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40代で始まっている!?認知症を起こす「脳の糖尿病」チェックリストと対策

40代で始まっている!?認知症を起こす「脳の糖尿病」チェックリストと対策

認知症というと高齢者の病気、と考える人も多いでしょう。近年、認知症は「脳の糖尿病」で生活習慣の改善で予防できることがわかりました。認知症は20~30代の頃の生活習慣、特に食習慣の結果でもあります。ですから早めに対処することが認知症予防には欠かせません。【解説】熊谷賴佳(脳神経外科専門医・認知症サポート医・京浜病院院長)


解説者のプロフィール

熊谷賴佳(くまがい・よりよし)
●京浜病院
東京都大田区大森南1-14-13
03-3741-6721
http://www.keihin-hospital.jp/

脳神経外科専門医・認知症サポート医。京浜病院院長。
1952年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、東京警察病院、都立荏原病院等を経て1992年より現職。脳神経外科医でありながら、慢性医療に専念し、認知症に特化した治療を行う。膨大な診療経験から、独自の認知症ケア方法を編み出す。著書に『認知症はなっても○、防げば◎』(マキノ出版)、『脳の専門医が教える脳が若返る40代からの食事術』(ダイヤモンド社)などがある。

認知症は40代ですでに始まっている

私は脳神経外科医として、20年以上前から認知症の治療に、積極的にかかわっています。認知症というと高齢者の病気で、「最近多少もの忘れがあるけれど、年齢のせいで認知症とは関係ない」と考える人も多いでしょう。

確かに、認知症の患者数が急増するのは75歳を過ぎてからです。しかし、高齢になって急に発症するのではなく、実は15~20年という長い潜伏期間があります。40代、50代の人が実感するもの忘れ、気力や判断力の衰えなどは、単なる老化現象ではなく、いずれ発症する「認知症の芽」である可能性が高いのです。

残念ながら、現代医学では認知症が完治する治療法はありません。ところが近年、認知症は「脳の糖尿病」で、生活習慣の改善で予防できることがわかりました。さらに、認知症は20~30代の頃の生活習慣、特に食習慣の結果でもあります。ですから、早めに対処することが、認知症予防には欠かせません。

認知症は若い頃にすでにスタートしている

食べ物から得る糖が脳の健康を左右する

一般的な糖尿病は、血液中の糖(ブドウ糖)が慢性的に多い状態になって、血糖値が高くなる病気です。血糖値を下げる唯一のホルモンである、インスリンの働きが弱くなって起こります。

原因は、食事や運動、ストレスなどの生活習慣で、7大生活習慣病の一つです。糖尿病で恐ろしいのは、合併症です。視力の低下や失明を招く糖尿病性網膜症、人工透析が必要になる糖尿病性腎症、手足の感覚が鈍くなる、糖尿病性神経障害などが挙げられます。

さらに、国内外のさまざまな研究で、認知症の原因となるアルツハイマー病の発症リスクは、糖尿病により高まると確認されました。それにより、認知症も糖尿病の合併症の一つという説が有力になっています。

実は体の糖尿病と同様、「脳の糖尿病」もまた、生活習慣が深く関係しているのです。とりわけ、食べ物から得る「糖」が脳の健康を左右します。

糖とは、正確にはブドウ糖のことで、ごはんなど炭水化物の糖質に含まれています。糖は脳が活動するための重要なエネルギー源なので、不足すると認知機能を担う脳の神経細胞が死滅してしまいます。

反対に、糖が過剰な状態で糖まみれになっても、神経細胞が破壊されます。つまり、糖は不足しても過剰になっても、認知機能に悪影響を及ぼすということです。

脳だけが糖尿病になっている可能性もある

「脳の糖尿病」チェックリスト




□食後、眠くなる
□甘い物が好きで、お菓子やジュースをついつい口にしてしまう
□メタボだ
□野菜不足だ
□糖質制限を厳格に続けている
□便秘がちだ
□血圧が高めだ
□物忘れが多くなった
□日中でもボーッとすることが多い


「脳の糖尿病」になっているかどうかは、健康診断で血糖値が高いと警告された人はもちろん、正常値だと判定された人も安心できません。なぜなら、糖尿病でなくても、「脳の糖尿病」になっていることもあるからです。上のチェックリストで一つでも当てはまれば、要注意です。

健康な人の血糖値は、空腹時は低く、食事をすると上がります。そして上がった血糖値はインスリンの働きによって、食後2時間もすると食前の空腹時の値に戻っていきます。これを糖代謝と呼びます。

ところが、認知症の患者さんの血糖値を測定したところ、異常な糖代謝のデータが出ました。食前の血糖値が正常よりやや高く、食後2時間以上経過してもやや高めを維持していたり、食後2時間の血糖値が空腹時より下がっていたりした人もいたのです。

食後に血糖値が下がるのは、糖尿病の治療薬の影響が考えられますが、測定した患者さん全員が糖尿病ではなかったのです。このデータを元に、私は認知症の人の脳では、インスリンが正常に働かなくなる「インスリン抵抗性」になると仮説を立てました。

