こんな人は要注意

眼瞼下垂症とは
なんとまぶたのたるみが、万病の原因になることがわかってきました!
まぶたが垂れ下がってくる状態を「眼瞼下垂症」と言います。
眼瞼下垂症は、45歳を過ぎる頃から多くの人に現れてきますが、これによってさまざまな不快な症状が全身に引き起こされてくることは、あまり知られていませんでした。
まぶたが垂れ下がってくると、三白眼(黒目が上に寄り、左右、下の三方が白目になる状態)になる、目が落ちくぼむ、額に大きなシワができる、ほうれい線まで深くなるなど、10歳も20歳も年を取ったような印象を与えます。
しかし、それだけではすみません。眼瞼下垂症になると、垂れ下がったまぶたによって視野がさえぎられ、物が見えづらくなります。
まぶたの筋肉の疲労により、眼痛が起きたり、ドライアイになったりすることもあります。
注目すべきは、頭痛、肩こり、冷え症、不眠、便秘、疲労など、全身の不快症状の原因にもなること。多くの人を悩ませているうつも、その1つです。現在、さまざまな治療が行われていますが、明らかに眼瞼下垂症によるものもあるのです。

まぶたのしくみ
まぶたが垂れると自律神経が乱れる
まぶたは、まぶたの奥にある「眼瞼挙筋」という筋肉の収縮によって上がります。眼瞼挙筋の先は、「腱膜」と「ミュラー筋」に分かれ、それぞれ「瞼板」に付いています。
ところが、この腱膜は薄くて柔らかく、まぶたを頻繁にこすったりすると、結合が弱まり、瞼板から外れやすくなってしまいます。
外れてしまうと、まぶたを上に引き上げにくくなり、そのうちに腱膜やミュラー筋が薄くなって伸び、まぶたが垂れ下がってきます。これが「腱膜性眼瞼下垂症」です。
もちろん、腱膜が外れても、なんとかまぶたを開くことはできます。これは、ミュラー筋が代償として、腱膜の代わりにまぶたを上げてくれるからです。しかし問題は、そうなるとミュラー筋に大きな負担がかかることです。
実は、ミュラー筋の付け根にはセンサーがあって、そこから出る固有知覚という信号は、脳の奥に入り、脳幹にある青斑核を介して「視床下部」という部位を刺激します。
この刺激が、全身の機能を調整している自律神経の一種である交感神経を過度に緊張させ、頭痛や肩こり、うつなどの不快症状を引き起こすのです。
これらは、信州大学医学部形成外科教授、松尾清先生が「腱膜固定術」という、ミュラー筋に負担をかけない眼瞼下垂症の手術を開発したことから、次々にわかってきたことです。松尾教授は、多数の英文の論文を書かれていますが、その研究はノーベル賞級のお仕事と私は思っています。
眼瞼下垂症の種類

眼瞼下垂症の手術・腱膜固定術(松尾方式)について
にわかには信じがたいかもしれません。しかし、私自身、松尾教授から眼瞼下垂症の手術を受けて、これらの事実を認めざるを得ませんでした。
なにしろ、私の場合、手術を受けたあと、熟睡できるようになり、声も大きくなり、髪の毛が黒くなり、習慣のようになっていたこむら返りも起きなくなってしまったのです。
術前と術後の私の写真を見比べてください。手術によって眼瞼下垂症が治った後は、額のシワも消えて、10歳以上若返った感じです。
以来、当クリニックでも、松尾方式による眼瞼下垂症の手術「腱膜固定術」を実施するようになり、現在では症例数が3500を越えています。
その結果は驚きの連続でした。見た目が若返るだけではありません。
不眠、頭痛、肩こり、冷え症、便秘、眼精疲労、ドライアイ、さらにはアトピー性皮膚炎、うつなど、実にさまざまな症状が改善されるのです。

眼瞼下垂症の手術を受けた栗橋先生
術後は、額のシワが消え、熟睡できるようになった。また髪が黒くなり、声も大きく出るようになった(Beforeの写真では髪を染めている)
眼瞼下垂症の見つけ方
眼瞼下垂症を見つけるのは意外に簡単です。
「額に深いシワがある」「ほうれい線がくっきりしている」などが目安です。これらが気になる人で、頭痛や肩こりなどの不快症状に悩まされている人は、眼瞼下垂症の可能性があります。
手術は、一部の眼科や形成外科で受けられます。医療保険も使えます。
ただし、眼瞼下垂症を改善する方法として、手術を希望するなら、必ず松尾方式による「腱膜固定術」を受けること。眼瞼下垂症の手術にはその他の方式で行われている場合が多々あり、必ず確認が必要です。
解説者のプロフィール

栗橋克昭
1971年、札幌医科大学卒業。京都大学眼科などを経て、1980年、静岡県浜松市に栗橋眼科開業。日本眼科手術学会名誉会員。涙目、ドライアイ、難治性涙道閉塞、眼瞼下垂症の診療を得意とし、難治性涙道閉塞、眼瞼下垂だけでも6000件を超す手術実績がある。著書に『眼瞼下垂症手術 眼瞼学』(メディカル葵出版)、『身につく涙道疾患の診断と治療』(金原出版)など多数。