MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
【医師解説】夜間頻尿を改善し「隠れ心不全」まで防ぐゴキブリ体操

【医師解説】夜間頻尿を改善し「隠れ心不全」まで防ぐゴキブリ体操

高齢者の夜間頻尿ですが、実はその原因の多くが、日中の「水の飲み過ぎ」によるものなのです。年を取ると、唾液の分泌が減ってのどが渇きやすくなり、脱水症状を恐れて必要以上に水を飲む高齢者が増えて、それが夜間の頻繁な排尿につながっている、というわけです。【解説】菅谷公男(北上中央病院副院長・日本排尿機能学会理事)

解説者のプロフィール

菅谷公男
1981年、筑波大学医学専門学群卒業。筑波大学附属病院、秋田大学医学部、旭川医科大学、ピッツバーグ大学医学部客員助教授、琉球大学医学部准教授を経て、2009年より現職。尿の出の悪さ、頻尿や尿もれ、膀胱の痛みといった排尿障害の治療が専門。テレビ『ためしてガッテン』(NHK総合)などで活躍中。

夜間頻尿は、高齢者の悩み第1位

 毎晩、睡眠中に何度もトイレに起きるのは、本人にとってはとてもつらいことです。
 夜間頻尿は、年齢が上がるにつれて、悩んでいる人が増加する傾向にあります。海外の研究機関が先進各国の高齢者にアンケートを取った結果でも、日ごろ「つらい」と感じる症状の第1位が、この夜間頻尿なので
す。

 また、スウェーデンの研究機関が行った調査では、夜間頻尿のある人は、それがない人に比べて、心筋梗塞や脳梗塞(心臓や脳の血管が詰まって起こる病気)にかかりやすく、生存率が低いこともわかっています。
 私も、泌尿器科の医師として、夜間頻尿の患者さんを多く診てきましたが、確かに血管疾患を抱えている例が少なくありません。

夜間頻尿の原因

 そんな高齢者の夜間頻尿ですが、実はその原因の多くが、日中の「水の飲み過ぎ」によるものなのです。
 年を取ると、唾液の分泌が減ってのどが渇きやすくなり、脱水症状を恐れて必要以上に水を飲む高齢者が増えて、それが夜間の頻繁な排尿につながっている、というわけです。

 残りの原因としては、さまざまなケースが考えられますが、一つは、年齢とともに血管から血液中の水分がもれやすくなることで浮腫(むくみ)ができ、それが体内水分量の増加を招き、結果として尿量の増加を促進しているケースです。加齢により、メラトニンという睡眠ホルモンの分泌が低下し、目が覚めやすくなっているという実態もあります。

 高血圧も、夜間頻尿に影響しています。高血圧の中でも、早朝や夜間に血圧が上がるタイプの人は要注意です。就寝中でも血圧が上昇するときには、カテコラミンという神経伝達物質の分泌量が上昇していますが、この物質が尿意を促進するために、これが夜間頻尿につながっているわけです。

 また、冒頭でも触れたとおり、自覚症状のない「隠れ心臓病」が夜間頻尿を引き起こしている場合もあります。
 心不全になると、日中は血液が心臓へ戻りづらくなり、心臓に負担がかかります。すると、心臓が少しでも血液を減らそうとし、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)という利尿ホルモンを分泌するため、夜間の尿量が増えるのです。

夜間頻尿の治療について

 このように、さまざまな原因が絡む夜間頻尿ですが、まずは患者さんに、水分の取り過ぎを見直してもらうことから治療は始まります。それでも改善しない場合は、利尿作用(尿の出をよくする働き)のある薬剤や、頻尿治療薬を飲んでもらう、という流れです。
 そして最近では、この夜間頻尿のセルフケアとして、自宅で行える簡単な体操を勧めるようにしています。それが、「ゴキブリ体操」です。

 ゴキブリ体操は、あおむけに寝て、手足を上に上げて微振動させるものですが、高齢者になると、なかなか足が上がらないものです。その場合は、壁やイス、クッションなどを使って足を上げる姿勢をするだけでも構いません。

ゴキブリ体操の効果について

 夜間頻尿の患者さんの中には「こんなものでよくなるのか」と、半信半疑な顔をされる人も多いですが、これまでに勧めた多くの患者さんが、始めたその晩からトイレに起きる回数が減った、と言っています。
 確実に効果を得るためには、就寝する3~4時間前にゴキブリ体操を行ってください。できれば、「足上げ姿勢」を30分以上続けるのが理想的です。苦痛のない範囲で、両足をなるべく高く上げるのもポイントです。

 足を心臓より高く上げる姿勢を取ることを習慣にすると、日中、足にたまった水分を、体のほかの部位にまんべんなく分散させることができます。

 一度、その状態にしてから就寝すれば、滞っていた血液が心臓に一気に戻ることはなくなり、夜間に尿が必要以上に作られることがなくなります。睡眠中に何度も排尿で目が覚めることが減少するわけです。

