【名医が解説】めまいは「体を動かして」治せる―原因と改善法、再発防止法まで

【名医が解説】めまいは「体を動かして」治せる―原因と改善法、再発防止法まで

めまいを引き起こす代表的な病気に良性発作性頭位めまい症、耳鳴り、難聴を伴うメニエール病、めまいを伴う突発性難聴、前庭神経炎があります。いずれも、自分や周囲の風景がグルグル回っているように感じる、回転性のめまいを伴うのが特徴です。【解説】肥塚 泉(聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科教授)


めまいは救急車を呼ぶほどの恐怖をもたらす

 めまいを引き起こす代表的な病気に、「良性発作性頭位めまい症」耳鳴り、難聴を伴う「メニエール病」めまいを伴う「突発性難聴」「前庭神経炎」があります。いずれも、自分や周囲の風景がグルグル回っているように感じる、回転性のめまいを伴うのが特徴です。

 めまいとは、自分や周囲の物が動いていないのに、動いているような異常な感覚を指します。
 めまいの7割は、耳の病気が原因で起こり、生命の危険がないものです。しかし、突然予兆もなく、天井がグルグル回る、胸がムカムカする、頭がクラッとするなどの症状に見舞われるので、パニックを起こす人は少なくありません。

 私が勤務する聖マリアンナ医科大学病院に、救急車で搬送された患者さんのうち、およそ50人に1人が、めまいを訴えての受診でした(2008年)。救急車を呼ぶほど、めまいは強い恐怖をもたらす症状というわけです。

 では、めまいが起こるしくみをご説明しましょう。
 耳の最深部にある内耳には、聴覚をつかさどる蝸牛と、体のバランスをつかさどる三半規管と耳石器があります。この二つを合わせて前庭器と呼びます。
 三半規管は、体の回転運動を感知する器官です。その内部はリンパ液で満たされており、リンパ液の流れ方から、頭や体がどのような速さで、どの方向に回転したかをとらえます。

 一方、耳石器は、体の動きや傾き、重力などを感じ取る器官です。耳石器の中には、耳石という小さな石が入っています。頭を動かすと耳石も動き、その動きを感覚細胞がとらえ、体の傾きや動きなどを認識します。
 そして、その情報は、神経を介して脳に送られます。脳は、その情報を整理し、全身に体のバランスを保つよう指令を出すのです。

 このように、左右の内耳にある前庭器は、体のバランスを取るセンサーとして働いています。しかし、左右どちらかの内耳のセンサーが故障すると、脳に送られるバランスの情報に左右差が生じます。

 例えば、実際には「頭が30度傾いている」とします。ところが、故障している側のセンサーは、「頭の位置はまっすぐだ」という誤った情報を脳に送ってしまいます。左右の前庭器から送られる情報にこうしたズレが生じると、脳が混乱して、めまいを感じるというわけです。

めまい患者の多くは ストレスを抱えている!

 日常生活でめまいを予防・改善するコツは、二つあります。

 一つは、ストレスをできるだけ避けること。もう一つは、薬に頼らず、リハビリ(平衡訓練)を行うことです。
 まず、ストレス対策についてお話ししましょう。
「ストレスなんて誰にでもある」と思われるでしょう。しかし、ストレスは想像以上に、めまいに悪影響を与えます。特に、メニエール病の発症や悪化は、ストレスが深く起因していると指摘されています。
 めまいを起こす前の生活や、めまいが悪化・再発したときの生活について患者さんに尋ねると、「寝不足が続いていた」「介護で疲れ切っていた」「人間関係がうまくいかず落ち込んでいた」など、ストレスを抱えている人が実に多く見られます。

 ストレスは、その人の体の弱点を直撃し、めまいを誘発したり、めまいの悪化・再発を促したりするのです。ですから、できるだけストレスを避けながら生活することが重要です。以下の3点を意識しましょう。

❶睡眠時間を増やす
「その日の疲れは、その日のうちに取る」を目標に、今までよりも1時間でも多く睡眠時間を増やしましょう。よく眠ることで体力が回復し、めまいの悪化・再発の予防につながります。

