カロリーを制限しても、血糖値は急上昇する
血糖値の高い状態が続き、糖尿病と診断されると、病院では食事療法を指導されます。
しかし、この食事療法、「続けられなくてやめてしまった」という人は、けっこう多いのではないでしょうか。
日本糖尿病学会が勧める食事療法は、カロリー制限が中心です。患者さんは「食品交換表」を使ってカロリーや単位を計算し、それに合わせて食べ物を計量するなどして、食事を整えなければなりません。
しかし、これはけっこう面倒で、続けるのはなかなか難しいですよね。そのため、糖尿病の食事療法は、思うように効果が得られていないのが現状です。
しかも、カロリー制限中心の食事療法には、もう一つ大きな落とし穴があります。
それは、たとえカロリーを減らしても、食べる内容や食べ方によっては、食後の血糖値を急上昇させてしまう恐れがあることです。
食事療法の対象となる「2型糖尿病」の治療においては、食後の血糖値を急上昇させないことがとても重要です。
というのも、糖尿病は、血液中の血糖値が高い状態が続くことで発症する病気です。とはいえ、いきなり高血糖状態が続くわけではありません。
通常、食べたものは小腸で吸収され、ブドウ糖に分解されて血液中に入ります。そして、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって、ブドウ糖はエネルギーに変えられたり、脂肪細胞に蓄えられたりします。
健康な人であれば、インスリンが十分分泌されて、血糖値は常に一定になるよう調整されています。ところが、食べ過ぎなどでインスリンの分泌が間に合わなくなくなると、血液中にブドウ糖が増え、食後の血糖値が急上昇してしまうのです。
その状態が長く続くと、やがて膵臓が疲れて、インスリンの分泌量が減ったり、働きが低下したりします。すると、常に血糖値が高い状態が続き、糖尿病へと進行していくのです。

ヘモグロビンA1cの数値を下げることが重要
ですから、食後の血糖値をなるべく急上昇させないことがポイントになります。
空腹時血糖値だけを見ても、食後の血糖値が急上昇していることはわかりませんが、ここ近年では、ヘモグロビンA1cの測定が導入されています。
ヘモグロビンA1cとは、過去1〜2ヵ月間の血糖値の平均がわかる数値なので、この数値を正常値に保つことが肝心です(正常値は6・5%未満)。
従来のカロリー制限中心の食事療法では、食後の血糖値の急上昇が解決できません。
日本糖尿病学会が勧める食事療法は、いわば「カロリーさえ減らせば、何をどう食べてもいい」というもの。食後の血糖値を急上昇させないためにはどうすればいいか、ということまで考えられていないのです。
食後の血糖値が急上昇すると、動脈硬化もまた進行しやすくなることがわかっています。特に、初期の糖尿病では、血糖値が急上昇した後、インスリンが分泌されると血糖値の急降下が起こります。その変動幅が大きいほど、血管を傷めるという研究結果も出ています。
糖尿病の怖いところは、高血糖状態が続くと重い合併症が起こることです。
3大合併症(糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害)のほか、糖尿病の人は動脈硬化を併発しやすく、心筋梗塞や脳梗塞(心臓や脳の血管が詰まって起こる病気)のリスクが高いといわれています。
こうした合併症や血管へのダメージのリスクを下げるためにも、食後血糖値の上昇を抑えることがいかに重要か、おわかりいただけるでしょう。
野菜を先に食べるだけで血糖値の急上昇を抑制
そこで、私が提案しているのが「食べる順番療法」、略して「食べ順療法」です。
これは、野菜→おかず→ごはんの順番に食べることで、食後の血糖値の急上昇を防ぐ療法です。
京都女子大学の今井佐恵子教授とともに臨床研究を行ったところ、食べ順療法を受けたグループは、ヘモグロビンA1cも着実に下がっていくことが確認できました。
しかも、食べ順療法を続けると、少ないインスリンでも血糖コントロールができるようになり、その結果、膵臓の負担が減って、インスリンを分泌する能力自体が改善します。そのため、減薬やインスリン注射を卒業することも可能なのです。
何よりも、面倒なカロリー計算の必要がなく、食べる順番を変えるだけなので、誰にでも簡単にできて、継続が可能です。
まさに、これまでの食事療法の問題点をすべて解決した、いいことずくめの療法です。