解説者のプロフィール
食欲を我慢せずに食事の量をへらせる!
私が、糖尿病の疑いありと診断されたのは、今からもう十数年前のことです。当時は、境界型糖尿病(糖尿病予備軍)で、そのとき試したのが、食前キャベツでした。丼1杯のキャベツを、食前に食べるのです。これを1日3食、3ヵ月続けたところ、血糖値がどんどん下がり、あっという間に問題のない状態まで戻すことができました。
しかし、血糖値が正常になると、食前キャベツはやめてしまいました。その後も、なるべくご飯の量をへらし、食べすぎなどに気を遣っていたのですが、やはり、食事への配慮がしだいに緩みがちになったのでしょう。気づかぬうちに、糖尿病がまた悪くなったのです。
健康診断で、またひっかかったのが6年前。そのとき、ヘモグロビンA1cが10%あり、今度はほんとうの糖尿病になっていました。ヘモグロビンA1cとは、過去1〜2ヵ月の血糖状態がわかる数値です。
その後は、服薬と食事制限をし、なんとか血糖コントロールをしましたが、なかなかうまくいきません。いったんは7%台に下がっていたヘモグロビンA1cは、2012年の夏ごろから、再度上がり始めてしまいました。そして、2013年の4月には、8.6%を記録。「このままではいけないな」と思ったとき取り組んだのが、食前キャベツでした。以前のことを思い出し、また試したのです。
毎日、朝食と夕食の食前に、丼1杯のせん切りキャベツを食べます。朝は、キャベツのほかは、ヨーグルトと納豆のみ。昼は普通に食べ、夜はキャベツを食べてから、普通に食事をします。
せん切りキャベツは、なるべくドレッシングをかけずに食べています。毎日これだけの量のキャベツを食べていると、確かに飽きてきます。そんなときは、キャベツに、ワカメやトマト、キュウリ、セロリなどを、細かく切って混ぜて食べます。

食前にキャベツを食べると、それだけでおなかがいっぱいになりますから、ほかの食事はそれほど多く食べられません。食前キャベツを始める前、私の朝食は和食でしたが、朝からご飯をお代わりしていました。ところが、先にキャベツを食べることで、おなかがいっぱいになるので、食欲を我慢することなく、食事の量をへらすことができるわけです。
年末年始に飲食してもA1cはさらに降下!
2013年の夏から、食前キャベツを始めたところ、上昇し続けていたヘモグロビンA1cが、一転して下がり始めました。去年9月に7.4%まで下がり、「普通こんなに下がりませんよ」と、担当医も驚いていました。
食前にキャベツを食べていることを話すと、信じられないような口ぶりでした。しかし、11月にさらに数値が降下、7.0%まで下がったのを確認した担当医は、「キャベツを食べ続けてください」といいました。
ただ、その後は、年をまたいで忘年会や正月など、飲食の機会が多数あったので、糖尿病も悪化したかと覚悟しました。ところが今年2月は6.8%。数値はさらに降下したのです。
この間、92㎏だった体重も89㎏となり、全く無理せず自然に3㎏減量できました。胃の調子もよく、便通も快調です。今後の目標は、食前キャベツを続けて、82㎏まで体重を落とすことです。そうすれば、今かなりいい状態のヘモグロビンA1cを、さらに下げられるでしょう。
ちなみに、食前キャベツを実行しながら、私の専門であるツボへの指圧も行っています。指圧するツボは、足の衝陽です。
足の第2指と第3指の骨の間に手の指先を当て、甲の上を足首の方向にたどると、ちょうど甲の中心あたりで、指が止まります。第2指と第3指の骨と骨が接しているところです。ドクンドクンと脈動を感じられると思います。そこが衝陽です。
東洋医学では糖尿病は「脾と胃が虚して生じる」と考えます。衝陽は、胃経という経絡の原穴です。原穴とは、経絡の中で最も生命エネルギーの気が集まるツボですから、弱った胃を強化し、脾の働きもよくしてくれます。いわば、糖尿病の特効ツボといってもいいでしょう。

押し方は、ツボに手の親指の指先を当て、ゆっくりと軽く押し込んだら、そのまま1から5まで数えます。強い刺激は必要ありません。5まで数えたら、ゆっくり離します。これを左右の足の衝陽に3分ずつくり返しましょう。私は、この指圧を毎晩寝る前に行います。
糖尿病の場合、ツボの指圧だけで病状を改善するのは、なかなか難しい場合があります。しかし、食前キャベツと併用すれば、私のように、かなり劇的な効果を期待できると考えられます。
佐藤一美
あん摩マッサージ指圧師、東京都指圧師会会長。昭和20年、東京都生まれ。43年、日本指圧学校卒業。57年、日本鍼灸理療専門学校専科卒業。58年、同科学的追求理論特別委員長、62年、日本経絡指圧師会会長、平成元年、東京都指圧師会常任理事、日本指圧協会常任理事などを歴任。現在、東京都指圧師会杉並支部長、日本経絡指圧会会長、東京都指圧師会会長、日本指圧協会副理事長。雑誌への原稿執筆や講演活動、テレビ・ラジオ出演等のかたわら、株式会社ケイラク代表取締役社長として、指圧治療の業務を全国規模で展開する。