【9割は手術不要】腰椎椎間板ヘルニアの治し方 治療せずとも3ヵ月で自然治癒

【9割は手術不要】腰椎椎間板ヘルニアの治し方 治療せずとも3ヵ月で自然治癒

今は腰椎椎間板ヘルニアに対して、よほどの場合を除き、できる限り手術は行わないようになってきています。「椎間板ヘルニアの多くは数ヵ月程度で自然に縮小、消失する」と明らかになったからです。【解説】大谷晃司(福島県立医科大学医療人育成・支援センター 兼 整形外科准教授)


マクロファージがヘルニアを食べる!

 腰痛の原因の一つに、腰椎椎間板ヘルニアがあります。

 背骨を構成する骨(椎骨)の間には、クッションの役割を果たす椎間板という軟骨があります。椎間板は、外側に厚い袋状の線維輪という組織があり、その内部にゼリー状の髄核という物質が入っています。
 椎間板がつぶれ、線維輪の一部が膨らんだり、髄核が線維輪を突き破って飛び出したりした状態が椎間板ヘルニア。ヘルニアが背骨の内側を通る神経を圧迫したり、炎症を起こしたりして、腰痛、下肢(足)のしびれやマヒなどの症状が現れます。

 かつては、腰椎椎間板ヘルニアに対して、手術が行われることも少なくありませんでした。しかし今は、よほどの場合を除き、できる限り手術は行わないようになってきています。
 近年、「椎間板ヘルニアの多くは数ヵ月程度で自然に縮小、消失する」と明らかになったからです。これは、免疫細胞の一種であるマクロファージ(貪食細胞)が、飛び出したヘルニアを食べてくれるためです。

 ただ、ヘルニアの起こり方によって、マクロファージが働きやすいものと、そうでないものがあります。マクロファージが働きやすいのは、ヘルニアの飛び出し方が大きく、椎間板の後方を走る後縦靭帯を突き破っているもの。重症のように思えるヘルニアのほうが、実は治りやすいのです。

「自然に治る」と大谷先生

3ヵ月以内に小さくなる!

 後縦靭帯を突き破った髄核の周囲には血管が新生し、その血管からマクロファージが髄核に集まり、飛び出した髄核を異物と認め、食べ始めます。
 免疫細胞は通常、「自己」(自分自身の本来の細胞など)と「非自己」(体の外から入ってきた細菌やウイルスなどの異物)を区別し、非自己だけを攻撃します。もともと体内にあった髄核が「非自己」と見なされるのが不思議ですが、その理由はこう考えられています。

 胎児のとき、背骨ができるより前に体を支えている「脊索」という組織があります。成長過程で退化し、背骨に置き換わっていきますが、実は、髄核はこの脊索のなごりです。つまり、髄核は免疫システムが完成する前から体内にあったのですが、その後は椎間板の中に収まっていたために、免疫細胞にとっては「知らない顔=非自己」と見なされる、というわけです。

 こうしたマクロファージの働きによって、7〜9割の患者さんのヘルニアが、3〜6ヵ月以内に小さくなることが確認されています。仮にヘルニアが小さくならなくても、周辺の炎症が治まることによって、症状が改善する患者さんも多くいます。

 ですから、症状が痛みだけなら、痛み止めや装具(コルセット)などの保存療法で「痛む時期」さえしのげば、腰椎椎間板ヘルニアは自然に治るといっていいのです。実際、約3ヵ月の保存療法で患者さんの9割は症状が改善します。

 腰椎椎間板ヘルニアで手術を検討するのは、「3ヵ月ほど保存療法を行っても効果がない」「しびれやマヒなどの神経症状が進んでいる」「排尿障害がある」「患者さん自身が強く要望している(早急に症状を取りたい)」といった場合に限られるでしょう。
 主に行われている手術は「後方椎間板摘出術」です。背中の皮膚を切開し、椎弓(椎骨の後方部)の一部を削って、神経を圧迫している髄核を摘出するものです。通常、前後1週間ほどの入院を要します。

 手術で約9割の患者さんは痛みが改善しますが、すべての痛みが完全に取れるわけではありません。飛び出したヘルニアを摘出することはできても、ひびの入った椎間板を治すことはできないため、1割前後の率で再発が起こるといわれます。

 手術のメリットとデメリットについて担当医とよく話し合って、納得した上で手術を受けることが大切です。
 おそらく数年以内に、ヘルニアが薬で治せるようになると期待されています。現在、マクロファージの活性を高めてヘルニアの吸収を早くする薬や、ヘルニアそのものを分解する薬の開発研究が進んでいるからです。

【関連記事】名医が教える腰痛改善「これだけ体操」

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


【体験談】椎間板ヘルニアの痛みとしびれが「足指歩き」で改善!血圧も下がった

【体験談】椎間板ヘルニアの痛みとしびれが「足指歩き」で改善!血圧も下がった

篠原先生からは、まずは立つときの姿勢の指導を受けました。足の指に力を入れ、重心を前に置くと、少し体が前傾します。普段からこの姿勢を意識するといいそうです。驚いたのが、この姿勢をとると、腰の痛みが一瞬で和らぐことです。思わず「たったこれだけで痛くない!」と叫んでしまったほどでした。【体験談】高橋泉美(仮名・店員・48歳)


