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【良い医者の見分け方】見極め方と条件を名医が解説 ポイントは薬の出し方

【良い医者の見分け方】見極め方と条件を名医が解説 ポイントは薬の出し方

日本では、医師にむやみに依存する風潮がいまだに残っています。「先生の診断だから」「先生のくださったお薬だから」と、医師のいいなりになっている人が多いようですが、これでは自分の健康を守れません。どのように「良い医師」を見分ければよいか、その極意をお伝えします。【解説】大櫛陽一(東海大学名誉教授 )

研究資金とデータ分析 能力の不足が2大原因

 製薬会社ノバルティスファーマ(以下、ノバルティス)の高血圧治療薬ディオバン(一般名・バルサルタン)の臨床研究の論文不正問題が、新聞などで取り上げられました。製薬会社の社員によって、データが不正に操作、捏造されていた事件です。
 事件の原因は、いうまでもなく製薬会社の営利第一主義ですが、もう一つ、日本の研究体制の不備が挙げられます。日本の医師は、臨床研究のための被験者を集める資金力も、研究データの統計・分析を行う能力も不足しています。
 このため、医師は自分の研究を進めるために、研究の準備や分析を、企業に丸投げしてしまうのです。これが、今回のような事件を引き起こす温床となっています。

 2004年に、ヨーロッパでは臨床試験の方法が厳格に決められました。また、米国では、政府の委員選出や論文の投稿には、製薬会社との経済的関係の開示が義務づけられました。
 日本でも10年遅れで、製薬会社による自主的な開示が始まりましたが、医師の個人名が公表されないなど、ふじゅうぶんな状態が続き、政府による規制も遅れています。
 こうした日本の現状では、今回の事件が、「氷山の一角」といわれてもしかたありません。ノバルティスだけではなく、ほかの会社やコレステロール低下薬などの薬にも、同じような捏造の可能性が指摘されています。医師や製薬会社に対する国民の信頼が、大きく損なわれたことは間違いありません。

 実際、「ディオバンを処方されたが、大丈夫か?」「自分の服用している薬は、科学的データがあるのか?」と不安になっている患者さんがいると思います。また、現在、薬を飲んでいなくても、将来、医師から降圧剤を勧められることがあるかもしれません。そのとき、どうすればいいでしょうか。
 日本では、医師にむやみに依存する風潮がいまだに残っています。「先生の診断だから」「先生のくださったお薬だから」と、医師のいいなりになっている人が多いようですが、これでは自分の健康を守れません。

 忙しさにかまけて、最新の医学情報(多くは英語の論文)を勉強せず、製薬会社の営業マンからの情報だけに頼っている医師も多いのです。

薬と病気の知識を深め よい医師を見分けよ!

不安や疑問は医師に相談しよう!

 ですから、薬についても医師のいいなりではなく、自分で調べましょう。薬を調べる方法として最も有効なのは、「医薬品添付文書」を読むことです。
 医薬品添付文書は、医薬品への添付が法律で義務づけられているので、薬局にはすべての薬の医薬品添付文書があるはずです。
 しかし、A4判で数ページにわたる文書なので、患者さんにはそのまま渡されません。効能と簡単な注意事項を抜粋した紙(医薬品情報提供書)を、薬といっしょに渡すくらいです。

 医薬品添付文書は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構のインターネットのサイトで閲覧・印刷ができます。
 インターネットを見られない人は、家族や知人に頼むか、公共図書館のパソコンを使うなどするといいでしょう。
 例えば、降圧剤ディオバンの医薬品添付文書の「効果または効能」には、高血圧症しか書かれていません。製薬会社が宣伝していた脳卒中などの病気は、書かれていないのです。

 医薬品添付文書には、服薬についての注意や警告、副作用なども記載されています。ほぼすべての降圧剤の医薬品添付文書には、「高齢者では過度の降圧で脳梗塞が起こる」ので、「慎重投与」と書かれています。
 慎重投与とはかなり強い警告で、緊急でやむをえない必要性がある場合にだけ、処方すべきという意味です。しかし、厚労省の調査で、降圧剤は高齢者ほど多く投与され、70歳代では約50%の人が服用しています。

 薬を処方されたら、まず医薬品添付文書を入手し、熟読してください。薬は体に有用である反面、多くの副作用をもたらす「毒」の面もあることがわかります。口に入れる前に、内容を理解しておくべきでしょう。
 また、副作用を事前に知っておけば、症状が起こったときに早く気づくことができます。
 疑問や不安があったら、薬を処方した医師に、「医薬品添付文書にこう書いてあったが、大丈夫か」と聞いてみましょう。誠実に答えなかったり、「医薬品添付文書を読んでいないのでは?」と思われる反応だったりしたら、別の医師を探すことをお勧めします。

 医薬品添付文書の件だけに限りません。患者に対し、どれだけ真剣に耳を傾けるかが、よい医師とよくない医師を見分ける指標となります。
 医師免許は、一度取得すると、免許更新の試験が一生ありません。よほどのことがない限り、不勉強でも医師を続けられるのです。そのため、医学知識が学生時代からあまり進歩していない医師も存在します。

 患者は病気の体験者ですから、医師にとっては教師です。それなのに、患者のいうことに聞く耳を持たない医師は、勉強嫌いと思っていいでしょう。
 最も大事なのは、「自分が苦しんでいる病気については、担当医よりも自分のほうが詳しい」と自覚することです。
「何を信じたらいいか、わからない」という今、自分でできることをやるしかありません。薬と病気についての知識を深め、よい医師を見きわめること。それが、自分の健康を守っていくために欠かせないのです。

自分の健康を守るには、自らが薬や病気についての知識を深めることが大切

解説者のプロフィール

大櫛陽一
1971年、大阪大学大学院工学研究科修了。1988年より東海大学医学部教授。2006年、日本総合検診医学会シンポジウムで、全国約70万人の健診結果から、日本初の男女別・年齢別基準範囲を発表。2012年東海大学を定年退職し、現在は名誉教授。
主な著書に『間違っていた糖尿病治療―科学的根拠に基づく糖尿病の根本的治療』(医学芸術社)、『100歳まで長生きできるコレステロール革命』(永岡書店)などがある。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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