院には、耳鳴りや難聴、めまいの症状を訴える患者さんがたくさん見えます。病院で検査をしても異常がなく、薬の効果も感じられずに、わらをもつかむ思いで当院にたどり着いたかたも少なくありません。
私は主として鍼治療を行いますが、自分で行うツボ押しもお勧めしています。簡単で安全なので継続しやすく、実感も得やすいようです。
東洋医学では、生命エネルギーである気の流れが滞ることで、さまざまな症状や病気が生じると考えます。
気の通り道が、経絡です。そして、経絡上に点在するポイントを経穴といいます。この経穴が、一般的にツボと呼ばれているものです。
体に不調があると、関連するツボに、気と血(血液を含む体液)の滞りが起こります。そうしたときにツボを押すと、痛みを感じたり、ほかの場所よりもかたかったりするでしょう。
ツボに適切な刺激を与えると、気と血が流れだし、痛みやかたさが和らぎます。それに伴って、ツボに関連する不調が改善に向かうのです。
回数を多く行うより毎日続けることが大事
今回ご紹介するツボは、いずれも耳を取り巻く気と血の流れをスムーズにする作用があります。耳鳴りや難聴、めまいといった症状改善が期待できます。
最近は、働き盛りの40代50代のかたが、ストレスによって耳鳴りや難聴、めまいを起こすケースが増えています。
耳鳴りや難聴、めまいは、重篤な病気のサインである場合もあるので、まずは耳鼻科か脳神経外科を受診しましょう。「原因不明」「ストレスによるもの」といった診断であれば、鍼灸治療を併用すると早期回復が望めます。
鍼灸治療は多くても週に1回程度なので、セルフケアが大事になります。鍼の効きめが格段に上がりますし、「自分で自分の体を治す」という意識は非常に大切です。
時間を決めて行ってもよいですし、電車やエレベーターを待っている間や、テレビを見ながらなど、手の空いているときに行ってもかまいません。大事なのは、回数を多く行うことよりも、毎日続けることです。

手の空いているときにツボを押そう!
耳鳴りと難聴、めまいに効くツボ押しのやり方
では、耳鳴りと難聴、めまいに効くツボ押しのやり方を紹介しましょう。まず、耳鳴りと難聴に効く三つのツボの位置を説明します。
ツボの押し方は、どこも同じです。指の腹をツボの位置に当て、「痛いけれど気持ちいい」と感じる程度の強さで、「い〜ち、に〜い、さ〜〜ん」というテンポで押して、ゆっくりと力を抜きます。一つのツボに対して、3回くり返し、これを1セットとして、1日1〜3回行いましょう。
耳鳴り・難聴に効くツボ「中渚」
一つめは、中渚というツボです。このツボは手の甲にあります。薬指と小指の間を、反対の手の指でたどっていき、指が止まるところが中渚です。ただし、「このツボを正確に押さなければいけない」というわけではありません。手の甲の薬指と小指の間を触ってみて、いちばん痛いところを刺激すればいいのです。


手の甲の薬指と小指の間を触り、最も痛いところを押す。
耳鳴り・難聴に効くツボ「足臨泣」
二つめのツボは足臨泣です。このツボは足の甲にあります。薬指(第4趾)と小指(第5趾)の間を手の指でたどり、行き止まりが足臨泣です。手の甲と同様、薬指と小指の間を触って、いちばん痛いところを押して刺激します。


足の甲の薬指(第4趾)と小指(第5趾)の間を触り、最も痛いところを押す。
耳鳴り・難聴に効くツボ「翳風」
三つめは、耳の近くにある翳風というツボです。スマートフォンやパソコンの画面を長く見ていると、ここがこってかたくなります。
翳風は、耳たぶの後ろ側にある骨の出っ張り(乳様突起)の下のくぼみにあります。押したとき、ズンと響くところを刺激します。

耳たぶの後ろ側にある骨の出っ張り(乳様突起)の下のくぼみを左右の手の親指で同時に押す。
ツボを刺激すると、耳鳴りの音色が変わったり、音が大きくなったりすることがあります。これは、ツボ刺激によって体が反応しているという現れなので、心配はいりません。ツボ刺激を続けてください。
めまいに効くツボ「百会」
最後は、めまいに効く百会のツボです。このツボは、頭のてっぺんにあります。左右の耳の穴を結んだ線と、眉間の中心から頭のてっぺんに向けた線が頭上で交わるところにあります。額の生え際の左右中央を、つむじに向かって触っていき、いちばん痛いところを押して刺激します。

左右の耳の穴を結んだ線と、眉間の中心から頭のてっぺんに向けた線が、頭上で交わるところ。その周辺を触り、最も痛いところを押す。