【原因は猫背】姿勢の悪さが腰痛、めまい、うつ、脳梗塞をも招くと医師解説

【原因は猫背】姿勢の悪さが腰痛、めまい、うつ、脳梗塞をも招くと医師解説

よい姿勢とは、健康状態のバロメーターです。反対にネコ背は、あなたが想像する以上に、体全体に悪影響を及ぼします。ネコ背の悪影響として、最初に思い浮かべるのは見た目の悪さではないでしょうか。よい姿勢は、見た目の印象はもちろん、あなたの健康状態も左右するのです。【解説】平泉裕(昭和大学医学部整形外科学講座客員教授)


【椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症】腰痛原因は脳の「圧迫ストレス」?脳脊髄液を流して改善できる呼吸法

【椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症】腰痛原因は脳の「圧迫ストレス」?脳脊髄液を流して改善できる呼吸法

私は、50年以上にわたる治療家人生で、幾種もの治療法を学び、研究してきました。そしてわかったのは、脳脊髄液の循環をよくすることで、腰痛などのつらい症状や、多くの病気が改善するということです。【解説】宮野博隆(ミヤノ・ヒーリング・ラボ院長・鍼灸師)


【頚椎体操(3)】首の痛み、腕のしびれを取る「首伸ばし」

【頚椎体操(3)】首の痛み、腕のしびれを取る「首伸ばし」

首伸ばしは、頭を下げて首に力を入れなくてよい体勢で行います。頭の重さを取り去って行うので、効果が得やすくなります。そして、自分の頭の重さを利用して頸椎の間を自然に広げたあと、自分の手で無理のない範囲にそっと頭を押して、さらに広げます。【解説】竹谷内康修(竹谷内医院カイロプラクティックセンター院長)


【名医】頚椎症性脊髄症・椎間板ヘルニアの手術 タイミングとリスクについて

【名医】頚椎症性脊髄症・椎間板ヘルニアの手術 タイミングとリスクについて

手術を絶対にしなければいけない状態を黒、手術がまったく必要のない状態を白とします。黒と白の間のグレーの状態、つまり、手術を行ってもよいけれど、必ずしも必要ではないという医学的状態がとても多いのです。【解説】竹谷内康修(竹谷内医院カイロプラクティックセンター院長)


最新の投稿


【脳の活性化効果】脳の血流がアップ「ニンニク油」基本の作り方

【脳の活性化効果】脳の血流がアップ「ニンニク油」基本の作り方

脳の血流を上げるニンニク油は、ニンニクとオリーブ油だけで作れます。ここで紹介する量と手順で作れば、食べたあとニンニクのにおいはほとんど気になりません。脳の働きがよくなり、勉強の効果アップにも! ぜひお試しください。【監修】篠浦伸禎(都立駒込病院脳神経外科部長)【料理】古澤靖子


【脳を活性化】認知症・物忘れを予防する「ニンニク油」の活用レシピ5

【脳を活性化】認知症・物忘れを予防する「ニンニク油」の活用レシピ5

ニンニク油の有効成分であるアホエンは、直接、火にかけるなどで高温になると壊れてしまいます。ここで紹介するレシピは、どれもおいしくて、アホエンがしっかりとれる料理です。ニンニク油の風味を堪能しましょう。【監修】篠浦伸禎(都立駒込病院脳神経外科部長)【料理・レシピ考案・スタイリング】古澤靖子


【認知症・物忘れを改善】ニンニク油で脳を活性化すると脳外科医が太鼓判

【認知症・物忘れを改善】ニンニク油で脳を活性化すると脳外科医が太鼓判

ニンニク油は、脳の健康維持や生活習慣病の予防など、さまざまな効果を期待できるすぐれた食品です。ニンニクとオリーブオイルだけで手作りできるので、安価で手軽に続けられます。患者さんにお勧めしたところ、頭痛、めまい、高血圧などが改善した例が少なくありません。【解説】篠浦伸禎(都立駒込病院脳神経外科部長)


【視力回復】朝3分の眼球運動で集中力・運動能力・成績がアップできる

【視力回復】朝3分の眼球運動で集中力・運動能力・成績がアップできる

目のトレーニングというと、どうしても「アスリートでもない私には関係ない」と受け取られがちです。勉強やスポーツが苦手な子ども、忙しいお母さん、働き盛りの社会人、目の衰えが気になる中高年など、一般のかたにこそ、ぜひやっていただきたいトレーニングなのです。【解説】飯田覚士(日本視覚能力トレーニング協会 代表理事)


【視力回復】プロボクサー村田諒太選手も実践!「眼球運動」のやり方

【視力回復】プロボクサー村田諒太選手も実践!「眼球運動」のやり方

顔は動かさずに、目だけを右、左、右、左……。朝3分の「眼球運動(目の体操)」をすると、日常生活のさまざまな場面でその効果を期待できます。プロボクサー村田諒太選手の目のトレーニングも指導する飯田覚士さんが提案! 人生を変える「朝の新習慣」です。【解説】飯田覚士(日本視覚能力トレーニング協会 代表理事)