解説者のプロフィール

佐藤達朗(さとう・たつろう)
●サトウ血管外科クリニック
京都市左京区法林寺門前町37番 アバンエスパス鴨川1F
075-762-1082
http://www.sato-vsc.com/
サトウ血管外科クリニック院長。
1986年、信州大学医学部を卒業。神戸大学、京都大学の心臓血管外科などを経て、2008年に京都でサトウ血管外科クリニックを開院。著書に『足の甲を巻けばむくみは治る!』(自由国民社)がある。
きつめにフィットするサポーターでもよい
足の冷えやむくみ、だるさに悩むかたは多いでしょう。皆さん、マッサージをしたり、足を温めたり、足全体を圧迫するようなサポーターをしたり、さまざまな対策を取っていると思います。
では、こうした足のむくみが、夜間頻尿の原因になっていることは、ご存じでしょうか。
夜間頻尿とは、就寝後、排尿のために1回以上起きなければならず、それが日常生活に支障を来している状態を指します。睡眠不足を招き、体調をくずす原因にもなります。
私は、足の冷えやむくみを訴えて来院される患者さんのうち、内臓疾患のないかたに、「足の甲巻き」を勧めています。足の甲に弾性包帯や、きつめにフィットするサポーターなどを巻くだけです。
まずは、なぜ、足のむくみや冷えが夜間頻尿の原因になるのかを説明しましょう。
私たちは、多くの時間を立ったり座ったりして過ごします。すると、血液は重力によって下半身にたまりがちになり、夕方には足がむくんでくるというわけです。
また、足の甲にある「抜け道血管」も、足の冷えやむくみ、夜間頻尿の原因となります。
抜け道血管というのは私がつけた呼称です。正式には「動静脈瘻」といい、解剖学の教科書にも記載されている実在の血管です。
通常、心臓から送り出された血液は、動脈を通って全身に運ばれ、網目状の毛細血管で酸素と栄養素を細胞に供給します。毛細血管は再び集合して静脈となります。つまり、動脈と静脈の間には、必ず毛細血管が存在するのです。
ところが、足先に、毛細血管を経由せず、足の甲にある静脈に直接つながる血管があります。それが、抜け道血管です。通常閉じていますが、なんらかの理由で開き、静脈に動脈血が流れ込んでしまうと考えられます。
本来なら、指先の毛細血管まで流れていくはずの動脈血が、抜け道血管を通って静脈に流れ込むと、足先は血流不足になって冷えてしまいます。
また足の甲の静脈では、動脈血が勢いよく流れ込んで圧力が高まるため、静脈内の血しょう(血液中の液体成分)が血管の外に染み出します。これがリンパ液となり、むくみの原因となるのです。
足首や足の指を動かすとより効果的
さて、尿は血液をもとに腎臓で作られます。血流が悪く、血液が足に滞っていると、腎臓に血液が届かず、尿が効率よく作られません。
この状態のまま就寝すると、どうなるでしょうか。
体を横たえると重力の影響がなくなり、血行がよくなります。その結果、腎臓への血流が増し、尿が多く作られて、夜間頻尿を引き起こすのです。
足の甲を、包帯などで巻いて圧迫し、抜け道血管をふさぐことで、足の血流が正常化します。冷えが解消するとともに、血液が心臓に戻りやすくなります。その結果、日中、腎臓が適切な量の尿を作って排出できるようになり、夜間頻尿が軽減するというわけです。
足に包帯などを巻いた状態で歩いたり、イスに腰かけて足首や足の指を動かしたりすると、なお効果的です。
足のむくみが取れていく過程で、一時的に頻尿になることがあるかもしれませんが、心配せずに続けてください。
足の甲の抜け道血管がふさがれると、動脈血が静脈に流れ込むことがなくなり、静脈内の圧力が正常化するので、足全体のむくみやだるさが改善します。患者さんのなかには、全身のむくみが取れた結果、体重が減った人もいます。
足の冷えやむくみがあり、夜間頻尿で睡眠を阻害されている人は、足の甲に包帯などを巻いてみてください。基本的に、入浴時以外は一日中巻いていてOKです。ただし、足にケガをしていたり、皮膚が損傷するほどむくみが進行していたりする人は、行わないでください。
足の甲巻きのやり方

包帯や、テーピング用のテープなどを使う。きつめにフィットするのであればサポーターで代用可。

【巻き方】
巻き始めの位置を、小指(第5趾)のつけ根に合わせ、足の甲をややきつめに巻く。約7cm幅になるよう、3~4重に巻いたらテープなどで留める。
★包帯は、巻くだけでくっつく自着性の弾性包帯が便利。薬局やドラッグストアで購入可。
★巻いた状態で歩いてみて、足や指先が痛むようなら締め過ぎなので少し緩める。
★入浴時以外は、就寝時を含め、一日中巻いていてOK。