ショウガ科のウコンと みそを合わせた新調味料
みなさんは「アーユルヴェーダ」のことをご存じですか?
アーユルヴェーダは、インドに古くから伝わる伝承医学です。でも、日本人にはあまりなじみがなく、「難しそう」と思っている方も多いでしょう。
そこで私は、少しでもみなさんに身近に感じていただけるように、日本人でも取り入れやすいアーユルヴェーダの活用法をご紹介してきました。
今回お勧めする「ウコンみそ」も、その一つです。
みそは、日本を代表する発酵食品です。アーユルヴェーダの古典医学書によると、発酵食品には物を変換させる力があり、消化を助けて代謝を活性化する作用があるとされています。
実際に、みそにはさまざまな健康効果があることがわかっています。そういう日本のすばらしい調味料に、インドで最高のスパイスといわれる「ウコン」を組み合わせたのが、ウコンみそです。
ウコンは、ターメリックとも呼ばれるショウガ科の植物で、カレーに使われる香辛料として、よく知られています。
同じ科のショウガとは性質が似ており、同じような作用を持っていますが、ショウガのほうが辛味が強く、より代謝を活性化して、強力な消化促進作用をもたらします。その点、ウコンは作用がソフトで、体内の代謝を適切な状態にしてくれます。
ウコンとみそは、味の組み合わせとしても最高です。
アーユルヴェーダでは、甘味、塩味、辛味、渋味、苦味、酸味の六味がそろうと味のバランスがよく、どんな体質の人にも合うとされています。
みそは、甘味と塩味と少しの辛味があり、さらに発酵食品なので、酸味もあります。一方のウコンには、みそに足りない渋味と苦味と辛味があります。
ですから、この二つを合わせると六味のバランスが整い、味的にも薬効的にもオールマイティに近い、ベストの食品になるのです。
また、ウコンにはたんぱく質の消化を助ける作用があります。大豆でできているみそは、たんぱく質のかたまりです。ウコンはその消化を促してくれるのです。
食材の性質はともに熱性で、体を温める作用があります。しかしウコンは、熱性ではあるけれど、それを過剰にさせない性質があるため、どんな体質の人にも合いやすいのです。
こうした性質を持つウコンみそに、どのような健康効果が期待できるでしょうか。
まず言えるのは、腸活作用です。みそにもウコンにも腸内細菌叢を改善する作用があり、相乗効果で腸を健康にします。腸が健康になれば、免疫力(病気に対する抵抗力)が高まり、病気になりにくくなります。
二つめは血液浄化作用です。どちらも血流をよくして、体を温める作用があります。
アーユルヴェーダでは、体内にたくさんの「管」があると考えられています。西洋医学でいう血管や消化管のように、目に見える管ではありませんが、血液や神経やエネルギーが流れている管です。ウコンはそれらの詰まりを取って、流れをよくする作用があるのです。
三つめは、消化を助けて代謝を活性化することです。
代謝が適切に行われず、消化力も弱いと、食べた物がきちんと消化・燃焼されず、体内に「アーマ」と呼ばれる未消化物が残ります。
これがたまると、さまざまな病気の引き金となります。
ウコンには消化力を高め、代謝を上げる作用があります。さらに、代謝の過剰と不足を整える作用もあり、アーマをたまりにくい状態にしてくれます。
ウコンみその基本的な作り方

油と一緒にとるとさらに吸収がよくなる
ウコンみその作り方は、簡単です。みそ10に対して、ウコンを0・5~1の割合で混ぜるだけです。
ウコンに抵抗のない人は、ウコンの量をもっと増やしてもいいでしょう。私は10対3の割合で作っています。その都度混ぜ合わせてもいいですし、まとめて作って、冷蔵庫に保存しておいてもいいでしょう。使ったみその賞味期限までは保存ができます。
ウコンみそは、普通のみそと同じように使えます。みそ汁や豚汁といった汁物、野菜やナスや厚揚げなどのみそ炒め、みそ田楽、野菜スティックのディップなど、どんなものにも合います。
渋味や苦味のある食品は、普段は敬遠しがちです。しかし、ウコンみそにすれば、簡単に渋味や苦味がとれます。
しかも、渋味と苦味が加わることによって、みその味が引き締まり、こくが出ます。試しに、おにぎりにウコンみそをつけ、焼いて食べてみてください。ウコンみそのおいしさが、ストレートにわかります。
また、味にこくがあるので、煮物などは、だしを取らなくてもおいしく作れます。使うみその量も少なくてすむので、減塩にも役立つと思います。
食べるときは、油と一緒にとると、ウコンの有効成分の吸収がさらによくなります。みそ汁などには、エゴマ油などのオメガ3系の油を、最後にちょっとたらすといいでしょう。
ウコンは、春ウコンより秋ウコンのほうが、有効成分であるクルクミンが多いので、お勧めです。店頭で売っているターメリックは、ほとんどが秋ウコンです。
このウコンみそなら、手軽にウコンのよさを感じていただけるでしょう。ぜひご家庭に常備して、新しい味の世界を発見してください。
解説者のプロフィール

西川眞知子
上智大学外国語学部を経て、佛教大学卒業。第24代ミス横浜。
幼少期に病弱だったのを自然療法で克服したのをきっかけに、大学時代にインドやアメリカを歴訪し、ヨガや自然療法に出合う。その経験と研究をもとに「日本ならではのアーユルヴェーダ」を提唱。
『アーユルヴェーダで我慢しないアトピー生活』(農文協)、『ヨガのポーズの意味と理論がわかる本』(マイナビ)など、著書多数。
野菜スティックにつけてもおいしい!