【お悩み】閉経後に不正出血。「気になったらまた受診してください」と言われます。どうしたらいいでしょうか?
閉経後、何年もたっていますが、ときどき不正出血があります。産婦人科で検査してもらったところ、子宮がんなどの病気ではないそうです。しかし「様子を見てください」「気になったらまた受診してください」と言われるだけでなんとなく落ち着きません。(70代女性)
解説者のプロフィール

たつのゆりこ
●Be born助産院
東京都世田谷区祖師谷6-13-13
03-5429-2860
http://www.beborn.info
Be born助産院院長・鍼灸師。
1997年「女性と子どものための治療室Be born」を開院。産後の乳房トラブルから不眠、甲状腺機能異常に注目し、妊娠中や出産後の養生の大切さについて正しい知識の普及に努める。膣のケアの重要性について説いた原田純氏の著書『ちつのトリセツ劣化はとまる』(径書房)を指導・監修し、ちょっとしたセンセーションを巻き起こした。
膣が乾燥してカチカチに硬くなったことが原因
閉経後の出血でいちばんに考えられるのは、子宮体がんや子宮頸がんによるものです。出血の量のいかんによらず必ず病院を受診しましょう。
受診すると、出血の色、形状、量、どういったときに出血したかなどを問診されます。検査も受け、まずは悪性の病気ではないことを確かめましょう。
今回のご相談では、すでに産婦人科を受診して、がんではないことを確認されています。
治療が必要な病気ではない場合、病院では「様子をみてください」と言われることがほとんどかと思います。
しかし、出血という症状があるのですから、不安は払拭されません。なぜ出血があるのか、原因として考えられることを挙げていきます。
健康な膣の表面は粘膜で履われていて、そこから粘液が分泌されています。そのような膣はいつも潤っていて、軟らかです。
しかし、閉経すると女性ホルモンのエストロゲンが分泌されなくなります。すると、粘液が分泌されなくなり、膣粘膜は薄く硬くなるのです。いわば、干からびたカチカチの状態です。
乾燥した粘膜は、性行為はもちろん、触ったり触られたりといった、ちょっとした刺激でも出血しやすくなります。歩いているだけでこすれて、出血する人もいるほどです。
それに加えて、閉経後は膣の自浄作用も低下します。健康な膣の中にはデーデルライン桿菌という細菌がいて、膣内を感染から守っています。
しかし、閉経後はこの細菌が減るため、雑菌にも感染しやすくなります。すると粘膜に炎症が起こり、ただれて出血することもあります。縮こまった膣や会陰を ほぐし血行をよくする
相談者さまの出血も、膣粘膜からの出血の可能性があります。それなら、セルフケアで改善することができます。
その方法としてお勧めするのが「会陰マッサージ」です。
これは、マッサージ用のオイルを指に取り、会陰(膣と肛門の間の部分・下の図参照)や膣の入り口に、やさしくぬりこみながらマッサージをする方法です。
日本ではなじみがありませんが、ヨーロッパでは、当たり前に行われています。
会陰マッサージには縮こまった膣や会陰の筋肉をほぐし、血行をよくする効果があります。早ければ1週間で、膣の変化を感じることができるでしょう。
膣の筋肉がほぐれれば、粘液の分泌が促されるので、乾燥や感染によるトラブルが改善に向かいます。性交痛や膣のにおいの解消にも効果的です。

乾燥した膣を軟らかくする会陰マッサージ
陰や膣にマッサージ用のココナッツオイルを指につけ、やさしくなでる。
膣をケアするだけで尿もれやうつも改善
会陰マッサージの効果は、それだけにとどまりません。実は、膣が硬くなっている人は、骨盤内の筋肉すべてが同じような状態になっていると考えられます。
骨盤の底には、下から内臓を支えている骨盤底筋と呼ばれる筋肉があります。この筋肉が衰えると、便秘や尿もれ、便もれなどのトラブルが起こりやすくなります。
しかし、会陰マッサージで膣が軟らかくなれば、骨盤底筋も弾力を取り戻します。
会陰マッサージを実践した人からは「浣腸しないと出なかったがんこな便秘が治った」「産後からずっと続いていた尿もれが治った」といった声がよく聞かれます。
また、女性の生殖器は脳と密接につながっています。膣が硬くなると、頭も硬くなるのです。
ですから、会陰マッサージは更年期以降に起こりがちなイライラやうつ、不安感といった精神的な問題にも効果的です。
会陰マッサージに使うオイルは、できるだけ酸化しにくいオイルを選びましょう。
お勧めはマッサージ用のココナッツオイル、もしくはスイートアーモンドオイルです。
これらのオイルは肌への浸透が非常によく、カチカチの膣粘膜を軟らかくして、栄養を与えてくれます。老廃物の排泄を促す効果もあります。
日本の女性は性へのタブー意識が強く、自分の手で膣を触ることに抵抗がある人もいることでしょう。しかし、年齢を重ねていけば、いずれ、おむつによる介護を受ける可能性が高まります。
そのときには、自分ではない誰かに、膣を含むデリケートゾーンのケアをしてもらうことになるのです。自分の体の一部なのですから、人にケアをされる前に、膣のケアに向き合っておくことはとても大切なことです。
会陰マッサージによって得られるメリットは前述したとおり絶大です。膣や骨盤底筋が若返ることによって、子宮下垂感の解消はもちろん、おむつによる介護が必要な期間もずっとずっと短くなるでしょう。