血圧を下げる筋トレ「血管の若返り筋トレ」とは
これからご紹介する「血管若返り筋トレ」は、当院の外来患者さんの「高血圧予防になる運動を指導してほしい」というご要望にお応えするために、島田和幸先生と一緒に考案、採用したものです。
これまで、入院患者さん向けの、いわゆる「リハビリ体操」はありましたが、外来の患者さんが希望するような体操はありませんでした。
そこで私たちは、血圧を上げる要因である、末梢の「血管抵抗」を減らす筋トレを考案することにしました。血管抵抗とは、「血液の流れにくさ」のことをいいます。
血液は、心臓から離れるほど流れにくくなります。手や足など体の末端に分布する、末梢血管へ血液を送るのは容易ではありません。加えて、動脈硬化が進むと血管の内径が細くなり、血液はさらに流れにくくなります。
こうなると心臓は血液を末端の組織に送るために、いっそう強い圧力をかけて血液を押し出すため、血圧が高くなってしまいます。
「血管若返り筋トレ」は、体を大きく動かし、末梢の筋肉をしっかり使うように構成してあります。この筋トレを行うと、筋肉の動きに刺激された毛細血管が拡張し、血管の抵抗が下がって血液が流れやすくなり、血圧が下がる効果が期待できます。
血管若返り筋トレは、四つのステップから成ります。いずれの動作も、運動負荷が低く、動きも単純なので、運動に慣れていない人でも取り組みやすいでしょう。どの筋トレも、体を末端まで大きく動かすことを意識しましょう。
運動を続けていくうちに、筋肉量が増え、それにつれて毛細血管も増えて、血液が流れるルートが増えるので、血圧を下げることにつながります。
「血管若返り筋トレ」のやり方
【腕ふり足踏み30秒】
全身の血流をアップさせる体操。バランスを保つ力を強化し、転倒を防止する。
◎使う筋肉
大腰筋・腸骨筋(上半身と下半身をつなぐ筋肉)、上腕三頭筋(腕の裏側の筋肉)、三角筋(肩を覆う筋肉)、背筋(背中の両側を覆う筋肉)、大臀筋(お尻にある筋肉)、腓腹筋(ふくらはぎの表層にある筋肉)、ヒラメ筋(ふくらはぎの深層にある筋肉)

❷右腕と左足を、床と平行の高さになるように上げる。1秒ほどその姿勢を保ち、元に戻す。

❸反対側も同様に行う。
※①〜③を30秒行う。
【ゆっくり腰かけ10回】
足の筋肉を鍛えるスクワット体操。血流を促しやすい体が作れる。イスを使うことで、ひざに負担をかけない。
◎使う筋肉
大腿四頭筋(太もも表側にある四つの筋肉の総称)、背筋(背中の両側を覆う筋肉)

❶背すじをしっかりと伸ばし、まっすぐ前方を見る。足は肩幅に開く。

❷背すじを伸ばしたまま、ゆっくりとイスに座る。腰を下ろすときは、かかと側に重心をかけるようにする。

❸座ったら、1秒ほど静止する。その後、再びゆっくりと立ち上がる。
※①〜③を10回くり返す。
【足の引き寄せ10回】
腹筋の強化と、背中のストレッチも兼ねた体操。両足を同時に上げることで、腹筋をしっかり使うことができる。
◎使う筋肉
腹筋(お腹の筋肉)

❶あお向けに寝て、ひざが90度の角度になるように足を立てる。手のひらは軽く開き、床につける。

❷おなかに力を入れながら、両足をゆっくりと胸に引き寄せる。そのまま1秒ほど静止し、ゆっくりと①の姿勢に戻る。
※①〜②を10回くり返す。
【バンザイ背泳ぎ10回】
全身の血流をよくする運動。末梢にたまりがちな血液を、体に負担をかけず、スムーズに全身に巡らせる。
◎使う筋肉
大腿四頭筋(太もも表側にある四つの筋肉の総称)大腰筋・腸骨筋(上半身と下半身をつなぐ筋肉)、腓腹筋(ふくらはぎの表層にある筋肉)、ヒラメ筋(ふくらはぎの深層にある筋肉)

❶体をまっすぐにして、あお向けに寝る。手のひらは軽く開き、床につける。

❷右手を、半円を描くようにゆっくりと頭の上へ伸ばす。同時に左足も伸ばしたままゆっくりと上げていく。

❸右手と左足をゆっくり下ろし、反対側(左手と右足)も同様に行う。
※左右を1セットとして、①〜③を10回くり返す。
解説者のプロフィール

金子操
自治医科大学附属病院リハビリテーションセンター室長・理学療法士・運動器専門理学療法士
❶背すじをしっかりと伸ばし、まっすぐ前方を見る。足は肩幅に開く。