解説者のプロフィール

宮本よしか(みやもと・よしか)
龍村式指ヨガマスターインストラクター・看護師。
長崎県生まれ。虎の門病院血液内科などで看護師を約10年間勤めた後、自らの原因不明の体調不良から西洋医学への限界を感じる。その後、龍村修氏に師事し、ヨガを本格的に学んで元気を取り戻す。現在はヨガや指ヨガを通じて、ホリスティックな面から真の健康をサポートしている。田園調布長田整形外科、朝日カルチャーセンター新宿教室などで指ヨガの施術・指導を行う。
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原因不明の体調不良から奇跡の生還!
看護師として約10年、病院に勤務し、多くの患者さんと接する中で、私は西洋医学だけでできることには限界があるのではないかと感じていました。病院で手術や投薬などの治療は受けるのですが、それでもなお健康とは言えない人をたくさん見てきたからです。
そんなとき、私自身が原因不明の体調不良に襲われました。発熱、便秘、原因不明の腹痛、全身に広がる湿疹とかゆみ、PMS(月経前症候群)、慢性疲労感、頭痛、めまい、動悸、不整脈、血液データの変化……重度の脱水症状に陥り、一時生命の危機にさらされる事態にもなりました。
病院に何度も訪れ、検査するのですが、どこも異常なし。決定的な症状名がつきません。そうするうちに心理的閉塞感、不安感が強くなり、ほんとうに生きるのがつらい日々が続きました。この状態はなんと7年間にも及びました。
当時、幼い子どももいましたし、「なんとかしなければ」という気持ちがありました。そのとき、実家の母が具合が悪かった際に、ヨガで元気になったことを思い出したのです。
私はヨガの大家である龍村修先生に師事し、ヨガを学ぶことにしました。すると薄紙を剥ぐように少しずつ全身の体調不良が治りはじめ、ついに半年後には、「生きているってうれしい」と思えるほどにほとんどの症状が回復しました。
これは龍村先生から学んだヨガと、そして「龍村式指ヨガ」の効果にほかなりません。同時に東洋医学の勉強も始め、看護師だった頃とは異なる見方で体を見ることができるようになりました。
その一つが「部分即全体」という東洋医学独特の考え方です。
私たちの体は、手足、頭、胴、すべてがつながっています。どこか1カ所に痛みや不調を感じたときに、その部分だけを対処療法的に治療しても、根本的な治療にはなりません。
全身を治さないといけないということですが、言い換えると、症状のある部位以外からアプローチすることも可能だということです。
手は人体の縮小版
指ヨガは、「手指をもむ」ことで全身でヨガをやっているのと同じ効果が得られるというものです。手指をもむだけなので、いつでもどこでも手軽にできますし、また足や腰を痛めて動けない人、寝たきりの人でもヨガが行うことができます。
龍村式指ヨガは、「手は人体の縮小版」という原理に基づいて行います。
中指が頭と首にあたり、残り4本の指が手と足にあたります。手のひらが消化器系の内臓や子宮など、手の甲が背骨や骨盤などに相関しています。
この考え方から体の不調を感じる部分に相応する指のポイントをもむことで、間接的にその部分の異常を修正することができます。
例えば、指ヨガをやる前に首を左右にねじり、さらに指ヨガをやった後にも同様に首を左右にねじってみます。指ヨガを行う前よりも後のほうが首の可動域が広がっていることがわかると思います。
中指は、頭から首、背骨にあたります。ここをねじったり、回したりするのは、首をねじったり、上半身をぐるぐる回したりしたことと同じ効果が得られます。それで首の可動域が広がったわけです。
《手指と全身の相関図》
「中指ねじり」の元となる龍村式指ヨガでは手指と全身は下図のような相関関係があると考えられています。

「中指ねじり」のやり方
指ヨガの基本的なやり方として、中指のもみ方を紹介します。体の軸になる中指だけでもしっかりもむと、体調面、心理面がガラリと変わると思います。
「中指ねじり」のやり方は、下の写真を参考にしてください。時間のある人は、中指と同様にすべての指と手のひらをもむとさらに効果的です。
中指ねじりを行うとき、全身のヨガと同様に呼吸がたいせつです。吐く息を意識しながら行います。
ねじったりもんだりするときは、ギュウッと押しっぱなしにするのではなく、リズミカルに押して離すを繰り返します。「痛気持ちいい」と感じる程度の刺激が理想的です。滞りのあるところがほぐれて元気になるイメージで行いましょう。

❶まず首を吐く息とともにゆっくりと右にねじる。そのときの視野を覚えておく。左も同様にねじる

❷軽く手の準備運動。手をブラブラ~ッとさせる

❸左手の中指の第1関節に向かって、息を吐きながら軽く10回ねじる。終わったら同様に反対方向に10回ねじる

❹左手の中指の第2関節に向かって、息を吐きながら軽く10回ねじる。終わったら同様に反対方向に10回ねじる

❺左手の中指の付け根に向かって、息を吐きながら軽く10回ねじる。終わったら同様に反対方向に10回ねじる

❻左手をおなかにつけて、中指だけを立てるように持ち上げる。息を吐きながら、そのままぐるぐると10回回す。終わったら同様に反対方向に10回回す

❼力を抜いて、手をブラブラ~ッとさせる

❽もう1度、首を左右にゆっくりねじってみる。中指ねじりを行う前よりも首の可動域が広がっている

中指ねじりをテンポよく行うと、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌が促進されることがわかっています。
脳から分泌されるセロトニンは、精神状態を大きく左右するといわれています。うつに悩む人は、セロトニンの量が著しく少ないという報告もあります。中指ねじりは、自然とセロトニンを増やし、脳や体をあるべき状態に近づけることが期待できます。
中指ねじりはいつ、どこで、どのくらい行っても大丈夫です。寝る前に行うのもお勧めです。脳がリラックスし、血流がよくなり、スムーズに入眠できるようになります。
中指をねじると気持ちが穏やかに、前向きに

以前、田園調布長田整形外科のウェルネスプログラムで、私が担当している指ヨガ講座に参加されたかたがたのデータを集めました。血圧や脈拍数の低下、肩こり、腰痛、めまい、うつ、便秘、子宮筋腫、不整脈、湿疹など、多岐にわたって症状が改善しています。
また、よく聞かれたのは「体が軽くなった」「頭のモヤモヤがスッキリした」「目がよく見えるようになった」などの感想です。手の中指は、頭や首と関連しています。中指をもみほぐすことで、脳の疲れやストレスなどが取れ、頭や目、体にスッキリ感が出たのだと思います。
私が以前施術した35歳の女性は、頭がモヤモヤすることが多く、気持ちも沈みがちだったそうですが、中指をしっかりほぐすことで、頭がスッキリしたそうです。落ち込んだときも中指をねじると、気持ちが穏やかに、前向きになったと話されていました。