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【最新研究】納豆から「糖尿病予防につながる2つの成分」を世界で初めて発見!

【最新研究】納豆から「糖尿病予防につながる2つの成分」を世界で初めて発見!

今回、納豆から2種類のDPP4阻害物質が発見されました。どちらも世界で初めて発見されたDPP4阻害物質です。これまでも納豆の健康効果はよく知られていましたが、納豆には血糖値の上昇を防ぎ、糖尿病予防につながる成分が含まれていることが最新研究で明らかになったのです。【解説】舘博(東京農業大学応用生物科学部醸造科学科教授)


解説者のプロフィール

舘博(たち・ひろし)
東京農業大学応用生物科学部醸造科学科教授。
1953年、京都府生まれ。77年、東京農業大学農学部醸造学科卒、同大学院農学研究科博士前期課程農芸化学専攻修了。同大副手、講師、助教授を経て、2002年教授に。受賞歴に、1997年度日本醸造協会技術賞、2010年度日本醤油技術賞など。「醤油博士」として知られている。著書に『しょうゆの絵本』(編著、農山漁村文化協会)、『図解でよくわかる発酵のきほん』(監修、誠文堂新光社)など。

血糖値の上昇を抑える物質に大注目!

2016年に厚生労働省が実施した国民健康・栄養調査によると、「糖尿病が強く疑われる者」は約1000万人。1997年以降、増加傾向にあり、「糖尿病の可能性を否定できない者」も約1000万人と推計されています。

中でも、日本人の糖尿病患者の95%を占めるのが「2型糖尿病」です。2型糖尿病は、肥満や運動不足などが原因で発症します。

肥満や運動不足で脂肪が増えると、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンが分泌されにくくなることがわかっています。

インスリンが不足するので血糖値は下がらず、ずっと高いままに。そのために糖尿病を発症するだけでなく、合併症として脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす危険もあります。

そこで注目されているのが、インスリンの分泌を改善する「DPP4阻害物質」です。
「DPP4」とは、働きが強くなりすぎるとインスリンの分泌を邪魔する酵素のことです。

肥満になると、このDPP4が、体内で多く作られるようになることがわかっています。そのせいでインスリンの分泌が妨害されて、血糖値が下がらなくなるのです。

ということは、DPP4の過剰な働きを抑えられれば、インスリンの分泌も改善でき、血糖値の上昇も抑えられることになります。

DPP4の過剰な働きを抑えるのが「DPP4阻害物質」です。DPP4阻害物質は近年、2型糖尿病の治療薬としても使われるようになりました。

肥満などで増える「DPP4」のせいで、インスリンが分泌されにくくなる。その結果、血糖値も下がりにくくなる

糖尿病を予防する成分が納豆に含まれていた

後ほど詳しくお話ししますが、これまでの研究結果から「たんぱく質が原料の発酵食品には、どうやらDPP4阻害物質が含まれているらしい」ということが推測されました。

そこで今回、私たちの研究グループは、いくつかの発酵食品から、DPP4阻害物質を探し、その働きを比べることにしたのです。

対象にした発酵食品は、米みそ、濃口しょうゆ、納豆の3つです。
米みそとしょうゆには、DPP4阻害物質が含まれているようでしたが、どちらも食塩の影響が強く、DPP4阻害物質やその働きを、正確に確かめるまでには至りませんでした。

その一方で、DPP4阻害物質が含まれていることが、はっきりと確認できたのが納豆です。

今回、納豆から、2種類のDPP4阻害物質が発見されました。どちらも世界で初めて発見されたDPP4阻害物質です。そして、その働きも食品成分としては比較的強いとわかりました。

これまでも納豆の健康効果はよく知られていましたが、納豆には血糖値の上昇を防ぎ、糖尿病予防につながる成分が含まれていることが、最新研究で明らかになったのです。

納豆から「糖尿病予防につながる成分」を世界で初めて発見!

しょうゆの研究から糖尿病の研究へ

もともと私はしょうゆの研究者で、「しょうゆのうまみ成分」を研究していました。それが、研究中に思わぬ新酵素の発見があり、今では糖尿病予防など、健康面での研究も行っています。
なぜ、私がしょうゆの研究から糖尿病予防の研究にまで飛躍するようになったのか、その経緯をお伝えしましょう。

1990年代前半、私は学生たちといっしょに毎日休みなく、しょうゆ麹菌の研究を続けていました。
しょうゆ麹菌は、しょうゆ造りの主役とも言える存在です。このしょうゆ麹菌が作り出す酵素に、しょうゆのうまみの秘密が隠されていると私たちは考えたのです。

そしてやっとの思いで、しょうゆのうまみのカギを握る酵素の正体を突き止めました。それが、しょうゆ麹菌が作り出す「DPP4」という酵素だったのです。

DPP4は、ヒトや哺乳類からは見つかっていましたが、菌からの発見は、私たちが世界初でした。
しかし、じつはDPP4は、世界では違う視点ですでに注目されていることがわかりました。
なんと、しょうゆのうまみに関わるDPP4は、糖尿病に大きく関係する酵素でもあったのです。

そこで私は、あることを思いつきました。DPP4はヒトの体内にもありますが、ヒトのDPP4を使って実験するのは、とてもお金がかかります。それなら、ヒトのDPP4としくみや働きの似ているしょうゆ麹菌のDPP4を使えば、もっと簡単に糖尿病予防の研究ができるのではないかと考えたのです。

また、糖尿病の薬としてDPP4阻害薬が使われ始めており、同様のしくみで血糖値の上昇を抑える物質を、しょうゆなどの発酵食品から発見できるかもしれないと夢が膨らみました。

そして今回、とうとう納豆がDPP4阻害物質を含んでおり、糖尿病予防に役立つのではないかと発表することができたのです。

もちろん納豆は医薬品ではありませんが、日々の摂取によって予防効果は期待できるのではないかと考えています。

この記事は『ゆほびか』2018年11月号に掲載されています
 

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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