この仮説を実証してくれたのは、2013年に発表された、九州大学生体防御医学研究所の中別府雄作教授の研究でした。アルツハイマー病患者88人の脳を解剖したところ、生前に糖尿病と診断されていなかったにもかかわらず、糖の取り込みを促すインスリンが作られなくなり、脳の機能が大幅に低下していることが判明したのです。

「脳の糖尿病」は自覚症状がないため、放置してしまい、気がついたら認知症になってしまうという恐ろしい結末が待ち受けています。「脳の糖尿病」が引き起こす病気は、認知症だけではありません。脳神経が破壊され、脳が萎縮することで起きる脳血管障害や脳梗塞、脳出血です。

さまざまなリスクを伴う「脳の糖尿病」を予防するためには、食生活を改善することが最短ルートです。

糖の取り込みを制御する関所が脳にある

健康に見える人でも、脳の中だけ糖尿病状態になってしまう「脳の糖尿病」は、どうして起こるのでしょうか?ここで少しだけ、脳のしくみを説明します。

脳には、有害物質の侵入を防ぐ関所のような「血液脳関門」という、独自の防御システムが備わっています。そのため、ここを通過できるのは、脳に必要な栄養だけということになります。

さらに、脳血管には血圧が上がったときや下がったときに、脳内への血液量を一定に保とうとする「血液量自動調節機能」も備わっています。そして、これらのしくみが壊れると、脳内に有害物質が入り込んだり、血管が傷んだりして脳の機能がダメージを受けるわけです。

私は糖についても、こうした「脳の関所」があり、糖を過不足なく取り込んで、脳内高血糖・低血糖を自動制御していると考えています。そして、この機能が壊れてしまうことで、脳内の糖が過剰になったり不足したりして、「脳の糖尿病」が引き起こされるのです。

脳内に糖が過剰になると、脳内高血糖になります。脳は、使いきれず余った糖を貯めておくことができません。すると、余った糖は脳のゴミと呼ばれる「アミロイドβ」に変換され、蓄積されてしまうと考えられます。

アミロイドβは、アルツハイマー病の原因の一つと言われ、脳の神経細胞を死滅させ、脳の萎縮を引き起こす物質。つまり高血糖になると、脳はしぼんでしまうのです。

一方で、脳内に糖を取り込めなくなり、糖が不足すると脳内低血糖になります。すると、神経細胞はエネルギーが不足して、脳は栄養失調状態になります。最終手段として、自分の脳を構成しているグリア細胞を破壊して、大切なアミノ酸をエネルギーとして使ってしまい、神経細胞も破綻します。

このように、脳内は高血糖でも低血糖でも、アルツハイマー病などの認知症を引き起こしてしまうと考えられます。

高血糖でも低血糖でも認知症のリスクが上がる

「脳の糖尿病」の原因は血糖値スパイク

「脳の糖尿病」を引き起こす最大の原因は、脳を疲弊させ、糖の制御機能を壊す「血糖値スパイク」です。 

血糖値スパイクとは、食前の血糖値が正常に近いのに、食後に血糖値が急上昇し、急激に上がった血糖値を下げるために、膵臓から大量のインスリンというホルモンが分泌され、その反動で急降下することをいいます。

高血糖でも、低血糖でも脳はダメージを受けて、認知症のリスクが高まることは先に述べた通りです。
さらに、血糖値スパイクが繰り返し起きていると動脈硬化が進行し、心臓の血管が詰まる心筋梗塞や、脳の血管が詰まる脳梗塞を引き起こすおそれがあります。

血糖値スパイクは、大量の糖を取ることで起こります。
ただし、極端に糖を制限した食事は、脳の神経細胞を健全に保てるのか疑問です。ごはんやパンなどの糖(糖質)は適度に取りつつ、いわゆる「白砂糖」を取り過ぎないようにすることが重要です。

私が、糖の過剰摂取の凶悪犯だとするのは、皆さんが普段なにげなく飲んでいる缶コーヒーや清涼飲料水、果物のジュース、スポーツドリンクなどの甘味飲料です。
甘い飲料には、容量の10%くらいの白砂糖が使われていることが多く、350㎖のペットボトルを飲みほすと、35ℊもの白砂糖を取ったことになり、これは角砂糖9個分に相当する量です。

砂糖はあっという間に吸収され、一気に血糖値を上げます。そして、インスリンが大量に出ると、今度は一気に血糖値が下がるのです。こうして高血糖と低血糖が繰り返され、脳の糖尿病になっていくのです。これからは、コーヒーであれば甘い缶入りよりもブラックを、清涼飲料水をやめてお茶や水をお勧めします。

スイーツを食べるなら食事の後がよい

血糖値の急上昇には、食べ方も大きくかかわります。同じ量の糖を取っても、短時間で取るほど血糖値の上昇スピードは早くなります。早食いはしないで、ゆっくり時間をかけて食べましょう。

