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【看取るとは】家族を穏やかに見送るための3つの心得

【看取るとは】家族を穏やかに見送るための3つの心得

親しい人や家族を看取るとき、どうすればいいのか。「できる限り手を尽くしてあげたい」は「できるだけ苦しめる」とほぼ同義で、せっかくの自然死をじゃますることになります。では、できるだけ穏やかに逝かせてあげるために、家族ができることを考えてみましょう。【解説】中村仁一(社会福祉法人老人ホーム「同和園」附属診療所所長)

親しい人や家族を看取るとき、どうすればいいのか。
「できる限り手を尽くしてあげたい」
そう思ってはいませんか?

しかし、それは「できるだけ苦しめる」とほぼ同義で、
せっかくの自然死をじゃますることになります。

では、できるだけ穏やかに逝かせてあげるために、
家族ができることを考えてみましょう。

看取る側にも覚悟が必要

 死んでいくのは、自分だけではありません。その前に、年老いた親や兄弟を見送ることもあるでしょう。

 では、親しい人や家族を看取るときはどうすればいいのか。思うに、看取る側にも、それ相応の覚悟が必要です。

 もちろん、死んでいく本人の意思や希望を事前に聞いておけば、それを尊重すればよいわけですが、そういったやり取りがないことがほとんどです。

 私の看取りに関する留意点は、以下の三つです。

一つ目は、無用な苦痛を与えないことです。

 今、日本人は医者を含め、自然死を見たことのない人がほとんどです。そのため、いよいよ死期が迫り、口から物が入らなくなると、なんとかして水分や栄養を補給し、命を永らえさせようと必死になります。

 しかし、自然死の本体は”餓死“です。死が迫っているのに、まだ水分や栄養を与えるのは、せっかくの穏やかな死をじゃますることになります。

 酸素吸入や点滴注射も、本人には苦痛でしかありません。「できる限り手を尽くす」は、「できるだけ苦しめる」と、ほぼ同義といってもよいでしょう。

 死んでゆく人間の胃に穴を開け、管をつないで栄養や水分を与える「胃ろう」などすると、だんだん人間離れした悲惨な姿へ変容してしまいます。果たして、本人はそんな状態で意識もないのに生かされることを望んでいるでしょうか。

 鼻チューブ栄養も、かなりの苦痛です。以前、「自分の死を考える集い」で、参加者に鼻チューブを入れて体験してもらったことがあります。

 皆さん、口をそろえて「こんなことされたらたまらない」と言っていました。

 看取る側には、見殺しにできないという罪の意識や、まだ死んでほしくないという思いがあるのでしょう。

 しかし、自分のつらさの軽減や自己満足のために、死にゆく人間に負担を強いることは、看取る側のエゴです。

「看取る」とは、何もせず「見とる」だけ。残される者ではなく、死にゆく本人にとっての最善を考え、死ぬべきときにきちんと死なせてあげることが、“真の家族愛”というものです。

 最期の息を引き取る瞬間まで、目を離さず見る必要もありません。人間は一人で死んでゆくものです。もちろん、そばにいることは構いませんが、体を揺すったり、声を掛けたりするのは余計なことと心得ておきましょう。

こうしておけばよかったと思わないために

二つ目は、本人が不快がることはしないということです。

 介護の現場では、食欲が落ち、体力も衰えた病人を無理やりイスに座らせ、高カロリーな食事を1時間もかけて口に押し込んでいる光景を目にします。

 本人にしたら、「もう食べたくない」「早く寝かせてくれ」というのが本音だと思います。

 無理に食べさせた結果、のど元にものがたまってゴロゴロと音がしだすと、今度は鼻から管を入れて詰まったものを吸引します。これもまた、本人を二重に苦しめることになります。そこまでして食べさせる必要が、どこにあるのでしょうか。

 さらに不可解なのは、死に際に家族が「風呂に入れてやりたい」と願い出ることです。介護職員が希望をかなえると、「どう? 気持ちよかったでしょう」と。

死に際の人間が風呂に浸けられて、気持ちいいわけがないでしょう。

 本人が不快がっていることをするのは、 ”拷問“です。介護する側は、本人がやってもらってうれしいのか不快なのか、表情やしぐさをよく観察するべきです。

明日死なれても後悔しない身内とのかかわり方が明確になるお通夜エクササイズ

三つ目は、身内の死を視野に入れて、明日死なれてもよいかかわり方をしておくことです。

 身内の死を目の前に突き付けられたとき、狼狽して延命に走ってしまうのは、「こんなはずではなかった」という自責の念からです。そうならないためにも、日ごろから身内の死を視野に入れ、後悔が少なくて済むかかわり方をしておかなくてはなりません。

 それには、「お通夜エクササイズ」がよいでしょう。大事な人のお通夜を想定し、具体的に思い浮かべてみるのです。すると、「こうしておけばよかった」と思うことが浮かんできます。それを生きているうちにやっておけば、死に直面しても後悔は少なくて済みます。

 以前、私が勤める老人ホームで、自然死を決断していたにもかかわらず、土壇場になって息子が「病院に連れていく」と言いだしたケースがありました。

 親戚など、周りの人から「何も治療しないなんて、とんでもない」と言われ、迷いが出たようです。死の淵にいた母親はそれまでスヤスヤ眠っていたのですが、救急車に乗せたとたんうなりだし、結局は病院で針や管を入れられた状態で6時間後に亡くなりました。

 あのままそっとしておけば、本当に穏やかな最期だったと思います。しかし、そういう息子に育てたのも本人です。PL法(製造物責任法)に則って、あきらめてもらうしかありません。

 このように、人の心はいざとなると揺れ動くものです。周りに振り回されないよう、看取る側も看取られる側も、日ごろから自分の軸として死生観を確立しておくことが重要です。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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