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視力低下の原因は“首”! 「視力アップ体操」で首、あごが強くなると改善できる

視力低下の原因は“首”! 「視力アップ体操」で首、あごが強くなると改善できる

眼球は表にむき出しになった器官です。その裏側の見えない部分は首の後ろの筋肉とつながっています。目のピントを合わせるには、毛様体筋だけでなく、それにつながる首の筋肉が十分動く必要があるのです。さらに首の筋肉は肩や背中に、背中の筋肉も股関節や足の筋肉など、下半身とも連動しているのです。【解説】山本卓弥(視力回復研究所代表)

解説者のプロフィール

山本卓弥(やまもと・たくや)
●視力回復研究所
東京都八王子市明神町4-7-2 内藤落合ビル4F
0120-60-4976
http://www.eye-kenkyujo.com/

視力回復研究所代表。八王子で視力回復トレーニングを20年指導する中で、ピント調節機能における首、肩、背中の筋肉の重要性に気づき、「僧帽筋を伸ばしすぎない」姿勢を維持するための独自の体操を考案。日常生活での姿勢の指導と合わせ、成果を上げている。

視力を回復させる鍵は「首」!

「右0.3、左0.4の視力が右1.5、左1.2に(小学4年男児)」 「右0.05、左0.06の視力が右0.2、左0.1に(40代男性)」

当研究所では、このような視力回復例が多数あります。約20年間、視力回復トレーニングを指導し、こうした成果を上げてきました。

意外に思われるかもしれませんが、私は目を使う一般的な視力トレーニングは、ほとんど行いません。指導しているのは、全身の体操です。トレーニングを受けに来たかたがたに、「えっ、これが目に関係あるのですか?」と、よく驚かれます。

私が、こういう体操を指導する理由は、視力が下がる原因は「首」にあることを突き止めたからです。

もう少し詳しく説明しますと、慢性的に首が前に出た姿勢になることが、視力低下の大きな原因になっています。年齢を問わず、現代人の多くが、こういう姿勢になっているため、全年齢層で視力の低下が起こっています。

私が指導しているのは、その首を本来あるべき位置に戻すための体操です。体操で、首を正しい位置に戻し、その状態を維持するためには、下半身の筋力とバランス力も不可欠です。

なぜなら、腰、骨盤は、首と背骨によってつながり、下から重い頭を支え続ける土台となっているからです。その腰、骨盤も、さらに下にある太ももや足の裏の筋肉で支えられています。そのため、首だけでなく、全身を使う体操を指導して視力を回復しています。

私が「視力と首」の関係に気づいたのは、当研究所を開いてしばらくたったころです。たまたま知人の整形外科医から、「ムチ打ち症の後遺症に悩む人は、視力が低下する確率が高く、回復も難しい」と聞いたことがきっかけでした。

当時の私は、眼球を動かしたりする、一般的な視力回復トレーニングを行っていました。それでも一定の成果を上げていたものの、思うように回復しない人もいました。そういう人たちは、決まって姿勢が悪く、たいてい首が前に出ていたのです。

そのことと前述の整形外科医の話を考え合わせたとき、視力が低下する原因、言い換えるならば、視力を回復させるカギは「首にあるのではないか」と思い当たったのです。

スマホ、携帯ゲームが首を弱らせ視力を下げる

では、なぜ首と目が関係するのかを説明します。

そもそも眼球は、表にむき出しになった器官です。そして、その裏側の見えない部分は、首の後ろの筋肉とつながっています。

眼球内には、レンズの役目をする「水晶体」があり、その厚みが変わることで、目のピントが合うしくみになっています。

水晶体の厚みを調整して目のピントを合わせているのは、目の中にある「毛様体筋」という小さな筋肉です。

目だけを使う視力トレーニングは、この毛様体筋の動きをよくするのが目的です。しかし、それだけでは、視力を十分に上げることはできません。

たとえば、手の指を曲げ伸ばしするには、指の筋肉だけでなく、遠くにあるひじの筋肉から動いています。それと同じで、目のピントを合わせるには、毛様体筋だけでなく、それにつながる首の筋肉が十分動く必要があるのです。

■遠くを見るとき

■近くを見るとき

グーパーのどちらの動きにも手先だけでなく腕に力が入るように、ピント合わせでは毛様体筋と僧帽筋が連係して働く必要がある。

さらに言えば、首の筋肉は肩や背中の筋肉とも連動しています。そして背中の筋肉も、股関節や足の筋肉など、下半身とも連動しているのです。

そんな視力にかかわる全身の筋肉のなかで、特に大切なのが、首から肩、背中に拡がっている「僧帽筋」です。

僧帽筋と毛様体筋は、後頭部付近で連係しています。そのため、僧帽筋がある程度以上の力としなやかさをもっていて、よく動く人は、高い視力を保て、視力が落ちても、回復しやすいです。

