食物が順調に腸へ流れるのを助けるツボ
「西洋医学だけでは、うまく対応できない病気が数々ある」
そう感じた私は、1977年に開業した当初から、東洋医学に関心を抱いてきました。
例えば、肩こりなど、西洋医学ではうまく対処できない症状に対して、東洋医学を用いると、その症状を解消できるケースがしばしばあります。
私は、東洋医学の勉強と研究を続け、西洋医学と東洋医学を併用して、多くの患者さんの治療を行ってきました。
さて、胃痛、胃弱、胃炎、胃のもたれといった胃の症状は、東洋医学的には、どう考えられているのでしょうか。
東洋医学における胃の諸症状の原因は、「通じない」ところが起こることと考えられます。胃の働きは、食道を通って入ってきた食物を、いったん胃の中に収納して消化し、食物をドロドロにして、それを腸へと送り込むことです。
もしも、胃が食物を順調に受けつけないと、食欲不振、消化不良、胃もたれ、胃のつかえが起こってきます。食物が順調に下へ流れていくのが正常ですが、これが滞り、逆流すると、おう吐、しゃっくり、胃痛などが起こります。
こうした胃の諸症状を改善するには、食物を受け入れ、消化し、腸へ送る胃の機能をスムーズにさせる必要があります。そこで、そのために役立つ手足の特効ツボを紹介しましょう。
一つが、手首の内関というツボです。内関は、手首の手のひら側にある最も太い横ジワの中央から、ひじのほうへ指の横幅2本分のところにあります。
もう一つが、足の三里というツボです。足の三里は、ひざのお皿の骨の下にある、むこうずねの骨の出っ張りから指の横幅3本分下がり、そこから指の横幅1本分だけ足の小指側にあります。
この二つの特効ツボを押しもみします。押しもみは、力の入れやすい指で行ってください。親指、人差し指、中指など、好きな指先で行いましょう。
胃弱、胃炎、胃もたれなどの胃の症状で悩んでいる人は、内関と足の三里の周囲を押してみると、圧痛を感じたり、ツボの辺りがかたくなっていたりします。そのかたさをほぐすつもりで、押しもみしましょう。
押す強さは、心地よい強さです。回数に決まりはありません。押しもみしているうちに、ツボの辺りが赤くなってきたらストップしましょう。
刺激はいつ行ってもかまいません。例えば、朝晩と決めて、押しもみしてもいいでしょう。テレビを見ながら、ひざを立ててツボ刺激をしても効果的です。両手でひざを抱えるようにして、足の三里に指先を引っかけ、手前に引っ張るように刺激するといいでしょう。
手足の特効ツボのもみ方

頭をヘアブラシでたたくのもお勧め!
ところで、胃は精神的なストレスを感じやすい臓器です。ストレス過多で、胃の不調を感じている人にお勧めしたいのが、頭のてっぺんにある百会というツボを刺激する方法です。
刺激にはヘアブラシを使います。ヘアブラシで、頭のてっぺんを、気持ちがよいと感じる程度の強さで、20〜30回たたきましょう。
では、ツボの治療で胃の症状を改善した事例をご紹介しましょう。
47歳の男性の例です。この男性は、みずおちの辺りに異常を感じていました。そこで、胃の内視鏡検査や血液検査などを行いましたが、さしたる異常は見つかりませんでした。
慢性胃炎だろうと診断し、胃腸薬を処方しましたが、全く症状が改善しません。食事をすると、胃がチクチク痛くなるということで、「食べるのが怖い」とも訴えていました。
そこで、内関、足の三里、百会のツボに鍼治療を行いました。すると、約1ヵ月で胃炎が解消したのです。この男性は、西洋医学がうまく対応できない胃の症状に、ツボ治療が効果を発揮した事例と考えられます。
胃の症状でお悩みの人は、今回ご紹介した手足の特効ツボ刺激をぜひ試してみてください。