【医師解説】夜間頻尿・尿漏れの改善には、昼間に弾性ストッキングをはくこと―心臓病も予防できる

【医師解説】夜間頻尿・尿漏れの改善には、昼間に弾性ストッキングをはくこと―心臓病も予防できる

夜間頻尿の患者さんへのセルフケアとして、日中に着用する「弾性ストッキング」を勧めています。女性だけでなく、男性にもおすすめです。2週間もすると、多くの患者さんが、足のむくみが改善され、足が軽くなり、夜間の尿量も減少。体調がよくなり、手放せなくなるようです。【解説】曽根淳史(宮津康生会宮津武田病院院長)


高齢者の夜間頻尿や尿もれに効果的

 夜間頻尿は、現在の日本の高齢化社会を反映している症状の一つです。日ごろ治療に当たっている外来にも連日、ご高齢の患者さんが訪れています。
 日常生活に支障をきたし、心臓病や高血圧のために日中に下肢にむくみが生じ、それが原因で夜間頻尿になっている患者さんも少なくありません。
 私は、こうした夜間頻尿の患者さんのセルフケアとして、日中に着用する「弾性ストッキング」を勧めています。

 当初は、就寝の3~4時間前に、寝た状態で足を高く上げる姿勢(下肢挙上姿勢)を勧めていました。しかし、高齢で運動機能の低下した人には、その姿勢を長く続けることは難しいということがわかりました。

 そこで3年ほど前から、体力のない高齢者でもできる方法として、日中にひざ下までの弾性ストッキングの着用を勧めるようになりました。
 使用するのは、血管外科などで下肢静脈瘤の治療に使われる、ひざ下までの弾性ストッキングです。

 弾性ストッキングは、はきにくいというデメリットがありますが、それを少しでもカバーするために、起床後から着用してもらうようにしています。朝が最もむくみが少ない時間帯で、それだけはきやすいからです。そのまま日中を過ごし、夜の入浴時に脱ぐというサイクルで続けてもらっています。

 患者さんの中には、弾性ストッキングを着用することに難色を示す人もおられます。
 しかし、足がらくになるのが実感できるのか、着用を始めると一変。2~3週間もすると、多くの患者さんが足の軽さを実感し、さらには夜間の尿量が減少するため、夜間排尿の回数が減って、体調がよくなり、手放せなくなるようです。これは、弾性ストッキングを着用すると、足のむくみが解消されることと密接に関係しています。

夜間頻尿とともに睡眠時無呼吸も改善

 ではなぜ、日中に足がむくむと夜間頻尿になるのでしょう。
 夜間頻尿の主な原因は三つあります。水の飲み過ぎとむくみによるもの、膀胱の機能障害によるもの、睡眠障害によるものです。
 なかでも高齢者に最も多くみられる原因が、日中の足のむくみによる夜間多尿です。

 高齢になると足がむくむのは、下肢の筋力が衰えるためです。ふくらはぎの筋肉によるポンプ作用(血液を心臓に戻す働き)が衰え、ふくらはぎの筋肉が弱ることで、間質(細胞の結合組織)にすき間を作ってしまうのです。その間質のすき間に、体液の水分がもれやすくなるので、高齢者の足がむくみやすくなるわけです。
 足のむくみは、立位や座位の姿勢を取る昼間に生じ、就寝時に体が横になることで、下肢にたまった体液が一気に血中に戻るため、夜間の尿量が増加して夜間頻尿が起こるのです。

 ここで役立つのが、弾性ストッキングです。日中に弾性ストッキングを着けていると、日中はふくらはぎが常に締めつけられた状態となり、それが、足のむくみの予防につながります。

 実際に弾性ストッキングを着用して、夜間頻尿や足のむくみをコントロールしている患者さんの例をお話ししましょう。

 80代の男性の患者さんは、心不全と夜間頻尿がありました。
 弾性ストッキング着用後から夜間の尿量が減り、数ヵ月後にはトイレに起きなくなり、夜間頻尿が解消しています。

 70代の男性の患者さんは、着用してから足のむくみが解消。最終的には夜間頻尿と睡眠時無呼吸症候群が改善しています。
 ほかにも、弾性ストッキングを着用して歩行能力がアップした70代の女性や、夜間頻尿が改善してから心臓肥大が改善した男性の患者さんもいます。

 これらの症例は、学会で発表しています(第28回老年泌尿器科学会・第22回排尿機能学会・第81回日本泌尿器科学会東部総会)。
 現在、夜間頻尿の治療法として、弾性ストッキングを指導している病院は多くなく、当院をはじめ、神戸(神戸医療センター)と沖縄(北上中央病院)など数ヵ所です。

 今回の記事を読み、夜間頻尿に弾性ストッキングを活用したいと思われた人は、先述の病院をはじめ、夜間頻尿の治療に対応する泌尿器科を受診するとよいでしょう。近くに対応の病院がない方は、かかりつけ医に相談のうえ、医療用の弾性ストッキングをお買い求めください。

宮津康生会宮津武田病院院長
曽根淳史
1982年、川崎医科大学卒業。88年、同大学大学院修了。同大学泌尿器科講師、興生総合病院泌尿器科部長、宮津武田病院泌尿器科部長等を経て、2010年より現職。日本泌尿器学会専門医・指導医。日本排尿機能学会代議員。専門領域は、高齢者の排尿障害、夜間頻尿、尿路管理、男性性機能障害など。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


