解説者のプロフィール
便秘のときは炭水化物と水分をしっかり摂る
排便は、不要な老廃物や有害な物質を体の外に出す働きがあり、腸がじゅうぶんな免疫機能を発揮するためにもたいせつな作用です。便秘は、その働きが低下している状態ですから、さまざまな弊害を招きます。
便秘は、特に女性に多いという傾向があります。その原因としてはまず、男性より筋力が弱いこと。そして、排卵から月経までの半月間、ホルモンの影響で腸の内容物を先に送る「蠕動運動」が弱まることが挙げられます。
ほかにも運動不足や、食事、水分の摂取量の不足など、さまざまな理由が便秘を招きます。
最近の女性は平均体重の減少が目立ちますが、それは食べる量が減っているからです。しっかり食べていなければ、当然、出るものは少なくなり、便秘の原因にもなります。
特に、若い女性の生理不順を伴う便秘は、栄養不足の証拠で、不妊にもつながりますから要注意です。
消化器専門医の私は、胃腸の健康の目安は、しっかり食べて太れることだと考えています。食物繊維がお通じによいからと、野菜サラダばかり食べていても便通はよくなりません。また、便秘をしている真っ最中は、消化しにくい食物繊維は控えたほうがいいでしょう。消化しやすい炭水化物と水分を、しっかり摂ってほしいと思います。
ガスだまりの原因を防ぐには「うつぶせ姿勢」が良い
便秘とともに起こりやすいのが、いわゆる「ガスだまり」です。これも、便秘と同様の理由で起こり、便秘を伴う場合が少なくありません。
腸内ガスがたまっても、便とは違って、それ自体が悪さをするわけではありません。問題は、たまったガスが不快感を引き起こすことです。たびたび腸内のガスの量が増えて、おなかが張る、痛む、おならが出やすいといった悩みを抱える女性は多いと思います。
このようなガスだまりを防ぐ方法として、私がお勧めしているのが、1日1回、うつぶせになることです。その際、おなかの下に枕を入れて圧迫するとより効果的です。
なぜうつぶせになるのがよいかというと、ガスは軽いので、消化管の中でも、上に上がってくる性質があるからです。立ち姿勢や、座り姿勢ばかりで過ごしていると、なかなか下に降りてくれないのです。
ガスがたまりやすいところは、腸管のくねりが大きく、階段の踊り場のようになっているところです。しかも日本人は、長年の野菜中心の食生活から大腸が長く、形も個性豊かです。ガスがたまりやすい腸相をしているとも言えるでしょう。
余談ですが、大腸ガン健診では、最近、内視鏡が主流ですが、Ⅹ線検査の一種であるバリウム注腸検査だと、腸全体の形と動きを見ることができます。その姿を見れば、その人の腸の「顔つき」と、ガスの停滞しやすいところがわかります。
ガス抜きポーズ「うつぶせゴロゴロ」 のやり方

うつぶせに寝るだけでなく、体を左右に揺らしてやると、腸の踊り場のガスの排泄が促されます。その方法が「うつぶせゴロゴロ」です。
うつぶせゴロゴロのやり方は下のイラストのとおりで、10分ほどうつぶせの姿勢を保った後、左右にゴロゴロ寝転がる運動を5回以上行います。ゴロゴロする際には、おなかや腰だけを動かすのではなく、肩も使って全身で左右に転がるのがコツです。
そうして腸を揺さぶってやると、おならという形で、滞っていたガスが排泄されます。
ガスの排泄を促すには走るのがいちばんですが、逆立ちしても、前転しても効果があります。しかし、誰でも、いつでもできるのがうつぶせゴロゴロのよいところです。いつやってもかまいませんが、特に夜寝る前に行うと効果的です。
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また、便秘を治すには、夜寝ている間など、なにも食べない時間帯を1日8時間以上作ると有効です。
健康な腸では、90分に1回ぐらい大きな蠕動運動があって、便が先のほうへ送られていきます。おなかがすくとグーグー鳴るのは、この蠕動運動が起こっているからで、健康な証拠です。しかし、この運動は、食事や間食をすると止まってしまうので、腸の働きをよくするには、胃を休めるといいのです。
ところで、便秘をすると腸内のガスが増えたり、おならのにおいがきつくなったりします。これは、いわゆる悪玉菌が、たまった便を分解し、ガスの発生を増やしているからです。
しかし、ガスについて考えると、ことはそう単純ではありません。一般に善玉菌は体によい物質を作り、悪玉菌は有害な物質を作ると思われていますが、悪玉菌は体によいガスも作っているのです。
腸内の水素ガスは、余分な活性酸素を中和して、臓器の障害を防いでいる可能性が指摘されています。善玉菌も悪玉菌もこの水素ガスを作っていますが、より多く作っているのはむしろ悪玉菌のほうで、そうなると明確な善悪の違いはありません。
善玉菌と悪玉菌のバランスがポイントであり、悪玉菌の存在自体が必ずしも悪ではないのです。
瓜田純久(うりたよしひさ)
1985年、東邦大学医学部卒業。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本超音波学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医、日本消化器病学会認定医、日本消化管学会胃腸科指導医、日本病院総合診療医学会認定医などとして活躍。テレビ番組の医療コメンテーターとしても、わかりやすい語り口で人気。監訳書に『Dr.アップルの早期発見の手引き診断事典』(マイケル・アップルほか著、産調出版)などがある。