解説者のプロフィール

佐藤孝彦(さとう・たかひこ)
●浦安駅前クリニック
千葉県浦安市北栄1-13-13
047-380-2222
http://www.urayasu.or.jp/
浦安駅前クリニック院長。
順天堂大学浦安病院内科の勤務を経て、現在の医院を開院。アロマを用いた診療など、代替医療も行う。
人工透析の患者が抱えるかゆみと痛み
当院は腎臓の専門病院ですが、人工透析(腎臓の代わりに機械が血液をろ過する治療方法)をしている患者さんに、手のひら押しを勧めることが多いです。
私は医師ではありますが、代替療法、つまり西洋医学以外の療法も重要だと考えています。医学生時代から、すぐれた代替療法を求めて海外を旅していたほどです。
普段、病院でもっともポピュラーな医療方法となっている西洋医学。その進歩はめざましく、多くの病気・症状が治せるようになりました。しかし、その一方で、西洋医学だけでは、どうしても治しきれない病気や症状があります。それを補うものが代替療法だと私は考えています。代替療法とは、鍼灸治療や漢方、手足の反射区を刺激するようなものを言います。
西洋医学ではカバーできないような一例を、私が専門とする人工透析の患者さんを例に紹介します。
たしかに、人工透析が確立されたことで、多くの人が命をつなげるようになりました。それはたいへん喜ばしいのですが、一方では、それをくり返すことで、体に原因不明のかゆみや四肢や皮膚の痛みなどが生じることもあります。
この症状の原因ははっきりとはわかりませんが、人工透析を行う人には老若男女問わず、よく現れるものです。
これに薬で対応しようとすると、腎臓病の患者さんは複数の症状を抱えているだけに、多くの薬が必要になります。薬は肝臓と腎臓で代謝されるため、人工透析を余儀なくされている体に、もっと大きな負担がかかってしまいますし、副作用も心配です。
そんなとき、少しでも患者さんの体に負担をかけずに症状をやわらげるのに「手のひら押し」が有効だと思っています。
二日酔いがすぐに消えた
私が、手のひら押しを知るきっかけになったのは、10年以上前に、ある代替療法の会合に出たことでした。恥ずかしながら、そのとき私は二日酔いぎみでした。私が雑談まじりにそのことを話すと、一緒に参加していた足利仁先生が、私の手にある肝臓の反射区を押してくれました。
「いてて!」と痛みに驚きましたが、足利先生が手を離した瞬間に、二日酔いによる頭痛や気だるさが消えてスッキリしたのです。「手のひらには、何かあるな」と、私はその体験で効果を確信しました。
それに、手のひらを押すことは、患者さんにも勧めやすいと思い、勉強を始めたのです。以来、自分の疲れ目や腰痛のケアに役立てるとともに、患者さんがさきほど挙げたような不快症状を訴えたときには、手のひら押しを紹介しています。患者さんからは、「簡単で効果がすぐ出てくる」と好評です。
私が直接的に勧めるのは腎臓病などで受診される患者さんになりますが、もちろんそれ以外の皆さんにも、手のひら押しを、ぜひ広く活用していただきたいと思っています。

手のひら押しの効果に佐藤先生も驚いた
「手のひら押し」は病気予防に有効
体調が悪いとき、それに対応する手の反射区を押せば、緩和するのに役立ちます。
さらによいのが、手のひら押しは「予防」にも役立つということです。あらかじめ、自分のウイークポイントや、過去にくり返している症状に対応する反射区を押しておけば、症状を起こりにくくしたり、起こっても軽く抑えたりできるのです。
このことは、病気の「一次予防」に役立ちます。
一次予防とは、たとえばカゼをひかないように、手洗いを励行したり、十分な睡眠を取ったりすることです。手洗いと同じように、手のひらを押すことを習慣にすれば、さまざまな病気の一次予防として役立つでしょう。
もちろん、重い病気や症状の場合は、医療機関にかかりながら、手のひらを押しましょう。