「頭熱足寒」を「頭寒足熱」にする!
私たちの体には、気という一種の生命エネルギーが流れていると、東洋医学では考えます。気がスムーズに流れていれば健康ですが、どこかで滞ると不調が現れ、病気になると考えられているのです。
多忙な現代人は、過度な緊張やストレス、頭の使いすぎで、気の流れが悪くなっている場合が多いようです。この場合、神経が高ぶって、頭部に気や血液が上ってしまっています。
これはまさに、頭熱足寒の状態といえるでしょう。健康の理想とされる頭寒足熱と、逆になっているわけです。
頭痛や肩こりも、この頭熱足寒が原因で起こります。その痛みやコリを和らげるために、患部の頭や肩をもんでも、簡単には症状はよくなりません。
そんなときに、東洋医学では「上の病気を下で治す」という考え方があります。特に、頭痛の予防や改善に効果を現すのが、アキレス腱をもむ方法です。アキレス腱の周辺には、昆侖、申脈、太谿、照海などの重要なツボが密集しているからです。
これら四つのツボは、腎経と膀胱経のツボで、ここを刺激することで、上った気を、下ろすことができます。それによって、上半身の症状を取るのに威力を発揮します。
【昆侖】昆侖は外くるぶしの後ろで、アキレス腱の前にあります。膀胱経のツボで、頭痛やめまいに効き、強い腰痛にも効果があります。
【申脈】申脈は外くるぶしの真下。膀胱経のツボで、やはり頭痛やめまい、腰痛に効くほか、不眠解消にも役立ちます。
【太谿】太谿は内くるぶしの後ろで、アキレス腱の前にあります。腎経のツボで、気を活性化し、腎臓機能を高め、免疫力を向上させます。
【照海】照海は内くるぶしの真下にあります。腎経のツボで、利尿作用や生理痛・生理不順の改善に効果を発揮します。
くるぶしの後ろや下にある、これらの四つのツボは、ツボが体表に近いので反応が出やすく、強い効果を発揮します。
アキレス腱もみのやり方

排便・排尿もスムーズになる
ツボは刺激の加え方によって、効果が変わります。ツボは小さな穴のようになっており、その部分にきちんと当たると、ズンと響くのがわかるはずです。その部分にきちんと刺激が入ることで、大きな効果が得られるのです。
したがって、理想的なのは、四つのツボをそれぞれ15秒ずつ押していく方法です。
ただし、それでは大変と感じる人は、アキレス腱を親指と人差し指でつまみ、くるぶしの後ろ側から下までを、30〜60秒ほどもみほぐすといいでしょう。こうすると、ツボが体表に上がってきやすくなり、四つのツボを効率よく刺激できます。
あまり強くもみすぎるとストレスになりますし、弱すぎては刺激が伝わりません。少し痛いけれど気持ちがいいくらいの力で、もんでください。
重要なポイントは、上から下に向かってツボを押し込むことです。上下に少し揺さぶりながら、かかとの骨に当てる感じです。すると、上っていた気が下がりやすくなります。頭痛に悩んでいる人は、のぼせが解消して、症状が軽快するでしょう。また、頭痛の予防にもなります。
ちなみに、四つのツボは膀胱経と腎経のツボで、水をつかさどっています。アキレス腱もみをやると水分代謝が上がって、排便、排尿がスムーズになります。特に腎経は、女性に多い、冷えのあるむくみの解消にも効果的です。
これらのツボを刺激して腎を強化すれば、体内の毒を排出する力が強くなり、アンチエイジングにも効果的です。
また、アキレス腱もみで、末端である足までの気や血の通りがよくなるので、腰痛や座骨神経痛も改善するでしょう。
不眠の改善にも有効です。不眠の大きな原因の一つは、神経が高ぶって頭に気が上ることがあります。気を下げれば神経が鎮まり、ぐっすりと眠れるようになってきます。
解説者のプロフィール

鳴海理恵
気血免疫療法会VE&BI治療院院長。
「自律神経免疫療法」を確立した医師・福田稔氏の長女であり、鍼灸・あん摩マッサージ指圧師、食事療法研究家。
東京・目白にあるVE&BI治療院にて、生活指導、鍼灸、マッサージ、気血免疫療法を組み合わせた治療を行う。著書に『効く!爪もみ』(河出書房新社)。
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