解説者のプロフィール
これが玄米昆布スープだ(画像)

食生活を変えると中学生時代からひきずっていたアレルギー体質が改善した!
アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、ニキビに悩む患者に食事療法を勧めている
皮膚は外界に接しており、汚れや病原菌などがつきやすいところです。同じように腸も、口から肛門まで筒のように空洞になっており、その筒の内壁(腸壁)は外界に接しているといえます。そのため、食べ物や飲み物といっしょに、外からいろいろな異物が侵入してきます。
それを防ぐために、外界と接しているところでは必ず免疫組織が活発に働いて、関所の役目を果たしています。
免疫は、侵入してきた異物を識別し、体に不要なものや、害になるものを排除するシステムです。ところが、そこに狂いが生じると、体に必要なものや無害なものまで、過剰に攻撃してしまいます。その結果、かゆみや発疹、くしゃみ、鼻水など、さまざまな症状が現れます。これが、いわゆるアレルギーです。
このようにアレルギーは、腸と密接な関係があるのです。
私は中学生時代、毎年のように転校をくり返すうち、ストレスも大きかったのか、ひどいアレルギー性鼻炎になってしまいました。薬で症状をおさえてきましたが、思うように改善せず、大人になってもアレルギー体質をひきずっていました。
皮膚科医になり、皮膚と腸の関係や腸の大切さなどを知ってから、腸内環境を改善する食事を取り入れました。それは玄米、漬物、みそ汁という、日本人が、昔からとってきた食事です。
日本人が、肉や乳製品などの欧米食をとるようになったのは、たかだかここ50年ほどのことです。歴史をさかのぼれば、江戸時代以前は長い間、玄米、漬物、みそ汁が庶民の食事でした。それが自分の遺伝子に最もなじんでおり、腸の環境改善につながると考えたのです。
こうして食生活を変えたところ、アレルギー体質は改善し、体も丈夫になってきました。2000年にクリニックを開業してからは、体調が悪くて休んだことは一度もありません。
皮膚科医が自ら行う食事療法のポイント
この私の体験を踏まえて、私はアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、ニキビなどに悩んでいる患者さんに、希望があれば、私が行っている食事療法を勧めています。それは、次のようなものです。
① 玄米昆布スープを飲む
玄米は、完全栄養食です。それを炒って、昆布と水で炊くと、玄米のエキスがしっかり溶け込んだ、滋味豊かなスープが出来上がります。これを朝昼夕の3回に分け、1日500㎖ほど飲みます。
② ぬか漬けやみそ汁などの日本の発酵食品をとる
ぬか漬けなどの漬物やみそ汁を、長いこととってきた日本人の腸内細菌は、植物性の乳酸菌が主体です。しかも、その乳酸菌には個人差があります。
自分の腸にいる土着の菌をふやすには、なじみの深い日本の発酵食品が有効です。ヨーグルトに含まれている動物性乳酸菌では、あまり効果はありません。
③ 食事を腹8分めにする
人類の歴史の大半は飢餓の時代でしたから、遺伝子は、たくさん食べることに慣れていません。食べすぎると、消化不良を起こして腸に負担をかけるので要注意です。
私は、朝は玄米昆布スープと野菜ジュースに果物少々、昼はご飯軽く1膳に漬物とみそ汁。夕食は、好きなものを腹8分めにおさえてとります。
玄米昆布スープの作り方

便通がよくなり血圧も下がった!
こうした食事療法を実践されて、アトピー性皮膚炎、ニキビ、鼻炎、湿疹、じんましんなどが改善した患者さんが少なくありません。
長年アトピーに悩まされてきたAさん(53歳・女性)もその一人です。アトピーにじんましんを併発しており、便秘や高血圧もありました。一時はステロイドの内服薬を服用するほどアトピーの肌荒れがひどかったAさんですが、私が勧める食事に切り替え、腸内環境を整える健康食品を補助的にとったところ、4ヵ月で便通がよくなり、肌荒れも改善。
その後、血圧も下がって、アトピーの状態も良好です。安心のためにステロイド軟膏を処方していましたが、使う必要はなかったそうです。
知り合いの消化器科の医師が、「皮膚が汚い人は大腸も汚い」といっていましたが、確かにそうかもしれません。アトピーや肌荒れ、ニキビなどの患者さんは、便秘の人が多いのです。
皮膚と腸はつながっており、腸内環境を整えることは、便秘やアレルギー体質だけでなく、肌質の改善にもつながります。
ちなみに、Aさんがとっていた健康食品は、麹菌と乳酸菌を用いて大豆を発酵させて作った麹菌・乳酸菌生産物質というものです。麹菌や乳酸菌が腸の中で産生する物質なので、その人の腸内にもともといる土着の乳酸菌をふやしてくれます。
しかし、食事を変えるだけでも、腸内環境は変わります。それができにくい人は、こうした健康食品の助けを借りるといいでしょう。
関 太輔
1955年生まれ。83年、富山大学(旧富山医科薬科大学)医学部卒業。同年、同大学皮膚科入局。同大学皮膚科助手、講師、96~97年の米国カリフォルニア大学を経て、2000年に富山市にセキひふ科クリニックを開業。09年から富山大学医学部臨床教授。