MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
【食べる順番】糖尿病の食事療法 血糖値の上昇を緩やかにする食べ方

【食べる順番】糖尿病の食事療法 血糖値の上昇を緩やかにする食べ方

「食べ順療法」は、極端にいえば、食事の最初にまず野菜を食べる、それだけでよいのです。ただ、より確実な効果を得るために押さえておきたいコツがあります。普段、糖尿病の患者さんに食事指導をしている管理栄養士の立場からお話ししましょう。【解説】今井佐恵子(京都女子大学家政学部食物栄養学科教授農学博士・管理栄養士)

まずはこぶし大のトマト1個から始める

「食べ順療法」は、カロリー計算をする必要はありません。極端にいえば、食事の最初にまず野菜を食べる、それだけでよいのです。

 ただ、より確実な効果を得るために押さえておきたい、ちょっとしたコツがあります。
 普段、糖尿病の患者さんに食事指導をしている管理栄養士の立場からお話ししましょう。

(1)食事の最初に食べるのは野菜です。目標は1日400g。
 厳密にする必要はありませんが、野菜の量が少な過ぎると、思ったような効果が得られません。
 例えば、こぶし大のトマトなら1個100g程度あります。毎食1個食べれば、3食で300gです。習慣的に野菜を食べていなかった患者さんには、まずはトマト1個から食べましょうと指導しています。
 慣れてきたら、それにブロッコリーや青菜類、キノコや海藻類を加えてもらいます。すると、目標の摂取量に到達しやすいのではないでしょうか。
 野菜は生で食べても、調理して食べても構いません。
 最近人気のシリコンスチーマーを使えば、レンジで手軽に蒸し野菜が作れます。おでんやシチュー、ポトフなどを一度にたくさん作り置きしておくのも便利です。

カボチャやレンコン、イモ類は要注意!

 注意したいのは、イモ類、トウモロコシ、カボチャ、レンコンなどです。
 これらは糖質が多いので、最初に食べてしまうと血糖値を急上昇させる恐れがあります。これらは、野菜ではなく炭水化物と考えたほうがよいでしょう。

(2)重要なことは、野菜を5分以上かけてゆっくり食べることです。
 最後に炭水化物を食べるまでに、野菜の食物繊維の一部が腸に届いていなければ、血糖値の上昇を抑える効果を得られません。ゆっくり食べるコツは、よくかむこと。ひと口食べたら、それをかんで飲み込むまで、次の食べ物を口に入れないようにしましょう。

(3)野菜の次に食べるのは、たんぱく質のおかずです。
 魚介類、肉、卵、大豆製品、乳製品をバランスよく食べましょう。
 青魚には不飽和脂肪酸のEPA、DHAが含まれていて、動脈硬化の予防に効果的です。EPA、DHAは酸化されやすいので、新鮮な魚、特にお刺身を食べましょう。
 ただし、肉類に含まれる脂質は飽和脂肪酸が多く、動脈硬化を促進させるので、取り過ぎに注意です。
 また、脂質は血糖値にあまり影響しませんが、炭水化物と一緒に食べると、血糖値の高い状態が長時間にわたって持続することがわかっています。揚げ物は極力控え、天ぷらなどを食べるときは、できれば衣を取って食べることをお勧めします。
 たんぱく質のおかずを食べるのにも、5分かけましょう。

(4)最後に炭水化物を食べます。 炭水化物とは、ごはん、パン、めん類、前述したイモ類など一部の野菜、豆類などです。
 最初から食卓に炭水化物を出しておくと、つい手を出してしまいます。ごはんやパン、めん類は、野菜とおかずを食べ終わってから出すとよいでしょう。
 ごはんだけでは食べにくいという場合は、肉や魚のおかずを少し残しておいて一緒に食べても構いません。おみそ汁は、ごはんと一緒に食べてもいいでしょう。

気を付けるのは食べる順番だけ

 食べ順療法を行うと、今までよりも野菜の摂取量が必然的に多くなります。野菜には抗酸化作用の強い栄養素が含まれているので、糖尿病だけでなくさまざまな病気予防に役立ちます。
 また、最初に野菜をよくかんで食べると、満腹中枢が刺激されるため、ごはんを食べるころには満腹になっています。そのため、無理に炭水化物を減らさなくても、自然に食べる量が減るというメリットもあります。