ところが、多くの現代人は、僧帽筋がこわばり、動きが悪くなっています。その大きな原因が、先ほどふれた「慢性的に首が前に出た姿勢」なのです。

後ろ首、肩、背中に広がる僧帽筋。頭や腕の重さで首や肩が落ちると、僧帽筋が伸びて筋力が発揮できなくなってしまう。

私たち人間は、直立歩行を始めたときから、首の上に頭を乗せています。頭の重さは、体重の1割程度とされ、成人で約5〜8kgあります。これだけの重さがあっても、背骨の形が正常で、土台である骨盤にしっかり体重が乗っていれば、体に負担はさほどかかりません。

しかし、人間の頭蓋骨は、もともと前傾しやすい形です。仮に、頭蓋骨にあごがなければ、顔全体はほぼ球形となるため、背骨にバランスよく乗って支えやすい形状ですが、前面下側にあごがあるため、どうしても前傾しやすいのです(下図参照)。

そのうえ、現代人は、デスクワーク、スマホ操作、携帯ゲームなど、前かがみになる日常動作がとても多いです。そのため、よりいっそう首が前に出た姿勢が固定されやすいのです。

そんな中、首の後ろから重い頭を引っ張り、支え続けている僧帽筋。放っておけば、前述した頭蓋骨の形状と生活の影響から、首は頭の重みに負けて、僧帽筋が弱っていきます。こうして、視力が下がるのです。

しかし、そのことに気づいて対処すれば、何をしても回復しなかった視力が、上がる例は非常に多いです。近視・老眼・乱視・遠視など、さまざまな原因による視力低下が、当研究所で指導する体操によって回復しています。視力の左右差も、悪い側がよい側に近づいて改善されていきます。

人間の顔はあごが前下に突き出ている。そのため、頭部が重力の影響を大きく受けて、首が前傾しやすくなる

落ちたあごを引き上げると僧帽筋を強化できる

そのために、手軽にできて効果的なのが、「あご上げ」と「肩甲骨寄せ」という体操です。

どちらも簡単にできる体操ですが、僧帽筋を強くしなやかにして、視力を回復させるのに大きな力を発揮します(やり方は下記で紹介)。

僧帽筋が弱って首が前に出ると、あごは重力の影響を受けやすくなって、垂れ下がります。あごが落ちると、僧帽筋への過剰な負担が減らないので、強くしようにも難しいです。

そのため、まずは落ちたあごの位置を正すために、「あご上げ」が重要になります。ポイントは、口をしっかり閉じて上下の歯を軽く合わせ、首の皮がピンとはるようにしっかりとあごを上に上げることです。そうすることで、落ちたあごが引き上がり、首の位置も正されます。

ちなみに、あごが落ちている人は、口が半開きになっていたり、それが原因で口呼吸になっていることもあります。心当たりがある人は、意識して「あご上げ」を行い、口呼吸から鼻呼吸に改善しましょう。

「肩甲骨寄せ」は、硬くなった僧帽筋をほぐして動きをよくする体操です。「あご上げ」とともに行うことで、高い視力回復効果が期待できます。

いずれも、動かすのは上半身だけですが、続けることで、「頭が首に乗り、首が背骨に乗り、背骨が骨盤に乗り…」という具合で、体の各部が連動して全身の姿勢が正されます。

何歳からでも効果はあります。視力の回復を諦める前に、ぜひお試しください。

「視力アップ体操」のやり方

■体操① あご上げ
「1日3回ほど毎日行う」

肩で土台を作る
イスに腰掛けて、両手をひざの上に置く。肩甲骨を中央に引き寄せ、肩を上げる。肩と肩甲骨で首が乗る土台を作るイメージ。

あごを上に引っ張り上げる
肩と肩甲骨周辺の筋肉に、後頭部を乗せるようにしてゆっくりと顔を上げて維持。口を閉じて、上と下の歯が軽く合うようにするのがコツ。最初は10秒から始めて、3分を目標に少しずつ時間を延ばす。

❷を横から見たところ

■体操② 肩甲骨寄せ
「1日3セットほど毎日行う」

左手を右手で握る
イスに腰掛けて、左手の手首を右手の親指と人さし指で軽く握る。

ひじとひじを寄せる
肩甲骨が中央に寄るイメージで、両ひじを近づける。

あごを上げる
②の姿勢をできるだけ維持しながら、ゆっくりとあごを上げて3秒キープしたらあごを下ろす。手を左右持ち替えて、同じくあごを上げる。これを交互に5回ずつ行って1セット。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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