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【医師解説】便秘はIQもEQも低くする?6万人の大腸を見てわかったこと

【医師解説】便秘はIQもEQも低くする?6万人の大腸を見てわかったこと

健康な大腸の持ち主は、肌や髪など外見も色つやがよく、実際の年齢より若々しい印象を与えます。ところが、腸壁に炎症が起こると、実際の年齢より老けた外見をして、加齢臭や口臭を発していることが多いものです。【解説】村田博司(赤坂胃腸クリニック院長)

大腸の色・形・長さは人によって千差万別

 私は、これまでに6万人以上の大腸を内視鏡で診てきました。
 多くの大腸を診てわかったのは、顔と同様に、大腸にも人それぞれの特徴があり、大腸粘膜の健康度がその人の外見と比例するということです。
 健康な大腸の粘膜は、通常、ピンク色がかった肌色をしており、血管がうっすらと透けて見えています。
 健康な大腸の持ち主は、肌や髪など外見も色つやがよく、実際の年齢より若々しい印象を与えます。
 ところが、腸壁に炎症が起こると、粘膜の色が濁ってしまい、血管が見えなくなります。また、大腸の血流が悪い場合は、粘膜の赤みがなくなり、白っぽくなります。
 このような大腸の人は、実際の年齢より老けた外見をして、加齢臭や口臭を発していることが多いものです。
 また、長さにも個人差があります。日本人の大腸の平均的な長さは、1・5mより少し長い程度ですが、なかには、2m近い人もいます。
 そもそも、大腸の形状は人種によっても異なります。欧米人の大腸は平均1・2mで、日本人は欧米人に比べて長い大腸を持っています。また、欧米人の大腸は太く、腸壁が硬いのに対し、日本人の大腸は細く、弾力性に富んでいます。
 私は欧米人の大腸も、日本人の大腸も、数多く内視鏡で診てきました。日本人は、欧米人より大腸が細いうえ、曲がりくねって、内視鏡を挿入するのに苦労することが多いものです。

便が長くたまると大腸にくぼみができる

 戦後、日本人の食生活は大きく変わり、肉食の占める割合が高まりました。しかし、それに伴って、先祖代々受け継いできた大腸の特徴まですぐに変化したわけではありません。
 日本人の大腸が不得手な食生活になったことで、現代では大腸のトラブルに悩む人が増えています。
 その1つが便秘です。
 特に女性は、男性よりも腹筋が弱いため、便を押し出す力が弱く、便秘になりやすい傾向があります。
 女性の場合、平日に学校や職場でトイレに行くのを避けて、便意を我慢して過ごし、休日に下剤で一気に便を出す人もいるようです。
 大腸に便が長くとどまると、ガスが発生します。ガスがたまって大腸がパンパンに張ってきて、粘膜の弱い部分に圧力がかかって腸壁の一部が外側に飛び出します。こうして、大腸内にボコボコとくぼみができる「大腸憩室症」という病気になるおそれもあります。
 くぼみに便がたまって炎症が起こると、歩くときにズンズンとした痛みや、出血して血便が出ることもあります。さらに、炎症が悪化したら、くぼみの部分に穴が空く危険もあります。
 時間がない、恥ずかしいからといって、便を出さないでいると、大腸に思わぬ病変が起きてしまいます。便を定期的に出すのは、とても大事なことなのです。

便を出すタイミングを逃すべからず!

 大腸の健康を守るために、私がまずお勧めしたいのは「就寝時に胃の中を空にする」ことです。空腹時の胃に食べ物が入ると、その刺激により、約15〜30分後には腸の運動が活発になるからです。

 理想的には、夕食の時間を早めて、寝る直前には胃の中を空っぽにし、起床後に朝食をしっかりとること。朝食後の15〜30分間は、夜、寝ている間に作られた便が出てくる「便のゴールデンタイム」です。このときにきちんと排便する習慣をつけることが、便秘予防の最大のポイントです。

 近年の研究では、便秘などで腸の働きが悪くなると、脳の働きも悪化し、心にも悪影響を与えることがわかってきました。「便秘をするとIQもEQも低くなる」という説を唱えている研究者もいます。IQが低くなるというのは、頭が悪くなるということで、心の知能指数であるEQが低くなるというのは、感情のコントロールができず、性格が悪くなるということです。

解説者のプロフィール

村田 博司(むらた・ひろし)
1956年、山口県生まれ。84年、熊本大学医学部卒業。
86年に大腸内視鏡の世界第一人者である新谷弘実教授のもとで研修。
熊本大学医学部助教授、半蔵門胃腸クリニック院長を経て、99年より現職。
著書に『予約が取れない医者が教える腸の病気で死なない6つの条件』(角川学芸出版)がある。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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