夜間頻尿にはむくみ対策が有効!下半身に溜まった水分を流す「足上げ」ポーズ

夜間頻尿にはむくみ対策が有効!下半身に溜まった水分を流す「足上げ」ポーズ

スウェーデンの研究期間が行った調査では、夜間頻尿のある人はそうでない人に比べて、心筋梗塞や脳梗塞(心臓や脳の血管が詰まって起こる病気)にかかりやすく生存率が低いことも確認されています。夜間頻尿の原因は「むくみ」にあるのです。その対策法を紹介します。【解説】菅谷公男(北上中央病院副院長)


頻尿・尿もれを改善する男の骨盤底筋体操「ながら肛門締め」のやり方

頻尿・尿もれを改善する男の骨盤底筋体操「ながら肛門締め」のやり方

50~60代以上の中高年男性に多く見られる前立腺肥大症という病気をご存じでしょうか。前立腺は精液を作る場所で、膀胱の下部、尿道を囲むように存在する臓器です。健康な人の前立腺はクルミ大のサイズですが、40代半ばからこれが硬くなり、それから徐々に大きくなっていくといわれています。【解説】持田蔵(西南泌尿器科クリニック院長)


くしゃみで尿が漏れる 対策はミネラルバランスを整える“50℃”の味噌汁

くしゃみで尿が漏れる 対策はミネラルバランスを整える“50℃”の味噌汁

私が主宰する料理教室では、身近な食材を使って、健康で美しい体を作る知識と調理方法をお伝えしています。その中で重要なカギとなっているのが、「酵素」です。酵素は、体内で起こるさまざまな化学反応を促進する物質です。【解説】人見惠子(ミレット・スタイル代表)


【体験談】持病のひざ痛が軽減!足指を鍛えたら甲から足首のむくみ一掃 靴のサイズがダウン!

【体験談】持病のひざ痛が軽減!足指を鍛えたら甲から足首のむくみ一掃 靴のサイズがダウン!

元々、足のむくみがひどかったので、足づかみ体操を実践してみたところ、私の足は大きく変わりました。それまでの私の足は、パンプスをはくと足の甲の皮膚がムチッと盛り上がっていたのですが、あらためて足を見ると、確かに細くきれいに見え、足の甲の盛り上がりもありません。【体験談】酒井恵美(仮名・柔道整復師・26歳)


【夫源病(ふげんびょう)とは】夫が原因の高血圧 症状と対策を名付けた医師が解説

【夫源病(ふげんびょう)とは】夫が原因の高血圧 症状と対策を名付けた医師が解説

女性の場合、50歳以降に起こる体調不良を、世間一般では更年期と呼びます。しかし私は、定年を迎えた夫が家にいることによるストレスが原因ではないかと考えています。これを、夫源病といいます。読み方は「ふげんびょう」です。上沼恵美子さんの告白で話題になりました。【解説】石蔵文信(大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授)


最新の投稿


【へそさすり体験談】起床時にピリピリ、日中はジーンとする腰痛を「腸」から改善できた

【へそさすり体験談】起床時にピリピリ、日中はジーンとする腰痛を「腸」から改善できた

私が腰の痛みを感じるようになったのは、昨年の暮れからです。どういうわけか、いきなり腰が痛くなったのです。それからは、常に重だるい感覚が腰周辺にありました。【体験談】遠藤裕子(仮名・66歳・理容師)


水虫やカンジダを防ぐ!正しい足の保湿ケアとマッサージ方法

水虫やカンジダを防ぐ!正しい足の保湿ケアとマッサージ方法

皆さんはお風呂から上がったとき、足をしっかり拭いていますか。水分が皮膚に残ったままだと、その水分が蒸発するときに熱を奪い、皮膚が乾燥しやすくなります。また、指の間に水分が残っていると不衛生になり、湿疹ができたり、白癬菌やカンジダなどの感染の温床になったりします。【解説】高山かおる(済生会川口総合病院皮膚科主任部長)


【注目の断食】ミネラルファスティングで腸内環境を改善!月1回でも健康的に痩せる

【注目の断食】ミネラルファスティングで腸内環境を改善!月1回でも健康的に痩せる

ミネラルファスティングは、断食前後や日頃の食事、生活習慣までを含めたトータルパッケージの健康プログラムとなっています。行う前や行った後も穀菜食を続けていれば、60兆個の細胞が正しく働くための環境整備に役立ち、ひいては「腸の掃除力」も高まっていくわけです。【解説】山田豊文(杏林予防医学研究所所長)


ハチミツのダイエット効果は「夜」寝る一時間前に飲んで17kgやせた!

ハチミツのダイエット効果は「夜」寝る一時間前に飲んで17kgやせた!

「どうにかしなければ!」10年前、私は人生で最大の「85.6kg」という体重になってしまい、焦りました(身長は173cm)。始めて半年くらいは、ほとんど体重が変わりませんでした。ところがその後は、毎晩、寝ている間に、必ず0.5~0.7kg減るようになったのです。【体験談】芳賀靖史(翻訳家・58歳)


厚い爪・白い爪は水虫の可能性!爪白癬の治療法と予防について皮膚科医が解説

厚い爪・白い爪は水虫の可能性!爪白癬の治療法と予防について皮膚科医が解説

爪白癬は、中高年を中心に日本人の10人に1人はかかるポピュラーな病気です。単独で生じることもありますが、多くは足の水虫と合併します。白癬菌は、高温多湿な環境で繁殖します。気温と湿度が上がる今の時期は、通気性のいい靴下をはくなどして、足の風通しをよくしましょう。【解説】野田真史(池袋駅前のだ皮膚科 )