また、同じメニューでも食べる順番を変えるだけで、血糖値の急上昇を防ぐことができます。野菜を最初に食べ、次にたんぱく質、最後に糖を含むごはんなどの主食という順番です。

スイーツは、デザートとして食後すぐのタイミングであれば、糖の吸収がゆるやかになります。ぜひ参考にしてください。

こうした糖の取り方が、脳を健康にしてくれますが、もう一つ「第二の脳」と呼ばれる、腸内環境と脳にも深い関係があります。これについては、次項で詳しく説明します。

ほとんどの認知症患者の腸内環境に問題がある

脳の若返りに、腸が関係する。
そう言うと、不思議に思う人も多いでしょう。人間は脳の指令によって動いているので、腸も脳に支配されていると思われがちです。

しかし実際は、腸は脳の指令なしで働くことができるため、「第二の脳」と呼ばれているのです。しかも、腸から脳へと情報が伝わっていることもわかっています。

腸の中に棲んでいる腸内細菌は1000種類以上、数百兆個。腸内細菌の遺伝子は、1000万以上も見つかっています。人間の遺伝子数は約2.5万くらいですから、その400倍もの数が腸内に存在し、私たちの健康に影響を及ぼしている可能性があるのです。

例えば、現代病といわれている、あらゆるアレルギー症状や自閉症も、腸内環境が関係しているという説があります。また、過敏性腸症候群という難病も、菌を殺す抗生物質を使い過ぎて、腸内環境が乱れたことが引き金になっていると指摘する専門家もいます。

腸内細菌のよいバランスは、善玉菌が2割、悪玉菌が1割、残り7割が日和見菌とされています。しかし加齢とともに善玉菌が減り、悪玉菌が増えていき、便秘を引き起こし、便臭を強くします。

便秘によって、腸に便が滞留していると腐敗が始まります。すると、有害物質が出て腸内細菌のバランスが乱れ、さらに腸の老化が進行するという悪循環に陥るのです。ですから便秘は腸が発する危険信号と捉え、いち早く対策を取ることがたいせつです。

高齢になると腸の機能も弱くなってくるため、便秘になる人が増えます。特に認知症の患者さんでは、ほとんどの人が便秘薬を飲んでいるほど、腸内環境が悪くなっています。

日本人の腸は海藻の消化吸収にすぐれている

一方で、便秘が改善すると、今まで寝ている時間のほうが長かった患者さんが、ベッドから起き上がる時間が増え、活動的になるなど、よいサイクルに入っていきます。

便秘と認知症の関係は、まだ明確になっていません。しかし最近では、悪玉菌を産出する毒素が、アルツハイマー病にかかわっているという報告があり、認知症の発症にも腸内細菌が深く関係していると考えられています。

このように、腸内細菌は腸内の健康ばかりか、脳の健康を考えるうえでも、大きなカギを握っているのです。

腸内環境を改善するためには、善玉菌のエサとなる食品を毎日、長期間食べることです。
私のお勧めは、昆布やヒジキ、ワカメ、モズク、ノリといった海藻類です。
海藻類には、善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維だけでなく、カルシウムや鉄分、亜鉛などのミネラル、ビタミン類が豊富に含まれています。しかも、低カロリーなので肥満も予防できます。

実は、欧米人や中国人と比べて、日本人には海藻類の消化吸収にすぐれた腸内細菌が多く棲んでいます。日本人独自の能力を活用しない手はないでしょう。

最後に、私が実践している「脳が若返る食事法」を紹介します。

炭水化物は朝食で食べるのがお勧め

まず私は、ごはんや麺類などの炭水化物を控えめにする、低糖質食を実践しています。その代わり、食物繊維やたんぱく質、ビタミン類を多く取るようにしています。

炭水化物を食べるのは、朝食のときです。ごはんやパン、麺類、いも類に含まれるでんぷんは、消化するのに15分~2時間程度の時間がかかります。それでいて、ブドウ糖に分解されると腸で吸収されて、すぐさまエネルギー源になるので、一日の活動が始まるタイミングで食べると、脳と全身にエネルギー源を供給することができます。

昼食は、一汁三菜の和定食が多いのですが、みそ汁には必ず、とろろ昆布を入れます。
みそは、大豆に含まれるレシチンが脳の働きをよくします。また、発酵食品なので腸内環境によい乳酸菌も取れます。そこに、とろろ昆布を加えることで、水溶性食物繊維と各種ミネラルが加わるのです。

夕食に欠かせないのは、海藻をたっぷり入れたサラダです。
サラダを食べたら次に汁物、肉や魚のおかずの順番です。ゆっくりよく噛んで食べるので満腹になり、ごはんは食べなくても物足りなさはありません。 

残業などして、食事が就寝直前になる場合は、豆腐や納豆、卵、鶏ササミ、マグロやカツオの刺身など、消化のよいたんぱく質を食べています。

食事を変えると脳は若返ります。皆さまも、ぜひ実践してください。

この記事は『ゆほびか』2018年10月号に掲載されています
 

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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