インスリンの働きを高める
私たちが、毎日元気に活動できるのは、ブドウ糖を血液中から筋肉などに取り込み、エネルギー源として使っているおかげです。ブドウ糖を取り込む役目をするのが、膵臓から分泌されるインスリンというホルモン。糖尿病は、インスリンの働きが低下して、ブドウ糖が、筋肉や肝臓にうまく取り込まれず、血液中にあふれる病気です。
原因として栄養過多や運動不足が挙げられますが、過労やストレスも見逃せません。ストレスがたまると、交感神経(心拍数や血圧を上げるなどの全身の活動力を高める神経)が刺激され、心身がいつも興奮した状態に置かれます。その結果、血糖値の高い状態が続き、インスリンの働きが弱まるのです。
糖尿病や糖尿病予備軍の人には、食生活の見直しや改善など、日常生活での自己管理が大切です。そうした中で、お勧めしたい健康法の一つが、タマネギを赤ワインに漬けた「タマネギワイン」です。タマネギの有効成分が赤ワインに溶け出し、赤ワインの成分との相乗効果で、血糖値のコントロールや合併症の予防が期待できます。
糖尿病の予防や改善に有効なのは、タマネギに含まれている硫黄成分です。これは、タマネギに特有の辛味のもとになる成分で、インスリンの働きを高めて血糖値を下げる作用があることがわかっています。
また、タマネギには、硫化アリルやケルセチンというフラボノイド(植物に含まれるポリフェノールの一種)が含まれています。これらの成分には、新陳代謝を活発にしたり、動脈硬化を防いで血管の老化を抑制したりする作用があります。
さらに、肉体疲労や精神的なストレスを和らげるビタミンB1も多く含まれているのです。
赤ワインには、さまざまなポリフェノールが豊富に含まれています。ポリフェノールは、強力な抗酸化物質(酸化を防止する物質)で、動脈硬化や血栓(血液の塊)を防いで、血管を若々しく保つ作用があります。
一般に、適度のアルコールには血行をよくして、疲れを取る作用があります。さらに赤ワインには、骨を丈夫にしたり、筋肉のたんぱく質を維持したりする成分が含まれ、体力や活力の回復に、より役立つのです。
糖尿病になると、ブドウ糖が活用できなくなってエネルギーが不足し、疲れやすくなったり、やせたりしてきます。タマネギワインは、エネルギー不足による多くの症状を改善し、インスリンの働きを高めるという直接的な作用を持つのです。
糖尿病を放置しておくと、血糖値が高い状態が続くため、全身の血管がもろくなり、体のさまざまな器官で血管障害が起こります。これが、重篤な合併症を引き起こします。
しかし、血流を促進して、血管を若々しく保つ作用のあるタマネギワイン適量を継続的に飲んでいれば、こうした血管にもよい影響を及ぼす効果が期待できます。糖尿病の改善や合併症を防ぐことが可能なのです。
タマネギワインは薬ではないので、飲み過ぎても副作用はありませんが、1回に飲む量をおちょこ1杯程度にするなど、適量を守り、アルコールに弱い人は特に注意してください。
タマネギワインの作り方

解説者のプロフィール

岡田研吉
銀座・研医会診療所漢方科医師。東邦大学医学部卒業。ドイツのリューベック医科大学留学中、東洋医学を志す。
帰国後は名古屋聖霊病院、藤枝市立病院に勤務するかたわら、国立東静病院で漢方療法を学ぶ。著書も多数。
●研医会診療所漢方科
http://ken-i-kai.org/clinic/kanpou.html