シンプルなスープはわが家の常備食

家族の食卓をあずかる主婦にとって、毎日の食事作りはシンプルに済ませたいもの。2年ほど前から私のお助け料理になったのが、野菜スープ(ファイトケミカルスープ)です。
私は「食の架け橋」という会で、生産者の顔が見える野菜や食材を紹介する、ボランティア活動をしています。会で主催した講演会に髙橋弘先生をお招きした際、先生が考案されたスープのお話を伺い、作るようになりました。
このスープの魅力は、レシピがいたってシンプルなこと。キャベツ、タマネギ、ニンジン、カボチャなど、材料は1年じゅう手に入るものばかりです。しかも、野菜を切って30分ほど煮込むだけで、体に優しい栄養満点なスープが出来上がります。
もともと、スープはわが家の常備食。20年以上、幼稚園の教員として働いてきた私にとって、帰宅してすぐに食卓に乗せられるスープは、とても便利な料理でした。
定番は鶏を丸ごと煮るスープです。鶏をほぐせばサラダや煮物にアレンジできますし、スープもいろいろな料理に応用できるので、夕食作りがとにかく楽なのです。
この鶏のスープ以上に魅力満載なのが、ファイトケミカルたっぷりの野菜スープです。健康に役立つファイトケミカルと、食物繊維をどっさり取ることができるうえに、応用範囲も広く、冷凍保存ができます。
私は1週間分、まとめて作って、楽をすることにしています。
調味料を入れなくても、「お砂糖が入っている?」と言われるほど、野菜の濃厚な甘味が溶け出しています。

ファイトケミカルスープを作る藤本さん。
この日のスープには、基本の野菜のほかに、ブロッコリーの軸が入っていました
薄味志向になり塩の消費量が激減
野菜そのものの味を楽しむようになって、味覚が変わったように思います。すっかり薄味志向になり、塩の消費量が激減し、小さな食卓塩のボトルで1年はゆうに持ちます。
スープを飲むのは、朝食のときが多いのですが、遅い夕食をあっさり済ませたいときにも200㎖くらい飲みます。
疲れたときなどは、お茶代わりにスープをがぶ飲みします。スープで体が温まってくると、すぐに疲れが取れて、活力をチャージすることができます。
このスープのおかげで、体のコンディションも変わりました。鼻とのどが弱い私は、17年間、毎年クリスマスにカゼを引き、耳鼻科通いをしていました。
ところが、このスープを飲むようになってから、カゼを引かなくなり、引いたとしても長引きません。以前はよくカゼを引くので、耳鼻科の先生からは、「あなたが来ないと、クリスマスが来た気がしない」と言われるくらいでした。
80代の両親もスープが大のお気に入り
仕事が忙しく外食が多い夫や子どもたちにも、このスープを食べてもらいたいのですが、「体にいいから食べて」と勧めると、押しつけがましくなってしまいます。
そこで、私は一計を案じました。「スープがあるから、飲まない?」と、夕食のときに、さりげなく出すようにするのです。家族のスープは塩コショウやコンソメなどで味つけをします。
カレーにスープを入れたり、牛のすね肉を入れたりすることもあります。野菜をつぶさずに取っておき、みそ汁の具にするのも好評です。いかに飽きさせないで食べさせるかも、大事なポイントでしょう。
ふだんの食事に、ちょこちょこ取り入れているので、みんな「またあのスープ」と気づかずに食べてしまいます。寒いときや疲れているときは、「お代わりある?」とリクエストされるので、家族もこのスープを気に入っているようです。
80代の父と母も、このスープは大のお気に入りです。毎朝、欠かさず飲んでいるせいか、高齢にもかかわらず、2人とも「疲れた」と口にしたことはありません。ファイトケミカルたっぷりの野菜スープは、両親の元気の素になっています。
健康とは、おいしいものを笑顔で食べられることではないでしょうか。体にいいとわかっていても、実行するのに手間がかかると続きません。手軽にできて、応用範囲が広いこのスープなら、ストレスはゼロ。気楽に続けることができます。髙橋先生にこのスープを教えていただいて、ほんとうにありがたいと思っています。
ファイトケミカル・ポタージュの作り方

解説者のプロフィール

藤本厚子(ふじもと・あつこ)
東京都生まれ。幼稚園教諭を経て、「食の安全と安心」をテーマに仲間とアツコアカデミーを立ち上げる。
産地の食材を使いプロの料理人が調理する食事会や、食の生産現場訪問、専門家を招いての講演会など「食の架け橋」として活動。
食材を選ぶ際には、生産地に赴いて自分たちで確認する”食の現地主義”をモットーとする。