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【夜間頻尿】原因は足のむくみ ふくらはぎをもんで動かせば改善できる

【夜間頻尿】原因は足のむくみ ふくらはぎをもんで動かせば改善できる

夜間頻尿の主な原因として考えられるのが多尿です。多尿は余分な水分がきちんと排出されずに、体内に多量に残っている状態です。日中に水分を過剰にとりすぎているのであれば、水分摂取を控えれば済みますが、足に水分がたまっている「むくみ」が原因となっているケースが多いのです【解説】重松宏(山王メディカルセンター血管外科統括部長)

解説者のプロフィール

重松 宏
 血管疾患に対する外科的治療のエキスパートで、経皮的血管形成術や大動脈瘤に対するステントグラフト治療、静脈瘤に対するレーザー治療などの低侵襲的血管内治療の先駆者でもある。「未病に勝る治療はない」と考え、心・血管健診の重要性を啓発している。

血液循環の悪化がむくみを招く!

 中高年に多い悩みの一つである、夜間頻尿。就寝中、トイレに行くために何度も起きることは、その人にとって大きなストレスとなります。睡眠不足や不眠症、慢性的な疲労につながることも少なくありません。

 この夜間頻尿の主な原因として考えられるのが、多尿です。尿の量が多いということは、余分な水分がきちんと排出されずに、体内に多量に残っている状態ということです。日中に水分を過剰にとりすぎている場合であれば、水分摂取を控えれば済むことですが、足に水分がたまっているケースもあります。いわゆる「むくみ」と呼ばれるものです。このむくみこそが、多くの場合、夜間頻尿を引き起こす元凶なのです。

 ではなぜ、水分は排出されずに足にたまり、むくんでしまうのでしょうか。その理由は、血液循環の悪化にあります。

 心臓から押し出された血液は、動脈を通じて全身に送られます。動脈には収縮作用があり、血液を体の隅々にまで送り出すことができます。しかし、心臓への帰り道である静脈には、そうした収縮作用はありません。そのかわり、呼吸と、筋肉のポンプ作用によって、血液を心臓へと送り戻すのです。

 呼吸をすると、胸とおなかにかかる圧が交互に上下して、静脈血の流れが促されます。さらに、筋肉が収縮することによって、筋肉内の静脈に圧がかかって、ポンプのように血液が心臓に押し戻されるのです。
 この筋肉のポンプ作用の際に、重要な役割を担うのが、ふくらはぎです。ふくらはぎには大きな筋肉があり、それを正常に収縮させることによって、遠い心臓まで、じゅうぶんに血液を送ることができるのです。

昼間のうちにふくらはぎを動かそう!

 重力により、下へ下へと向かうのは、血液だけではありません。体内の水分、つまり血管から外の細胞間に染み出た組織液も、同様に足にたまりがちです。このため、夕方になると足がむくんでくるのです。

 この組織液が、静脈血管の中にスムーズに戻れば、足のむくみは解消します。しかし、血液の循環が悪く、静脈内に血液がパンパンにたまっていると、組織液が血管内に戻る余地がありません。すると、夜まで足はむくんだままなのです。

 この状態のまま、就寝時に横になると、重力から解放された足の静脈血は、一気に心臓へと向かいます。血液の巡りがよくなったおかげで、ふくらはぎにたまっていた組織液も血管内へと戻り、むくみは解消されます。

 一方で、体内を循環する血液量はふえたので、体は余分な水分を尿として外に出そうとします。その結果、睡眠中に尿が何度も排泄されるのです。

 つまり、夜間頻尿の改善には、夜までに足のむくみを解消することが重要といえます。そのために有効なのが、昼間のうちにふくらはぎを積極的に動かす運動です。

 具体的には、ウォーキングや、かかとの上下運動です。1日につき、30分の歩行を2〜3セット行い、8000歩を目安に歩くことを心がけましょう。週に3日ほどでも、改善が期待できます。かかとの上下運動は、1日につき50回程度を目安に、かかとを上げ下げしてください。

 運動のほかに、ふくらはぎのマッサージも有効です。手でふくらはぎを、ギュッギュッと何度かもむようにしてください。
 ただ、足に静脈瘤があるかたや、常に足が重かったりだるかったりする人は注意が必要です。外見からはわからない「隠れ静脈血栓」が深部にあった場合、もむことで、血栓がより心臓に近くて太い静脈内に飛び出す可能性があるためです。

 血栓が血流に乗って移動すると、肺動脈をふさぐ肺塞栓症などを起こすおそれがあります。心配なかたは、ふくらはぎをマッサージする前に、一度医師に相談するといいでしょう。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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