【医師解説】夜間頻尿を改善し「隠れ心不全」まで防ぐゴキブリ体操

【医師解説】夜間頻尿を改善し「隠れ心不全」まで防ぐゴキブリ体操

高齢者の夜間頻尿ですが、実はその原因の多くが、日中の「水の飲み過ぎ」によるものなのです。年を取ると、唾液の分泌が減ってのどが渇きやすくなり、脱水症状を恐れて必要以上に水を飲む高齢者が増えて、それが夜間の頻繁な排尿につながっている、というわけです。【解説】菅谷公男(北上中央病院副院長・日本排尿機能学会理事)


始めたその晩からトイレの回数が減る

 毎晩、睡眠中に何度もトイレに起きるのは、本人にとってはとてもつらいことです。
 夜間頻尿は、年齢が上がるにつれて、悩んでいる人が増加する傾向にあります。海外の研究機関が先進各国の高齢者にアンケートを取った結果でも、日ごろ「つらい」と感じる症状の第1位が、この夜間頻尿なので
す。

 また、スウェーデンの研究機関が行った調査では、夜間頻尿のある人は、それがない人に比べて、心筋梗塞や脳梗塞(心臓や脳の血管が詰まって起こる病気)にかかりやすく、生存率が低いこともわかっています。
 私も、泌尿器科の医師として、夜間頻尿の患者さんを多く診てきましたが、確かに血管疾患を抱えている例が少なくありません。

 そんな高齢者の夜間頻尿ですが、実はその原因の多くが、日中の「水の飲み過ぎ」によるものなのです。
 年を取ると、唾液の分泌が減ってのどが渇きやすくなり、脱水症状を恐れて必要以上に水を飲む高齢者が増えて、それが夜間の頻繁な排尿につながっている、というわけです。

 残りの原因としては、さまざまなケースが考えられますが、一つは、年齢とともに血管から血液中の水分がもれやすくなることで浮腫(むくみ)ができ、それが体内水分量の増加を招き、結果として尿量の増加を促進しているケースです。加齢により、メラトニンという睡眠ホルモンの分泌が低下し、目が覚めやすくなっているという実態もあります。

 高血圧も、夜間頻尿に影響しています。高血圧の中でも、早朝や夜間に血圧が上がるタイプの人は要注意です。就寝中でも血圧が上昇するときには、カテコラミンという神経伝達物質の分泌量が上昇していますが、この物質が尿意を促進するために、これが夜間頻尿につながっているわけです。

 また、冒頭でも触れたとおり、自覚症状のない「隠れ心臓病」が夜間頻尿を引き起こしている場合もあります。
 心不全になると、日中は血液が心臓へ戻りづらくなり、心臓に負担がかかります。すると、心臓が少しでも血液を減らそうとし、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)という利尿ホルモンを分泌するため、夜間の尿量が増えるのです。

 このように、さまざまな原因が絡む夜間頻尿ですが、まずは患者さんに、水分の取り過ぎを見直してもらうことから治療は始まります。それでも改善しない場合は、利尿作用(尿の出をよくする働き)のある薬剤や、頻尿治療薬を飲んでもらう、という流れです。
 そして最近では、この夜間頻尿のセルフケアとして、自宅で行える簡単な体操を勧めるようにしています。それが、「ゴキブリ体操」です。

 ゴキブリ体操は、あおむけに寝て、手足を上に上げて微振動させるものですが、高齢者になると、なかなか足が上がらないものです。その場合は、壁やイス、クッションなどを使って足を上げる姿勢をするだけでも構いません。

 夜間頻尿の患者さんの中には「こんなものでよくなるのか」と、半信半疑な顔をされる人も多いですが、これまでに勧めた多くの患者さんが、始めたその晩からトイレに起きる回数が減った、と言っています。
 確実に効果を得るためには、就寝する3~4時間前にゴキブリ体操を行ってください。できれば、「足上げ姿勢」を30分以上続けるのが理想的です。苦痛のない範囲で、両足をなるべく高く上げるのもポイントです。

 足を心臓より高く上げる姿勢を取ることを習慣にすると、日中、足にたまった水分を、体のほかの部位にまんべんなく分散させることができます。

 一度、その状態にしてから就寝すれば、滞っていた血液が心臓に一気に戻ることはなくなり、夜間に尿が必要以上に作られることがなくなります。睡眠中に何度も排尿で目が覚めることが減少するわけです。

 また、ゴキブリ体操による足上げ姿勢は、夜間就寝中の心臓への負担を減らすため、「隠れ心臓病」による心不全の防止にも一定の効果を期待できるでしょう。
 実は現在、夜間頻尿に対するゴキブリ体操の効果を確認するために、私が研究の責任者になって、沖縄の3病院と京都の病院で、臨床試験を始めているところです。

 ゴキブリ体操は、夜間頻尿でつらい思いをされている人はもちろん、心臓への負担が心配な人も、ぜひ試されてみることをお勧めします。

ゴキブリ体操のやり方はこちら

菅谷公男
1981年、筑波大学医学専門学群卒業。筑波大学附属病院、秋田大学医学部、旭川医科大学、ピッツバーグ大学医学部客員助教授、琉球大学医学部准教授を経て、2009年より現職。尿の出の悪さ、頻尿や尿もれ、膀胱の痛みといった排尿障害の治療が専門。テレビ『ためしてガッテン』(NHK総合)などで活躍中。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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