 なお、おやつや甘いものは控えるに越したことはありませんが、あまり我慢しているとストレスがたまります。どうしても食べたいときは、午後3〜4時ごろに食べてください。食後に食べると、血糖値が上昇しやすいからです。
 また、甘いお菓子、それにバナナ、柿、ブドウといった糖分の多い果物は、血糖値が上がりやすいことは頭の片隅に入れておいてください。

 多少の注意点はありますが、食べ順療法では食べる順番に気をつける以外に、「してはいけないこと」はあえて設けていません。難しく考えず、とにかくまずは野菜を先に食べることから始めてみてください。

解説者のプロフィール

今井佐恵子
京都女子大学家政学部食物栄養学科教授。日本糖尿病療法指導士。管理栄養士の教育に携わりながら、糖尿病の食事療法の指導・研究を続ける。梶山先生との共著『糖尿病がよくなる!食べる順番療法』『元祖「食べ順」野菜から食べるおいしいレシピ集』(新星出版社)好評発売中。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この記事のエディター
関連記事
「問題です。パスタとピザなら、どちらが血糖値を上げにくいでしょう。コロッケとトンカツでは、どちらでしょう。」糖質の少ないものを選んで食べれば、糖尿病でもおいしい料理を楽しめます。つらい食事制限もなく糖尿病が改善し、おまけに、無理なく痩せられる方法をご紹介します。【解説】渡辺信幸(こくらクリニック院長)
糖尿病の予防には、厳しいカロリー制限をしなければならないと思っている人が多いようです。血糖値を上げるのは、高カロリーの食べ物ではなく、糖質だけなのです。いきなり糖質を断つのは、至難の業。糖質を摂取しても、血糖値をあまり上げなくて済む方法を、紹介しましょう。【解説】大櫛陽一(東海大学名誉教授・大櫛医学情報研究所所長 )
βグルカンの精製をさらに進めたところ、それまでとはまったく別の物質を発見しました。これが「MXフラクション」で、今のところマイタケからしか発見されていない成分です。【解説】難波宏彰(神戸薬科大学名誉教授・鹿児島大学大学院医歯学総合研究科客員教授)
サキベジのやり方は、いたって簡単です。「食事の最初に野菜をたっぷり食べる」です。目安として10分以上、野菜を食べてから、おかずやごはんを食べることをお勧めします。【解説】内場廉(長野市国保大岡診療所所長)
今回、納豆から2種類のDPP4阻害物質が発見されました。どちらも世界で初めて発見されたDPP4阻害物質です。これまでも納豆の健康効果はよく知られていましたが、納豆には血糖値の上昇を防ぎ、糖尿病予防につながる成分が含まれていることが最新研究で明らかになったのです。【解説】舘博(東京農業大学応用生物科学部醸造科学科教授)
最新記事
熱中症は7月8月の日中に最も多く見られます。熱中症は、乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。なかでも高齢者は重症化する場合が多いのです。また服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
熱中症は私たちの日常生活の中での注意や工夫で予防することができます。たとえば、服装です。また、水分補給についても、実は「水分」だけを補給するのではいけません。そのほかに、エアコン等の空調の使い方のコツなどをご紹介します。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
手洗いの時間の目安は、おおよそ30秒。次のような手順で洗っていくと、少なくともそれくらいの時間が必要であることが実感できるでしょう。
新型コロナウイルスには、まだ特効薬やワクチンはなく、感染しないための予防法を徹底することが重要です。自分一人ひとりができる感染症対策のポイントをチェックしてみましょう。
コンブを水に漬けて冷蔵庫で10日ほど発酵させ、乳酸菌と酵母を培養する「コンブ酵母」が話題になっています。コンブ特有のにおいが軽減し、旨みが濃くなるので、そのまま飲んでも、料理に使ってもよし!食生活に取り入れる人が急増中です。コンブ酵母の作り方と、コンブ酵母の活用レシピをご紹介します!【レシピ】COBOウエダ家

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt
get_app
ダウンロードする
キャンセル