❷自分を大切にする
 人づきあいで相手を思いやることは必要ですが、人に合わせ過ぎない、気を遣い過ぎないことも、ストレス対策には重要です。
 高齢の人であれば、子供夫婦から孫の世話を頼まれても、「今日は無理だから、また今度ね」といってかまわないのです。趣味のサークルなどで苦手な人や嫌いな人とは、無理につきあうことはありません。さりげなく距離をおきましょう。

❸積極的に気分転換を図る
 今まで我慢してできなかったこと、ほんとうにやりたかったことに挑戦してみましょう。
 着てみたかった派手な服を着て出かける、行ってみたかった居酒屋をのぞいてみる、日帰り温泉ツアーに行ってみるなど、心ときめく体験を増やし、気分転換を図ることで、ストレスがたまりにくくなります。

急性期後の薬の服用は 対症療法にすぎない!

 次に、薬とのつきあい方について説明しましょう。

 めまいの症状が強い「急性期」では、薬で症状を抑え、安静に過ごすことが大切です。しかし、強い症状が治まったあとの「慢性期」に入ったら、安静にしていてはいけません。 「不調だから、薬を飲んで横になろう」という気持ちはわかりますが、体を動かさなければ筋力・体力ともに低下し、全身の血流も悪くなります。耳の血流が悪くなれば、内耳のセンサーの働きも回復しません。

 薬は症状を和らげることはできますが、あくまで対症療法です。めまいを根本から治すことはできません。
 そこで、急性期を過ぎた人に、ぜひ取り組んでいただきたいのが、内耳の働きを回復させるリハビリです。たった一つのリハビリで、めまいは改善できます。ぜひ、毎日、あきらめずに続けてください。

→内耳の働きを回復させるリハビリのやり方はこちら

肥塚 泉先生
 聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科教授。同大学病院耳鼻咽喉科部長。日本耳鼻咽喉科学会専門医。同大学の「めまい外来」を率いて、これまで5万人以上を診察し、問診と検査でめまいを解決してきた。診療のほか、めまい疾患に対するリハビリ法の考案や、宇宙酔いに関する研究にも力を入れている。著書に『めまいは寝転がり体操で治る』(マキノ出版)がある。

これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに掲載しています。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

これらの記事にある情報は、効能や効果を保証するものではありません。専門家による監修のもと、安全性には十分に配慮していますが、万が一体調に合わないと感じた場合は、すぐに中止してください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


【耳の悩み】耳鳴り、難聴、めまいに効く食事―その原因と症状から考える

【耳の悩み】耳鳴り、難聴、めまいに効く食事―その原因と症状から考える

私が勤務する「りゅうえい治療院」には、耳鼻科にかかっても、なかなか改善しないことが多い耳鳴り・難聴・めまいといった症状で来院される患者様がたくさんいます。鍼灸師として、かつ、管理栄養士としてどんなものを食べたら耳の悩みの改善に役立つかお話ししましょう。【解説】立花愛子(りゅうえい治療院副院長・鍼灸師・管理栄養士)


【専門医が考案】耳鳴りの症状をピタリと止める「片手でできる呼吸法」

【専門医が考案】耳鳴りの症状をピタリと止める「片手でできる呼吸法」

私が片鼻呼吸で効果を見出したのは、耳鳴りの症状です。片鼻呼吸は、そもそもヨガの呼吸法の一つである、「イダーピンガラ呼吸」を基にしています。ヨガの呼吸法で、気の巡りをよくすることが、耳鳴りの解消につながると考えられます。【解説】陣内 賢(陣内耳鼻咽喉科クリニック院長) 


血流やコリを改善しストレス解消! 「わきもみ」は 耳鳴り、めまい、難聴に特効

血流やコリを改善しストレス解消! 「わきもみ」は 耳鳴り、めまい、難聴に特効

私の施術所には、耳鳴りやめまい、難聴に悩む患者さんも、多く訪れます。そうした症状に治療効果を上げているのが、わきの下への刺激を加えた施術です。これまでの施術経験から、軽い耳鳴りなら2ヵ月ほどで、重症でも1年くらいで改善の傾向が現れます。【解説】坂本実穂(坂本均整施術所所長・姿勢保健均整師・鍼灸師)


