ベストセラー「うつヌケ」作者が解説! うつから抜け出すための「朝」の習慣とは

ベストセラー「うつヌケ」作者が解説! うつから抜け出すための「朝」の習慣とは

「朝起きた瞬間に思うことは、その日一日の気分を決める」という実体験があったので、朝目覚めた瞬間、自分をほめることは、効くはずだと確信が持てました。皆さんもそうした経験があるかたは、少なくないのではないでしょうか。世の中のすべての現象は、その人の“気分”が見せるものだからです。【解説】田中圭一(漫画家)


解説者のプロフィール

田中圭一(たなか・けいいち)
漫画家。
1962年、大阪府生まれ。手塚治虫などの絵柄を取り入れたパロディを得意とする漫画家。京都精華大学マンガ学科ギャグマンガコース准教授。自身をはじめ、うつ脱出経験者に取材したドキュメンタリー漫画『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(KADOKAWA)が34万部を超えるベストセラーとなっている。

「あなたのうつは一生ものです」

「あなたのうつ病は一生ものです」
 私は医師にそう宣告され、目の前が真っ暗になりました。

 私は40歳を過ぎた頃から、原因不明のつらさや恐怖、不安に苛まれてきました。頭がボーッとして判断力や記憶力が落ち、本を開いても内容が入ってこず、脳が濁った寒天に包まれているかのよう。どんな音楽を聴いても、どんな映画や風景を見ても、なんの感動も湧かず、心身のすべてが灰色になったような感覚があったのです。

 当時はサラリーマンと漫画家という2つの仕事を抱え、365日働き詰めでした。ゲームのソフトウェアメーカーに営業職として転職した私は、畑違いの向いてない仕事にもかかわらず、結果を出そうと必死になり、転職早々、大きな成果を出すことに成功したのです。

 しかし、早晩限界はやってきて、やることなすことうまくいかなくなり、周囲からの風当たりも強くなりました。「手抜きしているの」「サボらないでよ」といった周囲の不満を毎日聞かされるうちに、自分はなにもできないダメな人間だ、会社のお荷物だと強い自己嫌悪に陥りました。自分がすっかり嫌いになり、ついにうつ病を発症するに至ったのです。

朝ベッドの中で自分をほめる

 以来10年近く、自殺もたびたび考えるほど、無間地獄のようなうつのトンネルをさまよい続けました。そして、うつのトンネルから脱出するきっかけになったのが、今回ご紹介する「目覚めのひと言」です。

 やり方は至って簡単です。朝目覚めた瞬間、ベッドから起き上がる前に、心の中で自分自身をほめる言葉を唱えるだけ。私は強い自己嫌悪に苛まれていたことから、
「私は、私が大好きだ」
と心の中で唱えるようにしました。

 すると、2週間過ぎた頃から気分がだんだんと上向いてきて、3週間経った頃には、気持ちが楽になり、明るくなってきたのです。

 15分ほどの自転車通勤の道中に、花が咲いていることにも気づけるようになりました。また、うつになってからは日常で笑うことなどなかったのに、テレビ番組を見て、声を出して笑うようになったのです。

 気持ちが明るくなってからは
「自分はだいじょうぶ、いける。自分はやれる」
といった言葉も、朝の目覚めにかけるようになりました。

 目覚めたばかりの意識がまだはっきり覚醒していないときに唱えた言葉は、私たちの潜在意識の中に、スーッと入ってきます。この「アファメーション」(肯定的自己暗示)という手法は、うつから脱け出した精神科医の著書(※)に書かれていました。私がこの手法を信じて、すんなり実践できたのも、営業マン時代の実体験があったからです。

 私は月末の売上締日の朝、「今月の売上はあと3000万円足りないから、今日1日で売り上げなきゃ」と思いながら起きることがありました。当然、その日は一日じゅう憂うつな気分。「朝起きた瞬間に思うことは、その日一日の気分を決める」という実体験があったので、朝目覚めた瞬間、自分をほめることは、効くはずだと確信が持てました。皆さんもそうした経験があるかたは、少なくないのではないでしょうか。世の中のすべての現象は、その人の“気分”が見せるものだからです。

 そうして、目覚めのひと言によって、10年来のうつから脱け出した私は、自分自身をほめることは心身の健康を保つために必要な行為だと捉えるようになりました。


※『じぶんの「うつ」を治した精神科医の方法』(宮島賢哉著/河出書房新社)

田中圭一さんの「目覚めたときに唱える言葉」

目覚めた瞬間、ベッドから起き上がる前に、自分をほめる言葉を唱える

苦しんだからほめ言葉が素直に言える

 中には「自分にはいいところがない」と捉える人もいます。実はそれは「私にはいいところがない」と自分で勝手に決めているだけ。本来、人間の価値は、誰にもはっきりとはわからないし、決められないものだと思うのです。

 しかし、少なくとも自分自身はコントロールが利くし、自分には価値があると認めていけます。私も自分をほめて、心と体の機能を正常に保てるようになると、気持ちが明るくなるので、自分を卑下したり、否定したりすることはなくなりました。

今でも気分が少し落ち込んだときには、目覚めのほめ言葉を唱えるほか、たまに人からほめられたときには、そのほめ言葉を100回くらい脳内で反芻するようにしています。

 また、うつを脱出してからは、自分だけでなく、周りの人のことをほめるようになりました。人のいいところを感じたときには「あなたのここがすごいよね!」と恥ずかしがらずに口に出すようにしたのです。うつを経験したからこそ、ほめ言葉がその人にとっての癒しや救いになると、わかるようになりました。

 現代人はインターネットやSNSの発達などにより、あらゆる情報が絶え間なく流れ込んできて、ストレスを抱えやすい状況にあるように思います。ぜひ、朝の目覚めのひと言で、気持ちを明るく保ってみてください。

この記事は『ゆほびか』2018年10月号に掲載されています
 

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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