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【医師解説】毛細血管が元気に!疲れ果てた血管、こうすれば必ず再生できる!

【医師解説】毛細血管が元気に!疲れ果てた血管、こうすれば必ず再生できる!

動脈は外膜、中膜、内膜の3層から成り、血管壁をつくり上げています。外膜は血管を守る保護層、中膜は血管の拡張と収縮にかかわる層、内膜は薄い線維成分と内皮細胞から成ります。血管を強くする決め手となるのが、この内皮細胞です。【解説】島田和幸(地方独立行政法人新小山市民病院院長)

解説者のプロフィール


島田和幸
1973年、東京大学医学部卒業。同大学第三内科、米国タフツ大学、ニューイングランド・メディカルセンター、高知医科大学などを経て、2006年、自治医科大学附属病院院長。2012年より現職。血管病の予防と治療を専門とする循環器内科にて、長年、臨床と教育に携わる。著書に『一生切れない、詰まらない「強い血管」をつくる本』(永岡書店)がある。

動脈硬化が進んでいてもプラークができにくい強い血管になれる

 血管のケアを始めるにあたって、まず、血管の構造や働きを理解しておきましょう。
 心臓から押し出された血液は、大動脈を通って全身の毛細血管にまで送られます。大動脈は、直径25〜30mmでビニールホースくらいの太さですが、ここから次々と枝分かれして、手や足の先の毛細血管に着くころには、直径0.006mmになります。

 毛細血管は、細胞に酸素や栄養を与え、細胞から排出される二酸化炭素や老廃物を回収します。毛細血管の先は細静脈になり、最終的に大静脈につながって血液を心臓に戻します。
 成人の血管は全長約10万km。血液は、この長大な距離を循環して酸素と栄養を運び、不要な物質を回収し、私たちの生命を守っているのです。

 血管の内部構造についても触れましょう。動脈は外膜、中膜、内膜の3層から成り、血管壁をつくり上げています。
 外膜は血管を守る保護層、中膜は血管の拡張と収縮にかかわる層、内膜は薄い線維成分と内皮細胞から成ります。

 血管を強くする決め手となるのが、この内皮細胞です。
 内皮細胞は、血管壁の最も内側にあり、血液と直接接触し、血流の速度、血液の粘度、血管壁の状態を監視しています。主な働きに、「バリア機能」と「活性化機能」があります。
 バリア機能は、血液中の悪い成分が血管壁に侵入するのを阻止しようとする働きです。バリア機能が正常に働いていると、プラークを形成する酸化LDLなどの悪者が、血管内壁に侵入しにくくなります。

 初期の動脈硬化であれば、プラークは小さく、血管の弾力性は保たれています。ある程度動脈硬化が進んでいても、バリア機能が回復されれば、血管内の傷が修復されて、プラークができにくい血管になるのです。

強い血管を作る3つのポイント

 一方の活性化機能は、血管の拡張を促したり、血液をサラサラに保ち、血管壁の細胞を保護したりする働きです。
 内皮細胞は、その時々の血流量に見合うよう、血管を拡張、収縮させるために、中膜の細胞に指令を送ります。
 血流量が増えたとき、血管が拡張せず細いままだと、心臓は強い力で血液を押し出し、血圧が上がってしまいます。そのような事態にならないよう、内皮細胞は血管のしなやかさを調整しているのです。

 体内の細胞は、古くなった細胞が新しい細胞に入れ替わる「ターンオーバー」という新陳代謝をくり返していますが、内皮細胞のターンオーバー周期は、約1000日です。
 今、あなたの血管が疲れ果てていたとしても、血管のケアを行えば、3年弱で元気な内皮細胞に入れ替わります。そして、強い血管に再生することができるのです。

 内皮細胞をよみがえらせるポイントは、次の三つです。
 まず、内皮細胞を傷める要因を減らすこと。内皮細胞を傷つける活性酸素の害を減らすために、抗酸化成分の多い野菜、大豆などの食品を積極的に取りましょう。

 次に、血圧を上げる要因を取り除くこと。血圧が高いと、内皮細胞を傷めつけます。血圧を上げる主な要因は、塩分の取り過ぎと、肥満です。できる限り減塩をすることが大切です。

 そしてもう一つは、血流がよくなる環境をつくること。血流をよくするには、食事はもちろんですが運動も不可欠です。適度な運動を継続することで、内皮細胞がよい刺激を受け、血管内を血液がスムーズに流れることができるのです。

血管のしくみと内皮細胞の働き

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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