耳鳴り、めまい、逆流性食道炎に効果的な対策―口を10秒だけ開けること

耳鳴り、めまい、逆流性食道炎に効果的な対策―口を10秒だけ開けること

頭痛、肩こり、腰痛、生理痛、耳鳴り、めまい、うつ、眼瞼けいれん、味覚障害、高血圧、逆流性食道炎──。こうした症状に悩む患者さんたちに、私は「10秒、口を開けるくせをつけてください」とアドバイスをしています。【解説】吉野敏明(誠敬会クリニック銀座院長)


10年以上悩まされた耳鳴りが治った鍼灸師、心掛けたあることとは?

10年以上悩まされた耳鳴りが治った鍼灸師、心掛けたあることとは?

耳鳴りの患者さんには、首や肩に、異常なほど頑固なコリが見られます。これを鍼灸で治療すると、症状がある程度まで改善します。それに加えて、食事の内容を見直すと、さらに治療効果がアップするのです。【解説】野村哲也(はり・きゅう丙辰堂治療院院長・養鶏家)


最新の投稿


【骨盤起こし】背骨の圧迫が取れ、脊柱管狭窄症の痛みを改善する簡単動作

【骨盤起こし】背骨の圧迫が取れ、脊柱管狭窄症の痛みを改善する簡単動作

最近、女性はもちろん男性も、自分の骨盤の状態を気にするようになりました。骨盤の状態は健康を左右します。猫背などのよくない姿勢で、骨盤が後ろに傾いた“寝た状態”になると、体のバランスがくずれ、腰痛やひざ痛の原因になるのです。【解説】中村考宏(えにし治療院院長)


【医師解説】即効!「ひざの裏を押す」と脊柱管狭窄症の腰痛に効果あり

【医師解説】即効!「ひざの裏を押す」と脊柱管狭窄症の腰痛に効果あり

全身の痛みの中で、最も発生頻度が高いのは、やはり腰痛ではないでしょうか。中高年者に限っていえば、腰痛を全く経験したことがない人は、まずいないと思います。【解説】班目健夫(青山・まだらめクリニック院長)


【血圧を下げる】ポイントは「ふくらはぎを温める」こと 生理痛が緩和され腰痛も改善

【血圧を下げる】ポイントは「ふくらはぎを温める」こと 生理痛が緩和され腰痛も改善

昔からよく「足を冷やすな」といわれますが、あなたはこの「足」がどこを指すか、おわかりになりますか?足の裏、足の指先と考える人が多いかもしれませんが、本当に冷やしてはいけない場所は、「ふくらはぎ」なのです。【解説】関 博和(せき接骨院院長)


【O脚の原因と症状】「浮き指」を改善する足指体操のやり方を大学教授が伝授

【O脚の原因と症状】「浮き指」を改善する足指体操のやり方を大学教授が伝授

本来、人間の体は、足の指がきちんと地面につき、指で踏ん張る力を使ってこそ、正常なバランスが保たれるようになっています。ところが、現代人の足指の力は、極度に衰えています。指の力で踏ん張るどころか、多くの人は足指が地面についていない「浮き指」と呼ばれる状態になっています。【解説】阿久根英昭(桜美林大学教授)


血圧が下がり26kg やせた!減量のスペシャリストに教わったダイエット法

血圧が下がり26kg やせた!減量のスペシャリストに教わったダイエット法

開業医でありながら、身長が183㎝で、体重が120㎏もあった私は、すし屋で「うちのジムに来ませんか」とボクシングジムの井岡弘樹会長に声をかけられたのです。私のダイエットメニューは、ジム通いと会長に教えていただいたコマツナジュースを朝食に取り入れることでした。【解説】大森孝平(大森クリニック院長)


ランキング


>>総合人気ランキング