かかとが冷たい人は腎の機能が衰えている
体の冷えと内臓には深い関係があり、冷えが体のどこに現れるかで、内臓の弱りがわかります。
体の冷えの中でも、足が冷たいと感じている人は多いでしょう。特にかかとが冷えている場合、腎の機能が衰えている可能性があります。なぜなら、かかとの内側には腎、外側には膀胱の経絡(「気」という生命エネルギーが流れるルート)が通っているからです。
東洋医学では、腎と膀胱は表裏の関係にあり、どちらも腎の機能に深くかかわっています。ここでいう腎は、西洋医学でいう腎臓よりも広い機能を持ちます。
腎は両親から受けついだ「先天の精」(生まれながらに持っている生命力)を宿すところで、成長や生殖をつかさどっています。つまり、生命の根本にかかわっており、寿命や老化にも関係する臓器なのです。
また、腎は「水」をつかさどっていて、排尿や排便をコントロールしています。
さらに、「骨をつかさどって髄を生ず」というように、丈夫な骨や髄、すなわち脊髄や脳の働きにも関与しています。かかとが冷えるということは、こうした大事な腎の機能が弱るということです。
腎の機能が弱ると体にさまざまな症状が出てきます。特に多いのは、次のような症状です。
①むくみ
②頻尿、尿もれ
③腰やひざなどの関節痛
④耳鳴り、難聴
⑤足裏の湿疹、水虫
⑥ふくらはぎがつる
⑦下半身太り
こうした症状に思い当たる人は、かかとと、両くるぶしの後ろにあるへこみが冷えているはずです。内くるぶしには腎経の大鐘、外くるぶしには膀胱経の崑崙のツボがあります。
この二つのツボから冷えが広がり、下にいくとかかと、上にいくとふくらはぎが冷えます。
私は、この二つのツボの皮膚温を測定しています。冷えのない人は、体温とほぼ同じ36・6℃前後ですが、冷えていると36℃以下、最も低い人で35・8℃の人もいました。
したがってかかとが冷えている人は、まずかかとの上のへこみを温めるといいでしょう。ここが温まると、かかとやふくらはぎも温かくなります。
腎臓を活性化し頻尿に効く かかとを温めるやり方

よく眠れるようになり尿の量も増えた
では、どのように温めるのが効果的でしょうか。
私が生まれ育った北海道には、おもしろい温め方がありました。長靴に新聞紙を敷き、その上に刻んだタカノツメを置いて、長靴をはくのです。
昔の長靴は薄いゴム底1枚で、すぐ下が雪ですから、足が凍えるように冷たくなります。今のように使い捨てカイロもありませんから、タカノツメでかかとを温めたのです。
それはさておき、かかとの温め方ですが、写真を参考にしてください。
こうしてかかとを温めると、腎が強化されるので、さまざまな症状の改善が期待できます。それが顕著に現れた、Bさん(47歳・女性)の例をご紹介しましょう。
Bさんは以前から足が冷たく、足が冷えて眠れないこともあったそうです。また、おしっこの出が悪いことにも悩んでおられました。
皮膚温度計で測ると、大鐘は36・1℃、崑崙は36・2℃、かかととふくらはぎは36・4℃と、いずれも低めでした。
しかし20分間かかとを中心に指圧したところ、大鐘と崑崙は36・4℃、かかととふくらはぎは36・7℃になったのです。
この日はかなり寒い日でしたが、Bさんはいつまでも足がポカポカして、夜もよく眠れたそうです。
またBさんはあまり水分をとらないので、トイレの回数が少ないそうですが、その日はトイレの回数が多く、排尿量も多かったということです。
かかとを温めると、足の冷えが改善するだけでなく、尿もれや頻尿なども改善します。Bさんのようにオシッコの出が悪い人は、よく出るようになるでしょう。また、腰痛やひざの痛み、むくみなども改善します。
腎の強化は体全体の若返りにもつながります。年を取っても姿勢がよく、しっかり歩けます。耳鳴り、難聴、薄毛などの老化現象を予防します。
解説者のプロフィール

田中 勝
田中鍼灸指圧治療院院長。北海道生まれ。治療のかたわら、鍼温灸や経絡あん摩、関節運動法講習会を開催するなど、精力的に活動。
DVDに『よくある症状への手技療法』(医道の日本社)好評発売中。
●田中鍼灸指圧治療院
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