解説者のプロフィール

高橋徳(たかはし・とく)
●統合医療クリニック徳
名古屋市中区栄2-10-19 名古屋商工会議所ビル11階
052-221-8881
http://clinic-toku.com/
統合医療クリニック徳院長。アメリカ・ウィスコンシン医科大学教授。
医学博士。鍼灸師。アメリカで10年以上にわたりオキシトシンの研究を行い、論文を発表。2013年、郷里の岐阜県で統合医療クリニック「高橋医院」を開業。2016年、名古屋市内に分院「クリニック徳」を開業。著書に『8つのツボで30の病気を治す本』(マキノ出版)がある
副交感神経を優位にして自律神経の乱れを調節
複雑な現代社会に生きる私たちは、さまざまなストレスの影響を受け、自律神経の働きに乱れが生じています。
自律神経とは、私たちの意志とは無関係に働き、内臓や血管などをコントロールしている神経です。自律神経には、主に昼に優位となり、アクティブな活動を支える交感神経と、主に夜に優位となり、休息の神経ともいえる副交感神経の二つがあり、両者はふだん、バランスを取り合いながら働いています。
ところが、この強いストレスがかかり続けると、二つの神経のバランスがくずれ、交感神経優位の状態が長く続くことになります。この自律神経のバランスの乱れから、不眠をはじめとするさまざまな不定愁訴が起こってくるのです。
「なかなか寝つけない」「夜中に目が覚めて、眠れなくなる」など、不眠の悩みはさまざまですが、交感神経優位の状態が続いていると頭が覚醒し、興奮状態が続きます。
さて、慢性症状を抱えてやってきた患者さんたちを快方に向かわせるため、私のクリニックで用いているのが、「統合医療」と呼ばれる医療です。
統合医療とは、西洋医学と、補完代替医療を組み合わせた医療です。補完代替医療とは、現代医学以外のすべての療法を総称するもの。そこには、鍼灸や瞑想、ヨガ、気功などが含まれます。この代表的な手法として、私のクリニックでは、特にツボを刺激する鍼灸治療が一つの柱となっています。
多くのかたが悩まされている不眠についても、ツボ刺激を行うことで改善できる可能性があります。そこで、ここでは、不眠を解消するツボ刺激を紹介しましょう。
スイッチが切り替わる「風池」のツボ刺激のやり方
安らかに眠るには、交感神経優位の状態から、副交感神経優位の状態へ移行する必要があります。そのために役立つのが、風池というツボへの刺激です。
風池は、自律神経の乱れを調節するのに有効な特効ツボとされています。
まず、風池の位置を確認しましょう(下の図参照)。風池は、首の後ろの、髪の生え際にあります。首の太い筋肉の両外側のわずかに離れたくぼみで、押すと響くところです。
両手で側頭部を包むようにして、親指を風池に当てたら、頭頂部に向かって持ち上げるように、ゆっくりと力を入れます。「1、2、3」と数えながら、3秒キープ。これを4~5回くり返して、1セットとします。
ただ、刺激を行うときに、指に力を入れ過ぎてしまうと、かえって寝つきにくくなるおそれがあるので注意が必要です。風池への刺激は、寝る前に、1セット、できるだけリラックスして行うといいでしょう。
風池への刺激によって、交感神経優位の状態から副交感神経優位の状態へとスイッチが切り替わると、寝つきがよくなり、眠りも深くなります。
風池の探し方


首の後ろの、髪の生え際にある。首中央の太い筋肉の両外側のわずかに離れたくぼみで、押すと響くところ。
風池の押し方

両手で側頭部を包むようにして、親指を風池に当てる。頭頂部に向かって持ち上げるように、ゆっくりと力を入れる。「1、2、3」と数えながら、3秒キープする。これを4〜5回くり返して1セットとする。寝る前に1セット行う。
4秒で吸って8秒で吐く腹式呼吸もお勧め!
風池への刺激に加え、腹式呼吸も行うとさらに効果的です。やり方は、次のとおりです。
❶あおむけになり、ゆっくり鼻から息を吸いながら、おなかを膨らませる。
❷いったん息を止め、それから口からゆっくり息を吐く。
吸う、吐くの比率は、1対2。4秒で吸って、8秒で吐きます。何も考えずに、自分の息だけに集中しましょう。
不眠に悩む人は、睡眠導入剤などに頼る人が多いのですが、それでは根本的な解決につながりません。当座は眠ることができても、薬なしでは眠れなくなって根治から遠ざかります。
ツボへの刺激や腹式呼吸に副作用はありません。その点も安心して利用することができるはずです。ぜひお試しください。