内科医の職業病 「聴診器難聴」が解消!
私が耳鳴りに悩まされるようになったのは、40代に入ったころでした。内科医である私のもとには、毎日多くの患者さんが訪れます。1日に何十人もの胸に、聴診器を当てて、心音に耳を澄ますわけです。
これを長年続けていると、耳の聴こえが悪くなってきます。いわゆる「聴診器難聴」です。内科医の職業病といってもいいでしょう。私の場合、始終耳鳴りがしているわけではありませんが、ふと気づくと、ビーンという音が聴こえるようになってしまいました。
一般的にいって、耳鳴りというのは、非常に対処の難しい病気です。耳鳴りの原因はさまざまで、耳あかが詰まって起こるものや、中耳炎によるものもあります。
それでも、原因が特定できる場合は、まだよいのです。根本の原因を治療すれば、耳鳴りもよくなるのですから。しかし、困ったことに、中高年以降に始まる耳鳴りは、調べても原因がわからないことが大半です。
そうなると、耳鼻科でも明確な対処のしようがありません。気休め程度に、ビタミン剤などが処方されますが、なかなかよくならないのです。私自身の耳鳴りは、耳の酷使や疲労によるもので、治りにくいタイプの耳鳴りだと考えられました。
そこで、自分なりに対策を取ることにしました。いろいろと検討した結果、私が選んだのが、クルミです。
といっても、クルミを毎日2〜3片食べるだけです。夕食時に、ビールを飲みながら、つまみの一つにするのです。これを続けていたところ、耳鳴りはしだいに治まり、いつしか解消していました。
それ以来、40年近く、毎日クルミを食べ続けています。おかげでこれまで、耳鳴りが再発したことはありません。
オメガ3脂肪酸が血行改善に効果を発揮
なぜ、クルミが耳鳴り解消に効くのでしょうか。これは、東洋医学、西洋医学の両面から説明が可能です。
まず、東洋医学的には、耳鳴りの原因は、「水毒」や「血毒」、つまり血や水の巡りの悪さにあるとされます。
とりわけ、耳の病気は、水分の滞りと関連が深く、体内の余分な水が頭に上がってくるために、耳鳴りやめまいが生じると考えられています。
そこで、体内の代謝をよくして、余った水分を排出することが大事になってくるわけです。
クルミをはじめとするナッツ類は、利尿作用に優れており、この水毒を解消する効果が高いといわれています。クルミを毎日食べて、余分な水分の排出を促したことが、私の症状の改善につながったのでしょう。
一方、西洋医学的に考えると、注目すべきは、クルミに含まれるα-リノレン酸の働きです。
α-リノレン酸は、私たちの体になくてはならない必須脂肪酸です。その中の、オメガ3脂肪酸に分類されます。
近年、オメガ3脂肪酸の効能については注目が集まり、テレビや雑誌などでも、たびたび取り上げられています。皆さんも、この名前をどこかで耳にしたことがあるでしょう。
オメガ3脂肪酸は、血中の脂質濃度を下げる働きがあり、血流を改善します。動脈硬化や心臓病、脳卒中、糖尿病や高血圧、高脂血症などの、生活習慣病の予防に役立つとされています。
オメガ3脂肪酸の中では、青魚に含まれるエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸が知られていますが、α-リノレン酸は、それらの前駆体(生成される前段階)でもあり、オメガ3脂肪酸を代表する存在です。
このα - リノレン酸を非常に多く含んでいる食品が、クルミなのです。可食部100g中に、およそ9gのα-リノレン酸を含みます。これは全食品中、エゴマと並ぶトップクラスの含有量になります。
クルミにはほかにも、やはり血流を促進するビタミンEやビタミンB群などが含まれます。これらとα-リノレン酸が相乗して、血行改善に効果を発揮しているとも考えられるでしょう。
けっきょく、東洋医学、西洋医学、いずれの見地からしても、耳周辺の「巡り」をよくすることが、耳鳴りの改善につながる。それには、クルミが大変有効だというわけです。
クルミはその栄養成分からして、多くの健康効果が見込まれる優良食品です。ただし、エネルギー量が高めですから、食べすぎないように。1日2〜3片を目安にするといいでしょう。
私は、老人クラブの仲間たちにも、クルミを食べることを勧めています。効果を聞くと、やはり耳鳴りが改善したという声があります。食べると体調がよくなる、元気が出てくると、大変好評です。
耳鳴りに悩むかたはもちろん、そうでないかたも健康維持のため、食生活にクルミを取り入れてはいかがでしょうか。

クルミは耳周辺の「巡り」をよくする優良食品!
仲間にもクルミを勧める小川先生