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【うつ病が改善する食事】100人以上に成果を上げた食事療法の極意

【うつ病が改善する食事】100人以上に成果を上げた食事療法の極意

糖尿病の患者さんにうつ病が多いことは、以前から知られていました。海外の研究では、糖尿病患者は、そうでない人の2倍以上、うつになりやすいと報告されています。【解説】吉田寿美子(国立精神・神経医療研究センター・臨床検査部部長精神科外来医長)

血糖コントロールができるとうつ病も改善

 糖尿病の患者さんにうつ病が多いことは、以前から知られていました。海外の研究では、糖尿病患者は、そうでない人の2倍以上、うつになりやすいと報告されています。
 私が行った調査でも、同じような結果が出ています。糖尿病の治療を受けている患者さんのうち、約37%にうつ症状があり、そのうち8%は治療が必要なうつ病でした。この数は、一般成人の約2倍です。

 一方、うつ病患者にも糖尿病が多いことが指摘されています。日本で行われた調査では、成人男性を8年間追跡調査したところ、うつ的な気分の強い人はそうでない人の2.3倍、糖尿病になりやすいという結果が出ています。

 このように、うつ病と糖尿病には、相互に深い関係が見られます。
 私は以前、内科と連携して、糖尿病患者の不眠症や抑うつ状態といったうつ症状を、治療したことがあります。そのときわかったことは、うつ症状が改善すると、血糖コントロールがよくなり、食事などで血糖コントロールができるようになると、さらにうつ症状も改善することです。

 このことから、血糖値の高いうつ病患者に食事指導をすれば、うつ病も改善するのではないかと考えました。そして、うつ病の治療に栄養・食事療法を取り入れるようにしたのです。これまで、100例以上の症例で成果を上げています。その中の、非常に顕著にうつ病が改善した例をご紹介しましょう。

うつ病が改善した症例報告

Aさん(60代・女性)は、もともと活発な人で、それまで家事も近所づきあいもうまくこなしていました。ところが、5年前に体調をくずしてから気力がわかなくなり、まともに家事ができなくなったのです。
 うつ病と診断され、いろいろな薬を試しましたが、症状は改善せず、半年後に入院。退院後も、はかばかしい改善はありませんでした。一方で、食欲はあり、1日5食も食事をとっていました。
 2年前、私が担当医になったときに、Aさんの体重は発病前から20kgもふえていたのです。血糖値、コレステロール値ともに高くて、糖尿病、脂質異常症、肝機能障害が認められました。すぐに、食事療法を開始し、夜の10時には床に就くよう指導しました。

 Aさんは食事を3食にへらし、夜10時に就寝するようになり、薬も規則正しく飲めるようになりました。すると3ヵ月後、洗濯物を自分で干すまでに改善。その後も順調に快方に向かい、半年後には血液データが正常になり、体重もうつ病になる前の値に戻りました。
 Aさんのように、ずっと食欲がなかったうつ病患者が食べられるようになると、家族は、「食べられるのはよいこと」と思い、どんどん食べさせます。しかしそれが、逆にうつ病を悪化させてしまうので、注意が必要です。

 もう一例は、お酒が好きなBさん(30代・男性)です。もともとやせていましたが、ストレスと飲酒で、3ヵ月で10kg太りました。BMIといって、身長から見た体重の割合を示す指数があります。肥満の手軽な目安で、25以上が肥満になりますが、BさんのBMIは27でした。受診直後はうつ症状が激しく、自殺が心配されるほどだったのです。
 Bさんには、まずお酒をやめてもらい、2食だった食事を3食にし、野菜をたくさん食べてもらいました。仕事柄、生活が不規則でしたが、夜10時には寝る生活を指導しました。
 その後、数ヵ月で体重が元に戻り、血糖値や中性脂肪値などの血液データが改善して、うつ症状もかなりよくなりました。
 こうして、うつ病が改善すると、薬も劇的にへらせます。

ご飯を軽く1膳に主菜と野菜が食事の目安

 私たちがうつ病の治療に取り入れている生活指導の目標は、次の3つです。
①3食きちんと食べる
②バランスよく食べる
③夜の10時に就寝する

 うつ病患者の多くは、食事のとり方に問題があります。1日2食で済ませたり、一つの食品にこだわって食べたりするのです。結果、食後高血糖になったり、栄養が不足したりします。
 ところが、食事療法を取り入れると、生活のリズムが整い、栄養の過不足もなくなってきます。また、服薬もきちんとできるようになるので、相乗的にうつ病が改善していきます。

食事療法のポイント


 私といっしょに食事療法に取り組んでいる、管理栄養士の今泉博文さんによると、食事療法のポイントは次の点です。
❶その人に適正な1日の摂取カロリーを、3回に分けてとります。1日2食だった人は、1回の食事量がかなりへります。
❷バランスの目安は、「ご飯を軽く1膳に主菜と野菜」です。カロリー計算はせず、見た目で判断します。スパゲティだけ、ラーメンだけではなく、コンビニの弁当に野菜を一品つける食事のほうが、バランスがとれています。

 最初は無理せず、できる範囲でやってもらい、少しずつできることをふやしていくのです。

 うつ病には、食事療法を取り入れることが非常に有効です。当センターでは、10日間の「こころと体の健康プログラム」入院を実施しており、心にも体にもよい食事と運動を指導しています。関心のある人は、ぜひご参加ください。

 最後に、うつ病治療の基本は薬物療法で、食事、栄養の改善は、あくまで補完的な治療であることを忘れないでください。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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