「よくかむ=奥歯を使う」は間違い!ティッシュ1枚でできる【かみ合わせトレーニング】

「よくかむ=奥歯を使う」は間違い!ティッシュ1枚でできる【かみ合わせトレーニング】

腰痛をはじめ、頭痛や肩こり、耳鳴り、めまい、手のしびれなど、全身のさまざまな不調は、実はかみ合わせが原因である場合が少なくありません。 そこで、咬合関連症からくる不調を軽減させ、かみ合わせを改善できるトレーニング「ティッシュかみ」をご紹介します。【解説】長坂 斉(長坂歯科院長)


肩こりや耳鳴りも引き起こす

 腰痛をはじめ、頭痛や肩こり、耳鳴り、めまい、手のしびれなど、全身のさまざまな不調は、実はかみ合わせが原因である場合が少なくありません。

 長年、偏ったかみ方を続けていると、常にかむ歯がすり減り、前後・左右で歯の高さに差が生じます。すると、その差に応じて、頭の位置が傾きます。

 頭が傾けば、バランスを取るために、首や肩の筋肉が異常に緊張します。この状態が長く続けば、背中や腰、ひざなどの骨もゆがみ、全身の不調を招くと考えられるのです。

 さらに、物をかむさいに使う咀嚼関連筋肉は、左右バランスよく使うことで、頭部の血流を円滑に保つしくみになっています。ですから、偏った使い方が習慣化すると、目や耳、鼻、脳などにも不調が起こりやすくなるのです。

 このようなかみ合わせが原因で起こる不調を、「咬合関連症」といいます。整形外科などで治療を続けても、いっこうに改善しない腰痛は、もしかしたら咬合関連症かもしれません。
 かみ合わせの状態は、聴力検査で調べることができます。

 私がかみ合わせと聴力の関係に気付いたのは、30年ほど前、ある高齢の患者さんの治療がきっかけでした。
 その患者さんは、顎関節症と併せて、腰痛や肩こり、耳鳴り、難聴など、全身の症状を訴えていました。それが、歯科治療によって、前後左右バランスよくかめるようになると改善したのです。このとき、聴力も回復しました。

 その後、東北大学や東京歯科大学との共同研究で、さまざまなことがわかってきました。現在は、その人の左右の聴力を調べることで、どの歯をよく使っているのか・いないのかを、おおよそ判定できるまでになっています。
 腰痛の場合は、片かみのクセがある人、奥歯でかめない人が多いようです。

 日本人は、右手で持ったはしで食べ物を口に入れるため、左側の歯でかみがちです。この左側の片かみが習慣化すると、左側の歯がすり減り、頭が左へ傾きます。すると、傾いた頭を支えるために、右側の首や肩の筋肉が異常に緊張します。
 この状態が長く続くと、上体のバランスを取るために、腰の左側に負担がかかります。腰の左右どちらか一方が強く痛むという人は、片かみのクセがついているのかもしれません。

 腰痛は、奥歯を抜いたままにしている人にもよく見られます。
 若い人は、よくかむ=奥歯を使う、と考える人が多いようです。このような人は、40歳くらいになると奥歯がすり減り、頭の重心が後ろへ傾きます。これが原因で、首の痛みや四十肩が生じることもあります。

 さらに、奥歯でのかみグセは、奥歯への荷重負担となり、奥歯周辺に炎症や歯周病が生じやすくなります。
 奥歯に炎症などが生じると、今度は奥歯でかめなくなります。すると、歯の前側がすり減るため、頭の重心が前へ傾きます。その結果、上体のバランスを取ろうとして、腰に負担がかかるのです。

 50歳以降でギックリ腰を起こしたり、腰痛がひどくなったりした人、首や肩にも不調があるという人は、奥歯を使えていないのかもしれません。

その場で腰の痛みが軽減する例も多い

 腰痛をはじめとする咬合関連症の予防・改善のためには、前後左右の歯をまんべんなく使う習慣を付ける必要があります。

 当院では、かみ合わせ治療と合わせて、自宅でのティッシュかみを患者さんに勧めています。軽い咬合関連症であれば、このトレーニングだけでも改善するでしょう。

 トレーニングは、朝、起床してすぐと、毎食後の1日4回行ってください。やり過ぎは、かえって歯に負担をかけます。食事は前後・左右の歯をまんべんなく使うように意識しましょう。併せてムシ歯や歯周病、かみ合わせの治療を行うと、効果はより出やすいはずです。

 トレーニングを行うと、首や肩、腰の筋肉の緊張が取れるため、その場で腰の痛みが軽減する場合も少なくありません。

 現在94歳のある女性は、5年ほど前に「口が開かない」と訴えて来院されました。
 彼女はひどい腰痛で、このときは車イスを使用していました。ひどい頭痛や肩こりもあったのです。残った歯と合わせて、口全体を使えるよい入れ歯を作ったところ、入れ歯を入れたその場で、腰の痛みが消えました。そしてこの日は、自分で歩いて帰宅したのです。頭痛や肩こりも改善しました。

 4年後、彼女はその入れ歯を紛失してしまいました。すると腰痛が再発し、歩行時に杖を使用するようになったのです。当院で再度入れ歯を作ったところ、腰痛は消え、杖を使わずに済むようになったそうです。

 長年腰痛で悩んでいる人は、一度、かみ合わせを見直してみてはいかがでしょうか。

長坂 斉
長坂歯科院長・日本全身咬合学会指導医・認定医・聴力部会運営委員。「かみ合わせと全身の健康」をテーマに活動する。著著に『歯のかみ合わせ力』(アートダイジェスト)。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


