解説者のプロフィール

山田朱織(やまだ・しゅおり)
●16号整形外科
相模原市中央区高根1-3-7
042-776-2211
http://r16-seikei.jp
●山田朱織枕研究所
https://makura.co.jp/
16号整形外科院長。医学博士。
山田朱織枕研究所代表取締役社長。マクラ・エバンジェリスト。枕と睡眠分野専門の整形外科医として、睡眠姿勢、枕、睡眠の基礎・臨床研究に取り組む。全国の整形外科医とは共同研究ネットワーク「睡眠姿勢研究会」を立ち上げ活動中。著書に『枕を変えると健康になる「手づくり枕」で頭痛、肩こり、不眠は治る』(あさ出版)などがある。
スムーズに寝返りを打てる高さを確保
私は、整形外科医として、枕と健康の関係について長年にわたり研究を続けてきました。起きているときの姿勢も重要ですが、私たちは、人生の4分の1を寝て過ごすのですから、睡眠中の姿勢は、非常に重要だと考えたのです。
特に私が着目したのが、「寝ているときの首の位置」でした。そもそも、頭の重さは4~6㎏もあるのです。そんな重い頭を支え続ける首は、睡眠中しか休めません。
寝ているときの首の緊張を緩め、首を休ませるために最も重要なのが、枕です。
しかし、体に合わない枕を使っていると、本来休まるはずの首が緊張してよく眠れません。また、十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、疲れが取れないということが起こりがちになります。
私が考える理想の枕の条件は、三つあります。
一つめは、枕の高さです。あおむけでも横向きでも、首が大きく曲がらない(直線に近い)状態を維持できる高さが必要です。首が大きく曲がらない適切な高さの枕で寝ていれば、自由に寝返りができます。これが重要なポイントです。
寝返りは、睡眠中に不可欠な生理現象です。寝返りを打たず、じっと動かずに寝ていると、全身の血流が停滞してしまいます。適度に寝返りが打てれば、血行がよくなります。
私たちは一晩に20~30回程度の寝返りを打つといわれています。きちんとした枕の高さを確保することで、スムーズに寝返りを打てるようになるのです。
二つめが、枕のかたさです。市販されている枕は、やわらか過ぎる物がほとんどです。中身が簡単に片寄るようでは、全くの論外。
また、一見かたそうに見える「低反発素材」の枕も、頭が沈み込むのであまりお勧めできません。夜寝ている間も、枕の高さが5㎜以上変動しないかたさが理想的です。
三つめが、調整のしやすさです。体形の変化に応じて、枕の形や高さを調整できるほうがいいのです。
高齢のかたは、加齢によって背中が丸くなるなど、体形が変化します。その変化に合わせて、枕の高さを調整する必要があるのです。
肩や首のコリ、イビキ、睡眠時の無呼吸も解消!
とはいえ、なかなか理想的な枕を見つけることは難しいものです。そこで私は、理想的な枕を自分で作る指導をしています。それが今回、ご紹介する「玄関マット枕」です。
玄関マットとタオルを使うと、医学的に見て最も理想的な睡眠姿勢が取れる枕を作ることができます(作り方は下にあります)。
実際に、この玄関マット枕を試すと、ふだんの枕よりもかなりかたく、頭が当たる面積も広く感じられるでしょう。この枕を使うときは、単に頭を乗せて寝るのではなく、首のつけ根と肩が、枕の角につくようにします。これによって、首の負担が大幅に減少し、筋肉の緊張を和らげることができます。
枕が合わず、寝ても首が緊張していると、肩や首のコリ、手や顔のしびれなどの症状が起こりやすくなります。
また、「熟睡できない」「夜中や早朝に目が覚める」「夜間に何度もトイレに起きる」「朝からだるい」「イビキがひどい」「睡眠時の無呼吸」など、さまざまな症状に悩まされるようになります。
こうした症状に悩んでいるかたは、ぜひ、玄関マット枕を試してください。不眠症状が改善できるだけでなく、首の緊張から生じるさまざまな不定愁訴の解消にも役立つでしょう。
さて、今年のように暑さが厳しいと、熟睡できずに深夜に起きてしまうものです。ただ、就寝中に暑さを感じるのは、途中で覚醒していることも大きな要因です。熟睡していれば、室温はそれほど気になりません。
自分に合った枕を使って熟睡できるようになれば、暑さも感じにくくなり、熟睡できるでしょう。
「玄関マット枕」の作り方

【用意する物】
⃝玄関マット(縦50cm×横80cm×厚み1.5cm以上の、かたい素材の物)、もしくは座布団(長年使用して、これ以上はつぶれないくらいのかたさになっているせんべい座布団)
⃝タオルケット(毛先が短くフワフワしていない物)
⃝バスタオル(微調整用)

❶玄関マットを3つ折りにして置き、その上にタオルケットを折りたたんで重ねる。

❷横向きに寝たとき、首から腰が直線になるよう、タオルケットを折って高さを調整する。
※横向きの姿勢は、肩を少し前に出し、枕は肩口ギリギリに当てる。

❸あおむけになったとき、のどや首すじに圧迫感がなく、後頭部から肩にかけて力が抜けている状態になるよう、高さを調整する(必要であればバスタオルを使う)。寝返りが左右にスムーズに打てるかどうか確認する。