4軒の病院を受診しても めまいが治らなかった
2017年4月の、ある晩のことでした。さあ寝ようと布団に入ったとき、突然、激しいめまいに襲われたのです。そして、私は、今から20年前の悪夢のような出来事を思い出しました。
それは、激しいめまいの発作です。
私は、20年前に、猛烈な回転性のめまいと、ひどい吐き気に襲われて、救急車で病院に運ばれたことがあります。立っていられないほどの激しい症状で、「もしかすると、脳になにかしらの異常が起こったのでは?」と思ったほどです。
病院で精密検査を受けたところ、幸いにも、脳には異常は見つかりませんでした。では、なにが原因かといえば、はっきりしません。けっきょく、そのときは、めまいの薬を飲みながら、1ヵ月ほど入院しました。
その後、めまいの発作は落ち着いていました。退院から4~5年後に、一過性のめまいに襲われたことがありますが、その一度だけで済んでいます。
とはいえ、20年前の体験は、私にとって、ほんとうに恐怖でした。だからこそ、再びめまいに襲われたときは、不安でしかたなかったのです。
今回のめまいは、以前のものとは少し違っていました。体を横にすると、必ず、天井がグルグルと回るようなめまいに襲われるのです。起床時や就寝時はもちろん、とにかく体を横にするのがいけないようです。めまいが起こったときは、体を起こすと、スーッとめまいが落ち着きます。
いちばん困ったのは、就寝時です。グルグルと回るめまいが気になって、寝つくまでに、いつもより時間がかかるようになりました。
その後も、めまいに襲われるたびに、恐怖におびえる日々を過ごしていました。
私は、2軒の耳鼻科、1軒の脳外科、1軒の内科、合計4軒の病院で診てもらいましたが、「耳石に問題があるかもしれない」ということだけで、原因ははっきりしません。MRI(核磁気共鳴画像)撮影でも、やはり脳には異常がないようです。
病院からは、めまいの薬を処方されましたが、3ヵ月ほど飲み続けても、ほとんど効果はありませんでした。私は、効きめのない薬を飲み続けることにも、しだいに不安を感じるようになりました。
1ヵ月でめまいが消えた 薬もやめられた!
何かいい方法がないかと書店に足を運んだのが、7月初めのことでした。そこで見つけた本が、『めまいは寝転がり体操で治る』(マキノ出版)です。
そして、私は、本で紹介されていた「寝返り体操」を試すことにしたのです。
寝返り体操は、あおむけになって、頭を左右に倒すだけの簡単な体操です。しかし、横になるとめまいに襲われる私にとっては、つらいものでした。
それでも、「これを続ければきっとよくなる」と信じて、朝晩の1日2回、毎日がんばって続けたのです。
すると、効果を実感したのは1週間後でした。横になったときの、めまいの程度が軽くなってきたのです。夜、寝るときもめまいが気にならなくなり、スーッと寝つけるようになりました。
その後も、毎日寝返り体操を続けたところ、1ヵ月後の8月には、めまいが消えました。横になっても、グルグルと回ることは全くありません。おかげで、懸念していた、めまいの薬をやめることもできました。
寝返り体操は、再発予防のために現在も続けていますが、その後も、めまいに襲われたことは一度もありません。
寝返り体操と出合えて、私は、ほんとうに幸運でした。考案者である肥塚 泉先生は、私にとって、神様のような存在といっても過言ではありません。機会があれば、ぜひお会いして、直接お礼を伝えたいと思っています。
首を左右に傾ければ 耳石がたまるのを防げる(聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科教授・肥塚 泉)
高橋さんが20年前に体験されためまいは、症状や経緯から、良性発作性頭位めまい症と考えられます。今回のめまいは、その再発と考えていいでしょう。
一般に、年齢を重ねるにつれて体を動かす機会が減り、同じ姿勢で過ごす時間が長くなります。また、女性は骨粗鬆症が進行しやすくなるため、耳石も骨と同じようにもろくなります。高橋さんも、これらの条件が重なり、耳石がはがれて三半規管にたまり、再発したものと考えられます。
同じ姿勢が続くときは、ときどき、首を左右に傾けると、耳石が1ヵ所にたまるのを防げます。寝返り体操は、再発予防にも大変効果があります。今後も、ぜひ続けてください。