【歯科医解説】唾液を出すポイントの刺激で血糖値も正常になった「耳の下もみ」のやり方

【歯科医解説】唾液を出すポイントの刺激で血糖値も正常になった「耳の下もみ」のやり方

耳下腺への刺激は、唾液の分泌だけでなく、ストレスを除去する働きもあります。副交感神経が優位になり、自律神経のバランスが整うことで、血圧や血糖値の降下、耳鳴りやめまいの緩和、うつ病や不眠など精神疾患の改善が期待できるでしょう。【解説】齋藤道雄(齋藤ファミリーデンタル院長・医学博士)


認知症が改善!むずむず脚の症状も即消失する「指の二点押し」のやり方

認知症が改善!むずむず脚の症状も即消失する「指の二点押し」のやり方

腕の内側の生体の流れは指先に向かっていますから、指先に向かって押すと、滞っていた生体の流れがよくなるのです。この指の2点押しを行うと、脳の末梢の血流がよくなるので、頭痛の改善や、認知症の予防に役立ちます。【解説】金三雄(ゆうあい内科・脳神経クリニック理事長)


【自律神経を整える】ストレス解消、睡眠の質が上がった!医師絶賛の「うつぶせユラユラ」とは

【自律神経を整える】ストレス解消、睡眠の質が上がった!医師絶賛の「うつぶせユラユラ」とは

うつぶせユラユラは、自律神経のバランスを調節する働きがありますが、特に副交感神経を優位にさせる力が大きいのでしょう。うつぶせユラユラを行っているかたに話を聞くと、「心も体もリラックスする」「寝る前に実行すると、スーッと入眠できる」という声が多いそうです。【解説】小林理(長野赤十字病院呼吸器外科部長 )


【医師解説】円形脱毛症の原因はストレスと血流低下 対策は「爪もみ」が有効

【医師解説】円形脱毛症の原因はストレスと血流低下 対策は「爪もみ」が有効

爪もみは、交感神経の緊張を改善し、頭皮の血流を向上させるので、円形脱毛症に有効です。さらに、指先の血流もアップするので、髪と同じ組織である爪の状態も改善します。【解説】永野剛造(永野医院院長)


【片頭痛、顎関節症が改善】医師が勧める「指の2点押し」のやり方

【片頭痛、顎関節症が改善】医師が勧める「指の2点押し」のやり方

どこに行っても治らない、原因不明の痛みやしびれに悩まされている患者さんが当院にはおおぜい来られます。そういう患者さんに私が行うのが「遠絡療法」という治療法です。頭痛や顔の痛み、足の裏の痛みやしびれなどが即座に改善したと、患者さんにも大変好評なのです。【解説】小泉正弘(小泉医院遠絡医療センター院長)


最新の投稿


こむら返りは【病気のサイン】脳梗塞や糖尿病の前兆かも マグネシウム食品で治せる

こむら返りは【病気のサイン】脳梗塞や糖尿病の前兆かも マグネシウム食品で治せる

こむら返りは、2〜3秒から数分間、ふくらはぎの筋肉が収縮して起こります。運動中に起こることもあれば、就寝中に起こることもあり、時に激烈な痛みを伴います。まず、どうしてこむら返りが起こるのでしょうか。その原因は、実は7〜8割以上はマグネシウム不足です。【解説】横田邦信(東京慈恵会医科大学教授)


【医師解説】慢性便秘や下痢が改善!善玉菌を増やすイチオシ発酵食品は「生甘酒」

【医師解説】慢性便秘や下痢が改善!善玉菌を増やすイチオシ発酵食品は「生甘酒」

慢性的な便秘や下痢の原因は悪玉菌によるものです。腸内に最も多く棲息するのが日和見菌(食べる物や体調によって善玉にも悪玉にもなるどっちつかずの菌)です。日和見菌をいかに善玉菌にしていくかが重要で、これには、日本人が昔からとっていた発酵食品が役立ちます。お勧めしたいのが「生甘酒」です。【解説】桑島靖子(桑島内科医院副院長)


【なぜ猫に癒されるのか】猫と暮らせば心筋梗塞の死亡率が下がる!脳が活性化すると実験で判明

【なぜ猫に癒されるのか】猫と暮らせば心筋梗塞の死亡率が下がる!脳が活性化すると実験で判明

ヒトは、猫と触れ合うと、脳に大きな変化が現れます。猫と暮らすことは、かわいがることで癒し効果が得られるのと同時に、さまざまな作業が必要となります。食事や飲み水の用意をするなど、こうした一連の作業はすべて、脳をよく使うことにつながります。【解説】内山秀彦(東京農業大学農学部バイオセラピー学科動物介在療法学研究室准教授)


【糖尿病予防・改善】糖質制限レストランを開いた薬剤師が指南!お勧めの食べ物はチーズ

【糖尿病予防・改善】糖質制限レストランを開いた薬剤師が指南!お勧めの食べ物はチーズ

糖質制限でやせた経験を生かして、糖質オフ専門のレストランをオープンしました。糖質制限をしながら、おいしく食べられる料理をご提供しています。さて、糖尿病の予防・改善のため、あるいはダイエットのため、これから糖質制限を始めたいというかたにいくつかアドバイスをします。【解説】粂康晴(薬剤師・レストラン「カーボオフ」オーナー)


【Dr.ナグモ】60歳医師自らの肉体改造を大公開!奇跡の「家トレ」4選

【Dr.ナグモ】60歳医師自らの肉体改造を大公開!奇跡の「家トレ」4選

私が目指したのは、元サッカー選手の中田英寿さんのような「細マッチョ」。今回ご紹介する「家トレ」は、余分な体脂肪を落とし必要な筋力を維持するためのトレーニングです。高齢者はもちろんのこと、ひざや腰が悪い人こそ積極的に行ってください。【解説】南雲吉則(ナグモクリニック総院長)


ランキング


>>総合人気ランキング