牛乳はウシの赤ちゃんの飲み物
「健康のために、毎日牛乳を飲んでいます」
「冷蔵庫に牛乳を欠かしたことはありません」
こういう家庭は、とても多いと思います。学校給食でも必ずといっていいほど、毎日牛乳が出ます。赤ちゃんに牛乳を飲ませるように育児指導する栄養士も、少なくありません。
戦後の食糧難の時代には、牛乳は確かに栄養補給の一助になったことでしょう。しかし、今では乳製品には多くのリスクがあり、それがさまざまな病気の原因になっていることがわかってきています。
もう「牛乳神話」は崩壊させなければいけません。そのことを、ぜひ皆さんに知っていただきたいと思います。
そもそも、牛乳はウシの赤ちゃんの飲み物です。そこに含まれるたんぱく質は、人間が消化することのできないα型のカゼインが中心です。そのうえ、人間が飲む状態の牛乳は、加熱殺菌されているため、たんぱく質の分解に必要な酵素も死滅しています。体に入っても分解できないたんぱく質は、未消化物となって腐敗し、腸の中を汚したり、アレルギーの原因となったり、発ガン物質を発生させたりします。
乳がんや前立腺がんのリスクファクター
また、日本人の75%は乳糖不耐症です。このため、牛乳などの乳製品をとると便秘や下痢を起こし、腸の状態が悪化します。
カゼインは、胃の中でミネラルの吸収障害を起こすこともわかっています。
特に、乳製品は鉄不足を招きやすいので要注意です。鉄は、赤血球やコラーゲンの材料で、酵素活性を促します。不足すると、体が冷えやすく、疲れやすくなります。また、粘膜障害からカゼをひきやすくなったり、胃腸の状態も悪くなったりします。
こうして、免疫細胞の70%が存在するといわれる腸が不健康になると、当然、免疫力は低下します。腸が常に荒れているということは、慢性炎症があるということです。慢性炎症は、動脈硬化やガンなど、さまざまな病気の危険因子になります。
腸にトラブルがあると、腸粘膜が本来体内に通すべきでないものを通してしまう「リーキーガット症候群」を引き起こします。各種アレルギー疾患や、関節リウマチなどにもつながります。
また、牛乳は人間が飲むと、胃での吸収障害のほかに、カルシウム不足を招くことが報告されています。未消化物が血液に入ると体内が酸性化し、それを本来の弱アルカリ性に戻すために、骨からカルシウムを溶かし出すのです。
カゼインの分解が不完全だと、脳内モルヒネの働きをするペプチド(たんぱく質が分解されアミノ酸が連なったもの)が生まれます。これは、落ち着きがない、奇声をあげるなど、子供の多動症だけでなく、大人の精神的不安感なども呼び起こします。
さらに、乳製品はリンを多く含む食べ物です。リンには物質を硬くする作用があり、動脈硬化や腎障害の原因になります。
牛乳に過剰に含まれる女性ホルモンや、ウシの赤ちゃんが1日1kg体重をふやすために必要な成長ホルモンは、乳ガン、前立腺ガン、卵巣嚢腫、子宮筋腫のリスクファクターとしても知られています。
いかがですか?人間が牛乳を飲むことには、こんなにたくさんの弊害があるのです。現代人を悩ませる病気や症状に、乳製品が関係していることは、かなり多いのかもしれません。
牛乳や乳製品の主な弊害一覧

「健康のために牛乳を毎日飲む」はやめたほうが良い
実際に、私のクリニックでも、乳製品をやめて症状が改善した人はたくさんいます。
例えば、女性に多い「便秘を解消するためにヨーグルトを食べている」という人は、乳製品をやめることで、かえって便秘が解消することがあります。
50代の男性は、遅延型アレルギー(アレルギー反応が数時間から数日間、あるいは数週間たって起こるもの)の検査で、乳製品に陽性と出たため、乳製品をとることをやめてもらいました。すると、関節の腫れやうずきなどの、関節リウマチの症状が改善しました。
婦人科系の疾患では、乳製品をやめてもらうことを鉄則にしています。やめた人のなかには、生理不順が改善した人や、卵巣嚢腫が7cmから2cmに縮小した20代の女性などもいます。
給食で牛乳を出すのをやめた小学校では、子供が落ち着いた、アトピーの子がへった、学力が上がったなどという話も聞いています。
もちろん、乳製品が原因と考えられる疾患やアレルギーがなければ、牛乳をたまに飲むぐらいは問題ありません。ただ、「健康のために毎日飲む」という考えは、今すぐやめるべきです。ましてや、今は牛乳だけでなく、乳製品を使った洋食やお菓子などがあふれています。
口を潤すための飲み物は、水かお茶がいちばん。必要な栄養は食べ物からとって、乳製品は嗜好品として、たまにとる程度にするのが得策でしょう。
解説者のプロフィール

関西医科大学卒業。医学博士。総合内科、腎臓内科、ホメオパシーの専門医。大学病院・総合病院で臨床・研究後、クリニックを開設。自然医療や漢方・機能性食品などの補完・代替医療と、西洋医学、心のケアなどを統合的に駆使し、難治性疾患の治療を行う。日本自律神経免疫治療研究会会員。