 また、ゴキブリ体操による足上げ姿勢は、夜間就寝中の心臓への負担を減らすため、「隠れ心臓病」による心不全の防止にも一定の効果を期待できるでしょう。
 実は現在、夜間頻尿に対するゴキブリ体操の効果を確認するために、私が研究の責任者になって、沖縄の3病院と京都の病院で、臨床試験を始めているところです。

 ゴキブリ体操は、夜間頻尿でつらい思いをされている人はもちろん、心臓への負担が心配な人も、ぜひ試されてみることをお勧めします。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

関連記事
骨盤底筋を鍛えるための体操は、現在多くの医療機関で推奨されています。しかし、やり方をプリントされた紙を渡されるだけなど、わかりずらく続けにくい場合がほとんどです。そこでお勧めしたいのが、おしぼり状に巻いたタオルを使った「骨盤タオル体操」です。【解説】成島雅博(名鉄病院泌尿器科部長)
更新: 2019-04-22 18:00:00
足の甲に包帯を巻いて2~3日後には、足がむくまなくなりました。以前のように、足がむくんで靴が痛いということもありません。むくみが解消したおかげか、明け方に尿意を感じて目が覚めることがなくなりました。そのため、従来どおり、熟睡するリズムが戻ったのです。【体験談】上田雅代(仮名・看護師・57歳)
更新: 2018-12-27 18:00:00
効果はすぐに実感しました。食べ始めて2~3日で、夜のトイレの回数が2回に、1~2週間で1回に減ったのです。この変化には、自分でも驚きました。私は、毎朝職場で重機をチェックし、点検表をつけています。今は、老眼鏡を使うのは薄暗い曇りの日だけで、晴れた日は老眼鏡を使っていません。【体験談】佐藤徳雄(重機オペレーター・71歳)
更新: 2018-12-12 18:00:00
足の甲にある「抜け道血管」も、足の冷えやむくみ、夜間頻尿の原因となります。正式には「動静脈瘻」といい、解剖学の教科書にも記載されている血管です。本来なら指先の毛細血管まで流れていくはずの動脈血が、抜け道血管を通って静脈に流れ込むと、足先は血流不足になって冷えてしまいます。【解説】佐藤達朗(サトウ血管外科クリニック院長)
更新: 2018-11-30 18:00:00
夜間頻尿が1回減ると、睡眠時間は2時間延びるといわれています。塩分過多の人は、減塩するだけで、睡眠の質が大幅に改善するわけです。夜間頻尿の患者さんに、自分でできる対処法として、減塩といっしょにお勧めしているのが、昼間に行う「かかと落とし」です。【解説】松尾朋博(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器科学助教)
更新: 2018-11-21 17:00:00
最新記事
「腰が痛い!」幅広い年齢層に蔓延する腰痛。しかし、病院に駆け込んで、骨や神経に異常が見つからない場合は「非特異的腰痛症」と診断されます。非特異的、つまり、原因不明の腰痛という意味。なんとも不思議な病名です。「腰が痛い」という異常があるから病院に来ているのに……。【解説】戸田佳孝(戸田リウマチ科クリニック院長)
更新: 2019-05-24 18:00:00
これまで、疲労が起きるのは、「エネルギーがなくなるから」「疲労物質が筋肉にたまるから」と考えられてきました。しかし、最新の研究によって、疲労が起きるほんとうの理由は、「自律神経の中枢である、脳がサビつくから」ということが、わかっています。【解説】梶本修身(東京疲労・睡眠クリニック院長)
更新: 2019-05-23 18:00:00
私は、これまで40年以上、タマネギをはじめとする、ネギ属の機能性成分を研究してきました。そこでタマネギには、確かに血液をサラサラにする働きがあるということが明らかになったのです。【解説】西村弘行(北翔大学・北翔大学短期大学部学長/東海大学名誉教授)
更新: 2019-05-22 18:00:00
見たいものにピントを合わせる「目の調節力」は25歳を過ぎる頃からどんどん低下し、30代後半から近くが見えづらくなる老眼になってきます。目の疲れや調節力の低下を改善するためにお勧めなのが、目の周囲を温める「温熱療法」です。私は、温熱療法の効果を多くの実験で確認しています。【解説】高橋洋子(みたにアイクリニック院長)
更新: 2019-05-21 18:00:00
「脊柱管狭窄症」「椎間板ヘルニア」などの改善のために行われる従来の脊椎手術は体への負担が大きく、後遺症が生じることもあります。そうした中、後遺症をほとんど残さない、新たな手術法が注目されています。【解説】白石健(東京歯科大学市川総合病院整形外科教授)【取材】山本太郎(医療ジャーナリスト)
更新: 2019-05-20 18:00:00

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt